見出し画像

10年前の総合商社で見た働く女性のリアル―育休明けの先輩の決断とは

10年前の話です。

育休明けの女性社員が隣のチームに復帰したときのことを、
今でもよく覚えています。

彼女は海外駐在も経験し、
英語も堪能な才女と評される女性でした。

天海祐希さんのようなかっこよさと、
檀れいさんのような上品さを併せ持つ方。

私たちのような若手女性総合職にとっては、
まさに憧れの存在でした。

チームが違ったこともあり、
直接お話しする機会はありませんでしたが、
いつか子育てをしながらキャリアを築く現実について、
彼女の考えを聞いてみたいと思っていました。


けれど、その「いつか」は訪れませんでした。
彼女は復帰から半年も経たずに退職してしまったのです。

部内はざわつき、
「パン屋さんを作るらしいよ」
「旦那さんが忙しいみたいだから仕方ないよね」
といった噂で持ちきりでした。
当時の私はただ驚くばかりでした。

育休から復帰した彼女に与えられたのは、
確認作業が中心となる業務でした。
具体的には、
すでに何人もの事務員が内容をチェックし終えた書類
に目を通し、最終的にハンコを押す仕事です。

一見すると責任があるように見えますが、
機械的に次から次へと回ってくる書類を処理するだけ。

何も間違いがなければ、
ただ流れ作業のように終わっていく。

それまで海外で多くの人を巻き込みながら
意思決定をしていた彼女にとって、

「クリエイティブさが一切求められず、
単調で退屈な業務」
は耐えがたいものだったのではないでしょうか。

もし「パン屋さんになりたい」という夢が本当なら、
それを追いかけたくなるのも無理はありません。
商社のダイナミックなプロジェクトを経験し、
世界を舞台に働いてきた彼女にとって、
日々同じ書類にハンコを押すだけの仕事は、
自分のキャリアを否定されているように
感じたのかもしれません。

そのとき、ある男性の先輩がこう言いました。
「育休なんて迷惑だよな。」
(まだ4、5年目の若手男性社員です)

今そんなことを言ったら、きっと大問題。
でも、あの頃はそんな言葉がまかり通っていた。

ふと思い返す、凛とした姿でオフィスを歩く彼女。
雑草の中に咲く一輪の百合のように
毅然とした存在感がありました。

しかし、その姿を見て私はこうも思いました。
「商社で子育てをしながら働くことは、
相当な覚悟と支援がなければ難しい」と。

「そんなの当たり前」「リサーチ不足」と言われれば
そうかも知れませんが。

彼女の退職は、そんな現実を若手社員の私
にインプットさせるには強烈すぎる出来事でした。

あれから時代は変わり、
働き方改革や女性のキャリア支援が
進んでいるように思えます。

でも、本当に働きやすくなったのでしょうか?
キャリアと育児を両立したいと願う人たちにとって、
現実はどう変わったのでしょうか。

正直、私自身もまだ「これが正解」
と言えるキャリアを見つけられていません。

あの先輩の姿を思い出しながら、
日々模索を続けています。

同じように悩みながら進む誰かと、
この思いを共有できたら嬉しいです。

#ママのキャリア #総合商社 #育休

いいなと思ったら応援しよう!