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父の膝の上

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5歳の時に父を亡くした。
父とはあまりいい思い出はない。
食べる時に、肘をつくとパーンと手が飛んできた
そして、食べ物の好き嫌いをすると、物凄く怒られた。
また、父はよくスイカを買ってきたのだが、スイカを姉妹で取り合いをしたのか、はっきり覚えていないが、すぐ上の姉と喧嘩した時、こっちに来いと、父に呼びつけられ、小さかった私は訳が分からず
恐る恐る父の前に出ると、頬を思いっきり引っぱたかれた。今なら大問題になるだろうが、昔は当たり前だった。

また、こんな事もあった。家の外にいた私を呼びつけて、お酒を買ってこいというのだ。少し歩くと店があったが、とても恥ずかしくて行けない。5歳だよ。
窓の外で座っていて、じっとしてると、まだ行ってないんか、と言われたけど、私はテコでも動かなかったから、父は諦めたようだ。
その後、どうしたのか覚えていない。今から思うと父は病気がつらくて、お酒で気を紛らしていたようだ。その頃は検査など充実していなかったが、おそらく癌だったのだろう。

この時のことは、その後成人になっても、度々店にお酒を買いに行く夢となって思い出す。夢の中での私はいつも恥ずかしい思いをしながらお酒を買っているのだ。

そんな無茶ぶりで、厳しいところもあったが、私が遊んでいた時に、誰かが投げたボールが鼻にあたり、大出血したことがある。その時父は犯人探しにやっきになった。娘を傷つけるヤツは許せない。そんな父親らしいところもあったと微かに覚えている。

父との思い出は当時5歳だった私には、そのいくつか位しか思い当たらない。けれど、強烈な印象として残っている。

父が亡くなっても、死という意味がよくわからなかったし、嫌な思い出しかないので、そのまま父のことを考えずに時が過ぎた

だが、大学生の時に一年間だけ、下宿したことがある。その時はいろいろ悩んで、一人寂しくて、よく泣いていたと思う。前の記事で「病気と闘う貴女へ」という記事を書いたが、その時知り合った人から小さな聖書をいただいた時、大泣きに泣いたのはそんな時だった。
その時、初めて父が恋しくなった。お父さんの膝に乗りたい、お父さんの膝に乗って、優しく抱かれたいと思ったのだ。父に何の感情も持たなかった私が、なぜそんな風に思ったかわからない。

そして、なぜかまた今の歳になって、父のことを考えるのだ。

お父さん、ごめんなさい

あの時、病気だったんだね。

子どもだったからわからなかった。

でも、とても苦しかったんだ
ね。

心に余裕がなかったんだよね。

理解出来なくてごめんなさい

そしてあなたの事を嫌だと思っていた私を許して…

私を膝の上に乗せてください。あなたの膝の上で、いつまでも眠っていたいのです。

お父さんに会いたい…

絵だけは父に抱かれて、幸せな私を表現したいと思って、トップ絵に描きました。

※この記事、下書きで温めていたのですが、さこうさん
のお父様への短歌を読ませていただいて、アップする気になりました。有難うございます。


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