大学職員ってどんな仕事?(部署や業務内容について)
(2024年7月9日に更新しました)
大学職員はホワイトって聞くけど、他の業界で働いている人からしたらどういった仕事をしているのかあまりイメージが湧かないと思います。実際に大学に行っていた人は、窓口での対応や就職の相談に乗ってもらったことがあるかもしれません。しかし、学生視点から見えるのは業務のほんの一部です。
今回はそんな大学職員にはどういった部署があり、どういった業務内容なのかを簡単に説明していきます。これらを理解していると、エントリーシートや面接でありがちな「実際にどういった業務をしてみたいか」「あなたの業務経験を活かして大学職員としてどういった貢献ができるか」といった問いに対して答えやすくなります。
※あらかじめ断っておきますが、これから紹介する部署や業務内容はあくまで一例です。どの大学にもあるよね、という部署を一部抜粋して紹介しています。大学によって部署名や担当業務には差がありますし、キャンパスや学部で業務が分かれていることがありますのでご了承ください。
導入:教員にも役割がある!?
実は私は大学職員になる前まで、大学の教員は研究や学生の指導をするだけで、事務や運営に関しては職員がするものだと思っていました。しかし、実際には専任教員(※)はいずれかの担当部署に割り当てられ、職員と共に大学におけるその役割を全うします。
教務課であればカリキュラムの作成などについて、学生課であれば学生生活について、就職課であれば学生の就職率向上について、など教員にも教員側からの大学運営を担っている部分があります。といってもやはりそういった所の事務的な部分は職員がメインとなります。
※専任教員とは、その大学をメインに教育研究活動をしている教員の事です。授業を数コマ持っているだけだったり、メインが他にある教員はたいてい非常勤講師と呼ばれる立場の教員です。
①学業の根幹を担う「教務課」(学務課・学部事務室)
まずは大学で一番大切な学業の運用を担当する「教務」から紹介します。教務はまさに大学職員の花形と個人的に思っています。学生の本分は勉学であり、その中心を担っています。具体的には履修登録、成績処理、カリキュラム関係、授業に関する教員対応の窓口などを行っています。また、大学によっては教職などの資格関係も教務課で行っていることもあります。
繁忙期は成績処理を行う7~8月、2~3月。そして3~4月は卒業から新入生対応といった事が山積みになるので1年で一番忙しくなります。ただ、教務課は結構担当者の持っているタスクによってまちまちなので、担当ごとに忙しい時期も少し変わってきます。
他業界からここを志望する人はなかなかいないと思いますが、もし志望するならやはり「学生の勉強を支えたい」といった理由になるかと思います。私はずっと教務を担当していたので、自分のスキルがそのまま使えるから、という理由で教務を志望していました。
②学生生活はここにお任せ「学生課」(学生支援課)
学生生活全般を担当しているのが「学生課」です。ここはなんとなくイメージがしやすいかと思います。主な業務内容は行事の運営(文化祭等)、奨学金の案内、部活動やサークル、健康相談、学生生活全般の相談(落とし物や一人暮らしの住居等)などを行っています。
実際に学生時代に奨学金の相談を受けた方も多いかと思います。また、文化祭を運営していたなら学生課と色々調整して開催したことかと思います。このように学校行事から落とし物まで学生生活の様々な場面で支えているのが学生課になります。
繁忙期は3~4月や文化祭シーズン(大学ごとによるが、10~11月ごろ)などの学校行事の時期は忙しくなります。
私が相談に乗っていた他業界の大学職員志望者に多かったのがこの「学生課」です。やはり学生を支える=学生課、という印象が強いみたいです。もちろん一番イメージしやすいから志望理由ややってみたい業務で学生課をあげるのは良いとは思いますが、他の志望者との差別化が難しい点は覚えておいてください。
③学生の就職や進路のスペシャリスト「就職課」(キャリアセンター)
学生は卒業したらほとんどが就職します。その出口戦略を担っているのが「就職課」です。主な業務内容は学生の就活相談、就職ガイダンスの開催、企業の人事とのやり取りなどがあります。
