始まりの記憶(私、女の子が好きなんだ…)

5月9日より、放送開始されている、See You In My Dream。 今は、Episode7まで放送されています。
…が、お互いに想い合っているのに、まだ伝えあえていません。周りから見たら一目瞭然なのに…。届きそうで届かない、お互い想い合っているのに伝わらない、このもどかしさ。
先週のEp6を見ながら、自分の初めての同性の相方さん(尚)との関係を、思い出しました。なんでこんなに重なるんだろ。学生同士だと、みんな同じ感じなのかなぁ。


あの頃、小中学校から一緒の仲良し5人組で、よくお泊り会をしてた。
未成年だったからお酒は飲んでなかったけれど、ワイワイした後いつもみんなで雑魚寝。
学生の時って、何故かボディタッチ結構許されていて、ベタベタしててもあの2人は仲良しだから…的に周囲からも受け入れられてませんでしたか?結構、あちこちにそんな子達もいましたよね?それに私達の学校は、何故か小学6年生の時、女子同士でほっぺにチューし合うのが流行ったりもして。(今思えば、何故そんな事をしたのか不思議。)

クラブも引退して受験に向かって必死になってた冬、息抜きと称した年越しお泊り会。雑魚寝中に、シャンプーの話になって、
「私、匂いでシャンプー当てられるよ。」って、尚がみんなのシャンプーを当て始めた。他の子達の髪の匂いかいでるのを見て、何故か腹が立って背中を向けた。(今思えば、嫉妬だなぁそれ 笑 )
最後に、その私を軽くバックハグして、髪の匂いをかぐからドキドキした。
そして、ドラマと同じそのまま放置プレイ 笑
その時は、自分はノーマルだと思っていたから(思いたかったから?)、嫌じゃなかった事に自分は変なのかなぁって悩んだりもした。

初めての女性とのキスは、尚とだった。
いつもの5人組。高校生になって初のお泊り会で、急に熱が出た私は、他の部屋で1人ベッドに寝かされてた。
みんなの声が壁越しに聞こえてて「楽しそうだなぁ」ってボンヤリ思いながら寝てた。
それからどれ位後なのか分からないけど、静かになってたからきっとみんなが寝た後だと思う。尚が、冷たいお水を持って来てくれた。
大丈夫?っておデコに乗せられた手が、ヒンヤリ気持ちよくて目を閉じた気がする。
それが駄目だったのか、「うつしてイイよ。治るんじゃない?」って唇にキスされた。布団を肩まで引き上げる…位の、なんともない行動のようにキスして…しといて、尚は「ちゃんとお水飲むんだよ。」ってそのまま部屋を出ていった。
「何故、キスしたんだろ。本当に治ると思ってる?」
「外国の人は友達でもキスするから、そんな感じのつもりだった?」
「からかわれた?」
なんて、ぐるぐる色々考えちゃって余計に身体がほてって、置いていかれた事が何故か悲しくて、熱でぼんやりの頭で少し泣いた。
そのまま期末テストの期間に入り、このキスの意味がわからないまま夏休みに。
1人で居ると、あの時の事ばかり考えてしまって、そんな自分を持て余してた。
唇の柔らかさ、パサッと顔にかかった髪の匂い。そして、あの時の胸がギュッとした初めての感覚。
考えて考えて、認めるしかなくて。
それでも、その自分を否定したくて、まだノーマルだと思いたくて、その時つき合ってた2つ上の彼氏と先に進む事にした。

夏休み、海に行った帰りホテルに入った。初めてのSEXは、ただただ苦痛だった。恥ずかしい気持ちと、触られている不快感。濡れなくて痛くて、早く終わって欲しいと願った。その中でも、キスされるのが1番不快だった。泣きそうな経験だった。
覆い被さっていた不快感から解放された時、後悔で涙が溢れた。

家に帰って、ゴシゴシ身体を洗った。全部なかった事にしたくて、そして情けなくて情けなくて泣きながらシャワーを浴びた。
夏休みで良かった。部活が違う尚と、会わなくてすむ。
バレーボール部の私と、水泳部の尚。有難いことに、毎日ある部活動は、体育館と運動場の端にあるプール。時折、部活の昼休みや帰りにニアミスしかけたけど、気付かない振りをして通り抜けた。

そうこうしている内に、PL花火の日が来た。毎年、部屋から綺麗に花火が見える菜津子(なつ)の家で、昼前からいつメンで集まっている。
なつから、集合時間のLINEが入る。毎年お願いしている、なつのお婆ちゃんの出し巻きが最高なんだけど…。ちなみに、なつはお嬢様で、高校も私立の女子校に行っている。高校がちがうみんなに久し振りに会いたいけど、今年は行きたくない。
でも、でも…ホントは尚の声が聞きたい。

