失った全体
「………」
ある日声が消えた。
本当にポツンと消えた。
消えたというか出なくなった。どうしてだ。
急に声が出なくなったんだ。
こんなことあるのか。
どうして僕だけ…声が。
『何故か、声が出なくなったので今日は休みます。』と会社にメールをしておいた。
とりあえず病院に行くか。
僕は着替えて病院に行った。
メモとペンを持っていって、看護師さんは僕が声を出せないことがわかったのか。
「筆談でも構いませんよ。辛いと思いますが診察したら何とかなりますよ。きっと」と優しく声をかけてくれた。
…さん。診察室にお願いします。
看護士さんが僕のことを呼んだ。
診察を受けた。
「…さん。これね、君の声帯の能力取られちゃってるね。最近流行ってるでしょ?謎の現象。これそれだね。とりあえずね、能力をとった人のある程度の位置わかったから。
でもね、これ声帯を取り返すためにはその人を殺めないといけないんだよ。君できるかい?」
『できません』メモに書いてみせる。
「だよね。まあ、とりあえず。この国にいるから。自分で決めてね。じゃあ大変だと思うけどお大事に」
『ありがとうございます』
場所を見てみる某国だ。近いのは近い。隣国だしな。とりあえずいってみるか。
僕は早速飛行機を予約し、現地に飛び立った。
〔会社には1ヶ月ほど病気と戦うことになりました。すみません休職致します。〕とメールを送っているから大事だろう。
しかし、声が出なくなってから我国のやさしさと言うものに触れるようになったな。
声が出せない例の現象になってしまったと言うのがわかるのだろう。色々と手助けをしてくれている。
ありがたい。本当に。こんなことになってから痛くそう思うようになった。東京もまだまだあったかいんだな。
他県からは冷たいと言われることも多々あるがそうではないのかもしれない。
誰かがその人を助けてくれる。という他人に任せてしまう、気持ちが少しだけ多いだけかもしれない。でも、声が出なくなってから東京の人の温かさに改めて心揺るわされたな。
なんて、思ってたら眠りについてしまっていた。
気がつくとそこは某国だ。
僕は医師から渡された町に向かう。
向かう。英語を頼りに向かう。
その国でも温かいと思っていたが冷たい人も多かった。なんども心折れそうになってしまう。
何日かしてその町に着いた。
『最近話せるようになった人はいるか?』と英語で聞くとある人がそこの家にずっと話せなかった子が最近になってはなせるようになった。と教えてくれた。
僕は速攻でそこに向かった。ドアを叩いて出てきたのは女の子。
『僕は声が出ない。貴女のせいかもしてない』と英語で書いてみせた。そしたら
「すみません。あなたが私に声をくれた主ですか?
私はここ2週間とても楽しかったです。
病弱な私を2週間楽しませてくれた。
貴方には感謝してもしきれません。
それでは貴方に声を返しましょう。
さぁ、私を殴り殺してください。」
そんなことを彼女は言う。その子の目はしっかりと透き通っていた。僕なんかより声を使いこなせるだろう。もう、声なんかいいか。帰ろう。
『いいよ。声は君にあげる。大切にするんだよ?声も命も。じゃあ僕は帰るね。』と言って帰ろうとすると
「せめて、せめて、名前でも教えてください。
お願いします」
名前か、名前くらいならいいか
『僕の名前?名前はね。』その続きは書けなかった。あれ僕の名前って何だっけ?
「もしかして、、思い出せないの?」
『そうみたいだ。、ごめんね。』
「やったぁ!こ れ で 声 は 完 全 に 私 の も の だ ね 。 」
どういうことだ?声は完全に私のもの?
嗚呼、そういことか完全に諦めると声だけじゃなくて…魂全体もその人に…000
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