繁忙期は企業の採用活動が始ってから本格化する4~6月、9~10月あたりかと思います。ただこれも企業の採用スケジュールに左右されるので、こうした情報はチェックしておかなくてはいけません。(22卒の場合は就活解禁日が3月1日でした)
近年大学受験生やその保護者は就職率を割と見ています。同レベルの志望校の場合、就職率を見て大学を選ぶこともあったり。こうしたことからどの大学でも出口戦略には力を入れています。
こうした事情から中途採用では企業で人事を担当していた人やキャリアコンサルタントの資格を持っている人材を求めているケースが良くあります。ですので、そういった方はチャンスかと思います。
④学生確保に常に追われている「入試課・広報課」
学生確保は大学を運営する上で至上命題であり、この「入試課」や「広報課」ではそれが主な業務になってきます。ここはセットになっていることがあるのでまとめて業務内容を説明すると、入試業務はもちろんのこと、高校訪問や合同説明会での大学案内、オープンキャンパスの運営、HPやSNSの運用などといったことを行っています。
繁忙期はオープンキャンパスを多く実施する8月、入試時期の11月、1~3月あたりです。そして何よりこの部署は土日が潰れがちです。たいていオープンキャンパスや入試がある土日は出勤しなくてはならず、その場合は代休を取得することになります。ただ、そんな毎週毎週土日出勤しなくてはいけないわけではないです。年に数回こういったイベントは出る、くらいですのでお間違えなく。
大学職員には珍しく成果が数字としてわかる部署です。もちろん入学者数は社会的な流れに左右されることもありますが、少子化の現代では様々な入試制度や仕掛けをしていっています。逆に言えばそれだけやりがいのある部署だと私は思います。
高校とパイプを持っていたら結構入試課で重宝されるかと思います。また企業でSNSやホームページを使ったPR活動をしていたら広報課が向いています。もちろんそういったことが無くても学生確保について何か思う所があれば入試課や広報課を志望するのが良いと思います。
⑤学生や学校の国際交流の窓口「国際交流課」
大学間の国際交流や留学生を担当する「国際交流課」。主な業務内容は学生の留学対応、留学生の対応、協定校の大学とのやり取りなどがあります。
ここではやはり英語力はもちろん、他の言語も求められることもあります。よく国際交流課の求人には「TOEIC何点以上」などといったスキルが必須条件になることがあります。ですので、国際関係の業務に従事していた人はこのような求人はチャンスであり、こういった部署を志望することで大学側とマッチするかと思います。
⑥ICTのスペシャリスト「情報システム課」
学内のICTに関することを担っているのが「情報システム課」です。新型コロナウイルスの影響により一気に大学のICT化が進み、この部署の意義が大きくなりました。主な業務内容は学内の情報機器の管理、システムの運用などです。コロナ禍ではオンライン授業の運用が必要となり、教員と情報システム課、教務課といった部署が連携して各大学取り組んだことかと思います。オンライン授業を継続している大学では、そうしたシステムやアプリケーションといったことも担当しているのが情報システム課です。
ここを中途で採用する場合、やはりSEやプログラミングに強いなどといった情報関係に従事していた人を採用します。ですので、そういった情報関係に携わっていた場合は、情報システム課を志望すると採用に一歩近づくことができます。
⑦大学や学校法人を陰で支えている「総務課」
学生を支える、というよりも大学や学校法人そのものを陰で支えているのが「総務課」です。主な業務内容は文科省からの調査への回答、補助金関係、式典や会議の運用、更には郵送物は宅配便の受付などを行っています。小さい大学ならこれに施設管理関係や人事関係、財務関係、学長事務室の業務も関わってきたりします。ほんと大学の便利屋さん、という感じです。総務課の業務の幅はそれぞれの大学や学校法人によってまちまちですので、大学によってはかなり広い業務内容を担っています。
⑧教職員の管理は「人事課」
