【解説】年収の壁について
はじめに
おはようございます!
……全然関係ないのですが、これだけ言っておきたい。
僕最近ロシデレ(アニメ)を一気見しまして。。。いやぁアニメはさることながら、上坂すみれさんのカバーEDが本っっっ当に最高で! 特に「小さな恋の歌」が僕の好みです。毎日聴いてます。
ただ、ちょっと、ほんのちょっぴりだけ、現実に自信がなくなってきまして、、誰か助けて下さい……笑
……はい!ということで頭を現実に引き戻し、このnoteでは、最近話題の年収の壁について政策的観点を中心にまとめていきたいと思っています。
※今回対象とするのは、103万の壁・106万の壁・130万の壁です。
分かりやすく書けるよう、頑張ります!
①103万の壁
まずは最近圧倒的話題を誇る「103万の壁」からまいりましょう。
103万の壁とは、所得税の基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)を足し合わせた額です。
「この額までは所得税がかからないよ~!」ってやつですね。
この103万の壁、実は憲法25条で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための控除として位置づけられているんです。
と言っても、103万円全部が「生活最低限のコストを賄うための控除」なのではなく、その内訳である基礎控除と給与所得控除では、意味合いが少し異なるんですね。
まず基礎控除ですが、これはまさに前述の「103万の壁」の説明の通り、生活最低限のコストには課税しないという生存権保障の観点から設定されています。
他方、給与所得控除とは、「個人事業主の方が仕事に使った経費を税の対象外として計上することが出来るのに対して、勤め人は仕事に掛かる経費を税の控除対象とする制度がない」という格差を是正するために作られた制度です。
したがって、103万の壁そのものがまるっと生存権保障のために用意された制度ではありませんのでご注意ください。
そうすると、本来の生存権保障の意味合いで設定される基礎控除は現状48万円となるわけですが…。(明らかに足りないですよね笑)
生存権を保障するために必要な基礎控除の額や、給与所得控除の在り方については、今後のnoteで個人的な意見や分析とともに発信する予定なので、ぜひご覧いただけると幸いです。
②106、130万の壁
ここから106万の壁、130万の壁について触れていきますが、この2つの壁は、103万の壁とは少し性質が異なるのでご注意を!
103万の壁は、超えると発生する負担が「税金」であるのに対して、106、130万の壁は負担が「社会保険料」となっています。
さて、この社会保険料の壁については、単純に現状を解説するよりも、制度が作られた背景や時系列に沿った方が政策的な理解が深まるかと思いますので、そのように書いていきたいと思います。
Ⅰ.社会保険料の扶養・第三号被保険者の「130万の壁」
まずは130万円の壁について。
130万の壁とは、社会保険の扶養および第三号被保険者の基準である「年収130万円以下」のことです。
「社会保険料の扶養」とは、社会保険料に加入している方の同一生計で生活している家族を「扶養家族」として括り、健康保険料の支払いを免除する仕組みです。
一方「第三号被保険者」とは、第二号被保険者=厚生年金に加入している人(自営業を除いた、会社員や公務員の方など)の配偶者のみ(つまり被保険者の親や子どもや兄弟姉妹は含まない)の国民年金の支払い義務を免除したまま、国民年金に加入させる制度のことです。
……分かりにくいですね笑
主に何が違うかというと、適用する制度(社会保険の扶養は健康保険、第三号被保険者は年金!)と、適用される家族メンバー(社会保険の扶養は二世代以内の家族全員、第三号被保険者は配偶者だけ!)、そして運営主体くらいです。
社会保険の扶養と第三号被保険者はちょっと混同されやすいのですが、下の表をご覧いただければ少し分かりやすいかなと思います。(Chat GPTに作ってもらいました。)
以上の2つの意味で、年収130万円が壁となっています。
Ⅱ.なぜ「130万円」??
なぜ130万の壁は130万なのか???
