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132 生徒が先生になって授業をしてみる

教員時代、中学3年の生徒に授業をやってもらったことがあります。私は英語を教えていたので英語の授業に挑戦してもらいました。いつもは授業を受けている生徒たちですが、たまには授業をする立場を経験するのも悪くないと思ったからです。生徒もそれぞれ授業に対する考えがあるでしょうし、私の授業に対する不満や要望もあると思います。実際に授業をやってみることでそれが生徒の中で「化学反応」を起こしてプラスに働くことを期待しました。何よりも私自身が授業を振り返る機会になると考えました。

授業は4,5人のグループに分けて行いました。教科書の各セクションをグループで担当し、15分の持ち時間で自由にやってもらいました。生徒たちには事前に準備の時間を与え、内容を予習し、どのように授業を進めるか考えてもらいました。解説はどのようにやるか、どんな質問をするか、資料は何を用意するか、指名はどのようにするかなど細かいところまで話し合いました。

独自の教材を用意したグループもあります。デジタル機器などまだ一般化していない頃ですから板書は黒板が主流です。音声もCDプレーヤーが一般的です。フラッシュカードやピクチャーカードなどは生徒が手作りしました。資料のプリントを作成したグループもあります。

授業の進め方はグループごとにまちまちでした。訳読中心のグループもあれば、音読を積極的に行うグループもありました。文法を細かく解説したり、会話をたくさん行ったり、劇の形式にしたり様々な工夫が見られました。語源や文化的背景などを調べてきたグループもありました。今だったらデジタル機器を活用してもっとすごい授業をするのでしょうが、当時としては私の期待以上でした。

終わってから生徒に感想を聞くと「楽しかった」という感想が圧倒的に多かったです。他には「勉強になった」「準備が大変だった」「教えるのは難しかった」「指名が楽しかった」などというのもありました。「自分には向かないと思った」という感想がある一方で「先生の仕事も面白そうだと思った」というのもありました。「授業をやるのは予想以上に大変だと思った」「先生の苦労がわかった」などという嬉しい感想もありました。

生徒による授業は私自身にとっても有益でした。独創的とは言いながらも生徒の授業には普段の私の授業が色濃く表れていました。私のやり方を踏襲している場面もありましたし、私がよく口にする指示ことばを生徒も使っていているのを見て戸惑うこともありました。「隠れたカリキュラム」とでも言うのでしょうか。癖もよく把握しているなとびっくりしました。

準備を含めて英語の時間を5時間使いました。生徒が扱ったセクションは私自身でもその後授業で扱いましたから最終的には年度計画より多くの時間を費やすことになりました。「そんなことしてたら授業が計画通りに終わらない」という批判的な声もありましたが、わたしは実施してよかったと思っています。生徒にとっては貴重な体験でしたし、何よりも私自身が授業を見直すよい機会になりました。

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