総務課が大学や学校法人を支えているのであれば、その中の教職員を支えているのは「人事課」です。主な業務内容は人材採用関係、職員研修、福利厚生・給与関連などです。最近では人事評価を取り入れている大学も多く、人事課と管理職、また法人の方と連携して職員の評価を決めて給与に反映させていく、といったことも。
また、採用の際には皆さんをお世話になっていますよね。募集要項や書類の受付、応募者への連絡などを行っています。
⑨大学の金庫番「会計課」(財務課)
大学の財布の紐を握っている「会計課」。主な業務内容は様々な会計処理、科研費や補助金関係などを扱っています。自分は会計関係が良く分からないのですが、一般企業との会計と学校法人の会計はまたちょっと違うらしいです。それでも数字に強かったり、簿記を持っていたり、一般企業での経験があったらこういった部署で活躍できるでしょう。
また、自分の支援者で銀行出身の方はだいたい最初は会計にいっています。やはりそういった方面は銀行マンが強いのでしょうかね。
⑩学校の設備や備品の管理「施設管理課」(管理課・管財課)
学校の建物や設備、備品を管理しているのは「施設管理課」。主な業務内容は施設や備品の管理、また建物の修繕や建て替えなど細かな事から大掛かりなことまで行っています。教室の蛍光灯を変えたり、チョークを補充したり、一方で校舎を建て替えたり新たに増設する際の計画などはお偉いさん方や建設業者とタッグを組んで取り組んだり。ほんと小さいことから大きなことまで施設関係を担ってくれています。
また、こちらも中途での採用が多いのですが、電気技師や建設関係、施工管理などそういった方面の人が採用されている気がします。
⑪学長の補佐だけではない!?「学長事務室」(学長企画室)
大学にはだいたい「学長事務室」などといった学長の秘書的な部署があります。もちろん学長のスケジュール管理や学長周りの対外的な渉外が基本的な業務となります。ただ、ここからの+αの業務については大学ごとに変わってきます。
地域連携、FD/SD、企画室、大学広報(入試以外の広報)、TV等のメディア対応などなど。もちろん今挙げたのは一例であって、大学によっては他の部署が担うこともあれば、こうして学長事務室が行っていることもあります。
また、学長と近い距離にいることになるので、学長と仲良くなれます(笑)
他にも対外的に関わることもしばしばあるので、そういった意味では外との広い人付き合いが生まれる部署でもあります。
⑫地域の窓口となる「地域連携センター」(産学官連携室)
大学には組織の使命として地域貢献の側面もあります。そうした地域貢献に関する窓口となるのが「地域連携センター」です。主な業務内容は地域向けの公開講座、産官学連携の渉外などを行っています。この部署は大学にしては珍しくかなり外向きの部署になります。
地域のおじいさんおばあさんをターゲットにしてどういった講座を開くか、地域の小学校と連携してどういった企画をしようか、また企業や自治体と連携してどんなイベントを開こうか、などなどを学内学外と連携して実施していきます。
よく転職で「地域連携を進めていきたい」という声がありますが、こちらの部署、学内の組織としてはかなり小さい方です。もちろん大学として力は入れていますが、それほどマンパワーを割く部署でもないのでこれ一本で攻めるのは悪手です。地域連携を転職理由ややりたい業務に組み込むのであれば、地域連携+何かくらいでいきましょう。
⑬大学の研究を支える「研究室」(研究所・学科研究室)
大学は教育機関であると共に研究機関でもあります。そういった研究を支えているのが「研究室」です。主な業務内容は研究に係るサポート、研究費関連の書類作成・申請、学外の研究費獲得に関する業務、研究政策に関する業務などです。
平たくいえば先生の研究周りの様々な雑務を担うお仕事です。先生は研究でお忙しいですからね。そういった雑務が苦手な先生が多く、面倒な書類関係は全部研究所員に回ってきます。まあ逆に言えば研究に貢献したい、だけど直接的な貢献はできないからサポートに回りたい、という方にお勧めです。
まとめ・おわりに
いかがだったでしょうか?大学職員の業務内容について少し理解することができたでしょうか?
大学は様々な部署で運営されており、今あげたものはあくまで一例です。ですが、だいたいはカバーできたと思いますので大学職員を志望している方のためになれば、と思います。