基準がいろいろ変化していっているようなので、順を追って説明してみようと思います。
先ほど説明した「130万の壁」の二つの意味のうち、先に作られたのは「社会保険の扶養」の方です。
実は1970年代まで、社会保険の扶養の収入条件は健保組合が独自に決めていました。健康保険法には具体的な収入基準が明記されていなかったのです。
しかし、パート等で働く配偶者が増えたため、次第に明確な収入基準を求める声が強くなりました。
そこで厚労省は、当時の被保険者の給与所得控除(50万円)と配偶者控除(20万円)を足し合わせた70万円を、社会保険の扶養の基準として1977年に通達。その後も税制改正にともなってこの収入条件は引き上げられてきたのですが、1987年を境にこの連動はストップされ、代わりに収入の伸びに応じて引き上げられることに。
そして1993年から今に至るまで、130万円に固定されています。
上記のことはこちらの厚労省の資料に載っているので、ぜひご覧ください。(一応、抜粋部分のスクショを下に貼っておきます。)
Ⅲ.第三号被保険者とは?
第三号被保険者について、少しクローズアップして書きたいと思います。
先にも述べたとおり、第三号被保険者は「年金」の被保険者区分の一つです。
ではなぜ「第三号被保険者」なるものができたのか。
第三号被保険者は1985年、基礎年金が作られた際にできた仕組みです。
それまでの年金制度は、主に夫の年金で夫婦2人が生活するという前提に基づいて設計されたもので、支給額もそれを前提に決められていました。
妻は自らが年金に入らなくても、夫に支給される厚生年金で生活することができ、また希望すれば自身も国民年金に任意加入することができました。
しかし、時代とともに離婚するケースが増え、その場合国民年金に任意加入していない妻は老後の生活保障がないという問題に陥ったため、第三号被保険者の制度を新たに作り、(実際は保険料を払っていなくても)妻も漏れなく年金に加入させることで、これまで以上に(特に女性の)国民皆年金の理念を充実させることとなったのです。
財源としては、夫に支給されていた厚生年金(妻を養う分を含む)の一部を独立させて、妻(三号被保険者)の基礎年金に使うという運びです。
ちなみに自営業者の方の妻は、「夫婦で自営業を営んでいる」という考えに基づき、第一号被保険者として国民年金に強制加入することとなっています。
現在は働き方や結婚の在り方が多様化し、
自営業者の妻・・・第三号被保険者として加入できないので、自分で国民年金に加入して保険料を払わなければならない
勤め人の妻・・・第三号被保険者として加入でき、自分で年金を払う必要がない
という格差が今まで以上に目立ってきたため、第三号被保険者制度の廃止を求める声も上がっています。
Ⅳ.第三号被保険者を廃止したら、106万、130万の壁はなくなる?
国民民主党などが「106万、130万の壁の抜本的対策として、第三号被保険者制度を廃止します!」と言っているので、少し誤解するかもしれませんが、第三号被保険者を廃止したからと言って130万の壁や106万の壁が完全に解消されるわけではありません。
130万の壁については依然として「社会保険の扶養」の方が残るため、完全な解消には至りませんし、106万の壁についても厚生年金の制度であって国民年金の制度ではないので、あまり関係ないはずです。(後ほどまた解説します。)
Ⅴ.106万の壁
続いて、106万の壁について書いていきたいと思います。(ちょっと疲れてきた笑 あまりこういうのは慣れていなくてヘタクソな文章なので、皆さんも読んでいて疲れたら休んでくださいね。)
106万円の壁とは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する条件の一つである「年収106万円以上」のことです。
昔は正社員になる=社会保険に加入だったのですが、時代とともに非正規で働く方が増えてきたことを受けて、「国民皆保険」の観点からそういった方々も社会保険の恩恵を受けることができるよう、2016年に設定されました。
詳しくは下の画像をご覧下さい。(またChat GPTくんに書いてもらいました。)
つまり、今も壁が撤廃される動きがあったり、企業規模の条件が段々と緩くなったりしていますが、これは単なる嫌がらせではなく、(少なくとも国としては)「国民全員に社会保険の恩恵を与えたい」というご厚意なんです……笑
Ⅵ.なぜ「106万円」??
