虐殺ラジオ
大学に進学し念願の一人暮らしを始めた佐々木さんはその日、ベッドの上でヘッドホンを着けたままラジオを聴いていた。
スマホでラジオのチャンネルを適当に合わせ、漫画の本を手に取る。
無音のラジオから何やら会話の様な音が聴こえた。
ラジオドラマも悪くないと佐々木さんは気にせずラジオを聴き続け本のページを捲った。
頭には余り入ってこないが、何か聴きながらこうして漫画を読むのが好きな佐々木さんにとっては、別段気にする事ではない。
だが。
『嘘!止めて!』
女の悲痛な声が耳に響いた。
その瞬間。
──グシャッ
何か肉の塊が潰れる様な音が鳴る。
その後も。
──グシャッ
──グシャッ
と、鈍い音が何度も続く。
『お前が悪い……お前が悪いんだ』
男の冷たく言い放つ声。
どうやらサスペンスドラマの様だが少し気持ち悪い。
──ギコギコッ
──グチュグチュ
ノコギリの様な音と共に歪な水音が聴こえてくる。
流石にこれはないなと思い、佐々木さんは起き上がりスマホを手に取った。
電源が切れている。
「えっ……?」
佐々木さんが小さく漏らすように言った時だ。
──ギコギコギコ
「うわあっ!」
驚きヘッドホンを脱ぎ捨てた瞬間。
──グチュグチュ、ドサッ
耳元で音が聴こえ、佐々木さんは慌てて家を飛び出したという。
以上が佐々木さんが体験した話だ。
その後、佐々木さんは念願の一人暮らしを諦め実家に戻った。
今現在はバイトに勤しみ、次のアパートを探しているらしく、今度はちゃんとしたアパートを探すと、友人に語ったという。
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