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第5話 団地

私が幼少期に住んでいた団地は
当時、小さな川を渡ったら
たくさんの棟(32棟ぐらい?)が
立ち並んでおり
小さな国のようなところだった

割と都会で
下に降りれば
すぐにスーパーやヤマザキショップ
その他小さな商店

道挟んだところに小学校
その隣に短大
その近くに中学校
と、立ち並んでいた

私は市営団地に住んでいたが
県営や分譲
今のURや一軒家
と、多種多様の地区だったため
露骨に差別する人たちもいた

小学3年生のある日
漢字が違う私と同じ名前の
友達の家(分譲)についていくと
友達のお母さんが出てきた

私は母に
「決してお友達の家にあがっては
いけません」と言われていたので
友達のお母さんには
「こんにちは」と挨拶だけした

そのお母さんは
私を見ると
「あら、明子ちゃん。こんにちは。」
そして友達の暁子ちゃんに向かって
「今からどこで誰と遊ぶの?」
と尋ねた

暁子ちゃんは
「今から明子ちゃんとのりちゃんと
みゆきちゃんと遊ぶよ」
と言うと
玄関先にランドセルを置いた

暁子ちゃんのお母さんは
それを聞いて不機嫌そうな表情になった
「暁子。前にも言ったと思うけれど
市営団地の子とは、遊んだらダメだと
言ったでしょ??」

私は思わず顔をあげた
聞いたことあるけど
ピンとこなかったからだ

『シエイダンチ…?』
みたいな顔をしていたのだろうか
暁子ちゃんのお母さんは
慌てて言葉を追加した

「あ、明子ちゃんは別よ。
明子ちゃんは頭が良くて
勉強ができるから
暁子に教えてもらわなくちゃ。
お母さんもキチンとしてあるしね。
でも他の市営団地の子たちは
悪い子ばかりで
おばちゃんは嫌いなのよ。」

私はやっと
『あぁ、私が住んでる団地のことか』

でも…
のりちゃんもみゆきちゃんも
いい子なのに…と思ったのを
覚えている

暁子ちゃんは
お母さんには黙ったまま
「行こう」
と私に言った

私は
暁子ちゃんのお母さんの見立て通り
その後も
勉強だけは何故かできた

でも暁子ちゃんは
中学に入ると
グレてしまい
私とは話さなくなった

そして
いつの間にか引越してしまって
一緒に卒業することはできなかった

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