103万の壁は基礎控除と給与所得控除の合計額で、130万の壁は所得水準に応じて引き上げられてきた結果でしたが、106万円の由来は何なのでしょうか。
実は、(認識上ではよく年収で丸めて「106万の壁」と言われますが)実際は「月収88000円」が正しい条件です。(88000円×12か月=105万6千円≒106万円)
ではなぜ88000円なのか。これには、国民年金保険料と同等程度に合わせようという考え方が関係しています。
国民年金に第一号被保険者として加入する場合、保険料は約1.6万円ですね。
そして、第二号被保険者の厚生年金保険料は「標準報酬月額×18.3%」です。(標準報酬月額とは、ざっくり言うと月収のことです。ちゃんとした計算方法はあるのですが、今は割愛します。)
月収88000円×18.3%=16104円≒1.6万円
ということで、基準額が88000円と決まりました。
なので、130万や103万とは少し異なった考え方で設定されていることに注意が必要です。
Ⅶ.106万の壁と130万の壁の関係
この二つの壁、どのような関係性をお持ちなのでしょうか。
一度整理しておくと、それぞれの壁が対象としている制度は
106万の壁・・・健康保険・厚生年金保険
130万の壁・・・健康保険(社会保険の扶養)・国民年金保険(第三号被保険者)
ですね。
先ほども書いた通り、130万の壁の方が先にできていて、106万の壁は後にできた制度です。
つまり、健康保険の観点のみで見ると、106万の壁は社会保険の扶養に入っている人の一部を直接保険料を納める形で保険に加入させるために導入された制度で、年金のみの観点で見ると、106万の壁は配偶者の一部を国民年金だけでなく厚生年金に積極的に加入させる意図で導入されたものという見方になります。(「一部」という書き方をしたのは、106万の壁には年収以外にもいくつかの条件(勤務先の従業員数や週当たりの労働時間など)があるからです。)
前者の目的の背景は「高齢者の自然増による保険財政の悪化」で、後者の目的の背景は「基礎年金の支給額の低下見込み」となっています。
Ⅷ.「106万の壁を越えても130万の壁が待っている」は存在しない?
当事者の方はもちろん、当事者以外の方でも、ここまでの説明でおそらく理解されている方が多いかと思いますが、106万の壁と130万の壁は同じ軸に存在するものではありません。
「106万の壁を越えても130万の壁が。。。」というようなことにはなりませんし、106万の壁の対象者は130万の壁を気にする必要がありません。
106万の壁を越えてしまえば既に健康保険も年金も自身のお金を払って加入していることになるため、扶養や三号の余地がないからです。
Ⅸ.今後の106万、130万の壁
最近のニュースでは「年収106万円」の条件が撤廃されると報道されていますが、今までも勤務先の従業員数が501人以上→101人以上→51人以上と緩和されるなど、確実に社会保険の加入条件が広くなってきています。
つまり、130万の壁の対象者だった人が106万の壁の拡大によって今後どんどん直接お金を払う形で社会保険に加入することとなり、最終的には全く収入を得ていない専業主婦(主夫)の方のみが、社会保険の扶養や第三号被保険者の制度を使うことになるかもしれません。(その場合、130万の条件はもう形骸化したも同然ですが。)
ここで再度取り上げますが、第三号被保険者を廃止しても、106万、130万の壁が完全に解消されるわけではありません。(一助にはなるかも。)
最後に
今回は、主な三つの年収の壁についてなるべく分かりやすく解説してみました。
あくまで政策的観点なので、主な内容は大きな理念や考え方についてであり、細かい数字などには言及していませんが参考になれば幸いです。
ここまで読んでくださり、本当に本当にありがとうございました!
また何かのテーマで更新したいと思います。
……皆さんもぜひ「ロシデレ」見てみてね!笑