#恋愛
29. 【詩】 花手水 (はなちょうず)
朝目が覚めて
自分の呼吸を確かめる
生きている
それは恵みだと
君が言う
どうしようもなく
寂しさの底の底で
水にくるまれる時でも
好きなものをスキとまっすぐに言えたら
それを幸せと名付けよう
無感動でなければ進めなかった
あの青い夜更けを漕いで
流れる方向に中指の先を浸す
水分に触れた感触も
そのままでいい
流れてゆくものは
後を断たない
けれどもし
ゆきたい
夜さり (ようさり)
呑み残したワインの赤を
少し傾けて三日月
網戸越しに夜空を区切って
星一つ惑星二つ
ひと目進んで小宇宙
碁盤の上でスキップを踏んで
私ごと小さくなって
水仙の帽子にスノードロップのトップス
カラーの袖口優雅に
オンシジュームのロングスカートが戦ぐ
ドレープに眩しく泳ぐ月光
ステップを踏み
常夜灯の優しいテラス席に行き着けば
闇色のカフェインのため
ざっくりと粉砂糖に匙を差し込む
想像されるサ音より