普通の顔ができるのか不安だったけど、集まるといつも通りでホッとした。私が彼氏と別れたコトを、同じクラブのゆきがみんなに報告する。
バレー部主将で、春高バレーにも選ばれた事のある先輩と別れたのは、みんなにとっては悲鳴物で、散々怒られたが笑ってやり過ごした。

花火は今年もとても綺麗で、花火の光があたる尚の横顔はもっと綺麗で、触れたくて困った。
「私の感情は、どうしてしまったんだろう。このよくわからない気持ちは、どうしたらいいんだろう…。」
尚の性格的に気持ち悪がったりはしないだろうけど、きっと困らせてしまうだろう。距離ができて、今までの関係ではなくなるのかもしれない…。

尚は私が転校してきた小3の時から、横にいる事が当たり前の存在。これからも、当たり前にそうだと思ってた。
その関係をなくすかもしれない事に気付いて、私は盛大に焦った。隠し通すために、何でもしようと思った。

花火の後は、みんなでいつものバカ話。今回は、別れた私のための紹介や食事会を…との話で盛り上がった。
タイプを聞かれて、「自分より大きい人」と答える。167cmある私は、まだ、クラスの半分位の男子より身長が高い。
170cmの尚が、「じゃあ、私でいいんじゃない?」って笑う。いつものやり取りに、胸がギュッとなるのが悔しい。
(これも、タイGLドラマに似たようなシーンがあったなぁ。)
明け方、話し疲れてみんなで雑魚寝。
眠れなくて何回も寝返りをうつ。5時55分。眠れないまま朝のルーティンの、ジョギングに出る。いつもなら、尚を誘って2人で行くのだけれど、今日はそっと1人で出る。
もう、外は明るくてセミも鳴き出している。色んな事を振り払いたくて、いつもより早いペースで走り出す。
折り返しの公園の、今時珍しく残っている水飲み場で顔を洗う。Tシャツの袖で顔を拭こうとすると、足音がしてパサッとタオルが飛んできた。
「走るなら、タオルくらい持って行きな。まぁ、そういう女子力のないトコロ、好きなんだけど。」と笑う尚がそこに立っていた。
「うるさいなぁ」と言いながら、タオルで顔を拭きながらそっと深呼吸。タオルからする尚の匂いが心地良い。(私って変態?)

すると、私の頭をぽんぽんってしながら
「大丈夫?…じゃないよね。何かあった?ずっと気になってたけど、みさきが私を避けてるみたいだったから。」と微笑んだ、
頭の中で、何か弾けた。
「もう、なんなん!!あの時、なんでキスしたん?あれから、尚の事どう見たらいいのか分からん。1人でいたら、あん時の事ばっか思い出す。そんな自分をどうしたらいいのかも分かんない!!」と叫んでしまった。
 少しびっくりした表情で、私の顔を覗き込んだ尚が「みさき、それって、私の事好きって事?…だよね?」と聞く。

(そう言えば、コレ、日本のGLドラマでほぼ同じシーンがあってびっくりした。そんな事ある訳ないけど、一瞬尚が脚本書いたのかと思ったりして…笑。)

「しまった。終わった…。」泣きそうになり、その場を離れようとした私の腕を掴んで、
「気持ち悪かったら、…ごめんね。
でも、もう隠しておけそうにないかな…。」
「私は、出逢った時から、みさきが好きで…。
ずっと隠しておかないと、友達で居続けないと、側にいれないと思ってた。
だから、苦しかった。
あの時触れちゃったから、もっと苦しくて。だから、みさきが私を避けるなら、もうそれでいいと思った。」
「でも…。」とぽつりぽつり考えながら、絞り出すように話す尚の声が揺れた気がして顔をあげた。
…尚が泣いていた。
私は、尚が泣くのを、長い付き合いの中でその時初めて見た。
男子に意地悪をされても、卒業式でも、骨を折った時ですら泣かなかった尚が、泣いていた。
ズルいなぁ。もう、逃げられないじゃん。
「ばっかじゃない。」って尚の髪をクシャクシャにした。周りに誰もいないのを確認して、一瞬頬にキスした。安心する尚の匂いと、汗の味。
自分でしときながら、恥ずかしくて恥ずかしくて。顔をあげられずに、下をむいて砂を蹴った。
「みさき」
呼ばれて顔をあげた瞬間に、尚にチュってされた。…唇に。
朝の公園だよ。誰か来るかもしれなくて、コッチは焦ってるのにお構いなし。でも、尚の目が、とても幸せそうに笑ってた。きっと、私も同じ顔してるんだろうな。
焦りながらも、気持ちは満たされてた。もっとそうしてたくて、もっと触れたくて、もっと知らない尚を知りたくて、もっと知らない私を知りたくて。
尚となら、大丈夫な気がした。そして、この世界が、少し光度を増した気がしてた。

ドラマを見ながら、そんな事を、ぼんやりと思い出した。


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