パリ ゲイ術体験記 vol.43「名物ピアニストの珍ペット」
ある日の夜中3時過ぎに電話が鳴った。かけてきた主はピアニストのJ子さん。
ふらふらと電話にでた私に、チチが急死してどうしてよいか判らない、いきなり絶望の淵にたたされて脱力感しかない…と意気消沈、嘆きの極み。
昨日まで元気だったのに何故なのか. . . 最期ならばもう一声聞きたかった . . .急死するような可能性のある持病があるとは医者は言わなかった. . . 手厚く弔ってやる方法は. . .?などなど、止む事のない彼女の話を友達の役目として、真夜中ではあったが神妙に話につきあっていた。
会話が小一時間ほど経ったところで「おいくつでいらしたのですか?」と尋ねる私の質問に「5歳よ」と答える彼女。
「はぁ、85歳でしたか. . .」と言う私に「バカね、85年も生きてるわけありませんでしょ」というやりとりから、死んだのは実は父上ではなくて彼女の飼っているチチラという名のペットのネズミだったことが判明した。
夜中3時にかけてきた電話なので私の耳が起きてない上に彼女が興奮して早口でまくし立てるものだから、「チチラが」を「チチが」と完全に間違えて理解してしまっていた私だった。
だけど、私にとって何の所縁もないネズミの死を真夜中に知らせてくる事が理解できないのである。
それに、相手は動物なのに「死んだ」とは言わずに「お亡くなりになる」なんて敬語を使うやや問題ありの国語力も. . .
やっと眠りについたところを叩き起こされて不機嫌だった私は「夜中に起きて真面目に慰めて励ましたエネルギーがアホらしい…」と正直に言ってしまったら、「まぁーひどい失礼な方、チチが死んだくらいならこんなに騒ぎませんわよ!」などと言っている。
いったいどっちが失礼な人間であるか。
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