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寒い日、手、恋の行く末
寒い。すこぶる寒い。
こんにちは。ニートのさくちゃんだ。
寒波が舞い戻ってきた今週。もう戻ってこなくていいよと優しく圧をかけて言ってあげたいけど、寒波に話は通じないので、人間側ひいては動物側の私は、ただ暖をとって耐え凌ぐしかない。
ふと。
寒い日に、思い出すことがある。
私が学生だった頃の話だ。
その日、私は数年間ずっと好きだった人と両想いになった。とても寒い日の夜だった。お互い好きであるという気持ちを伝え合った後、街路を歩きながら私が「寒い寒い」と肩をすくませて言っていると、厚手のコートの袖から見えた彼の手が、私の手をそっと握った。彼の手は細くて冷たかった。「俺の手、冷たいよね」と苦笑いする彼の顔を、私はまじまじと見た。
冷たかったけど暖かかった、なんて言ったら笑われるだろう。だけど本当にそうだったのだ。心まで満たされる気持ちと、やっとこの人の手に触れられたという嬉しさと、手を握ってくれたときめきで、私は首をぶんぶんと左右に振り、その手を握り返した。手を繋いで、そこから2人してニコニコしながら歩いた。
だけど結局、私の恋はこの一日だけで終わってしまった。いや、むしろ始まってもいなかったのかもしれない。この時、私たちはまだ付き合っていなかったし、2人の今後を考えた時に私と彼の世界はあまりにもかけ離れていることに気がついたのだ。だから、付き合わないことになった。彼もショックを隠しきれない様子だった。
だが。
彼はその後、すぐに彼女をつくった。逆に、私はそこから1年くらい、彼への未練で夜な夜な夢の中に彼が出てくるようになった。なぜなんだ。話が違う。
いや、話が違う、というか。
例えば、付き合わないながらも仲良くするとか、想い合うとか、そういうことがあったってよかった。すぐに新しい彼女をつくらなくたっていいじゃない、と彼を少しだけ恨んだ。だけどそんなことを考える自分が恥ずかしく感じた。付き合わないことを選択したのに未練たらしくて、馬鹿らしかった。
もしかしたら彼は、私に本気ではなかったのかもしれない。次の彼女になる子を手当たり次第探していただけだったのかもしれない。正直、私は彼の考えがわからなかったし、彼も私の言動でわからないことが多々あったと思う。そして、これを読んでいるあなたはもっと意味がわからないだろう。全貌も書いていないし、自己満の内容だからだ。だが今回は、なんともいえないこの気持ちの成仏の為に書いているから許してほしい。
ただ、いまだに思い出すのはあの細くて冷たい手だ。不器用で奔放で、だけど繊細で性根が優しい。そんな彼を体現するようだった。きっとこれからも誰かと手を握る時、それを思い出してしまうんだろうなと思う。憎らしいような、懐かしいような気持ちで。
そうは言っても私も前に進んでゆく。
私は幸せになる。
だから、君もどこかで幸せに生きていってくれ。
心の中で彼の幸せを願い、この気持ちに終止符を打つこととする。
あぁ、寒い。すこぶる寒い。