ブスの神様 4
笑ってる…。
妊娠して赤ちゃんを堕ろすって…
大変なんだ…
ってそんな状況なのに笑ってる。
私達、18歳だよ…
夏美は悲しくなった…
夏美は切なくなった…
夏美は辛かった…
夏美は梨沙との電話を切り
母親の部屋へと向かった。
夏美は本当に今、お金を持っていなかったから。
いや、持ってはいたけど1万円はなかった。
今泣き出したい
今叫び散らかしたい
母親の部屋の扉をノックしそっと開けた。
深夜1:00を過ぎているこの時間
もちろん母親は眠りについている。
ごめんね、お母さん。
ごめんなさい。
母親は少し驚いたように目を覚ましてくれた。
なるべく驚かさないようにそっと
でも幽霊だと思わせてしまわないように
人間らしくしっかり歩いて近づいた。
「あのね、梨沙ちゃんが
今どうしてもお金必要みたいで
すぐ返すから1万円貸してほしい」
あぁ
理由を聞いてほしかった。
怒ってほしかった。
こんな時間になんなのって
何でお母さんが1万円出さないといけないの?
って
何考えてるのって言ってほしかった。
母親は何も言わずバッグからお財布を出し
そこから1万円を取り出した。
何も言わず夏美に渡した。
「ありがとう」
それだけ言い夏美は自分の部屋へ戻り
出かける準備をした。
簡単に着替えて
梨沙から指定されていた近所の公園へ向かった。
深夜、1万円を握り家を出る娘を
母親はどう思っていたのだろう。
きっと起きていたはず。
近所の公園へは歩いて向かった。
車の運転免許は持っていたけど
まだ車は持っていない。
普段は歩きか自転車で生活をしている夏美。
ほんの数分で着く。
夏美と梨沙の家の真ん中くらいだろうか。
居た。
遠目からでもわかる。
ギャルの若い女の子2人
2人とも黒っぽい格好をしているがわかる。
金髪で煙草を持ちながら
パラパラのような動きをして踊っている。
夏美は少し震えながら近づいていった。
「来た〜遅〜い」
眠くないのかな…
同じ歳とは思えない。
こんな時間に毎日毎日…
私を巻き込まないでよ…
夏美は心の中で呟き梨沙と友達らしき人物の前に
辿り着いた。
「ごめん、遅くなって。」
「持ってきた〜?
この子、妊娠してるの
なのにタバコ吸ってるんだよ〜
ウケるでしょ〜」
やはり、この子なんだ
きっと私と同じ歳だろう。
そんな気がする。
梨沙とその友達という人物は
ケラケラと笑いながら煙草を口にした。
ウケないよ…
本当に妊娠しているなら、こんな時間に
外でヘラヘラしている場合じゃないでしょ
本当に私達、18歳なんだよ…
夏美は悲しくなった。
怖くなった。
それ以上は何も考えず母親からかりた1万円を
梨沙に手渡した。
「持ってこれるんじゃ〜ん
今日はもう帰っていいよ」
隣のお友達は何も言わずニヤけているだけだ。
いつもならこのまま朝まで梨沙の話を聞いているかファミレスに連れて行かれて
ご飯を奢るか
出会い系サイトで車を持っている男性を
梨沙のために探すか。
そして梨沙に眠気が襲って来た頃開放される。
冬の朝方は凍え刺さる寒さに毎回地獄をみるが
まぁ、今はマシ。
今日はお友達と一緒だから夏美に用はないらしい。
安心感のような脱力感のような
そして、あの子は本当に妊娠しているのかなと
疑ってしまう夏美。
この後、梨沙とお友達はあの1万円で
遊びにいくんじゃないか?
妊娠は嘘なんじゃないか?
嘘であってほしい。
そうでなきゃ赤ちゃんが可哀想。
今日はいつもより早く帰れた。
まだ空が暗いから。
はぁ
このまま深海のような深い深い黒の中に
吸い込まれたら楽なんだろうな。
夏美も朝帰りの不良娘だ。
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