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好き漫画を語る〜『山を渡る-三多摩大岳部録-』4巻~6巻

嬉しい楽しい夏合宿、の前に「高山」の経験が必須!という黒木主将のひと言で、三多摩大学山岳部6名、やってきました山梨県は鳳凰三山。新人たちは高山病やステーションビバークなどの衝撃を体験しながら、悔しさと誇らしさ、敗北感と達成感――味わった事のない感情にも襲われる……!

山の魅力を360度全方位から描く大学山岳部コミック、第4巻。新人が大きな成長を見せる「鳳凰三山編」を完全収録するほか、先輩3名と初登場・安達監督が往く「沢登り編」がスタート!

『山を渡る-三多摩大岳部録-』4巻amazon紹介文より

夏合宿を南アルプスでやりたい主将・黒木の策により鳳凰三山に向かった三多摩大山岳部。
朝一のバスに乗るため甲府駅に泊まる一同……と、ここでストーリーには直接関係ないけど、女子部員の入浴シーンがあるんですね。
裸や下着姿が出てくるけど、そこにエロさがないのがすごくいいなと思いまして。
これは私が女性だから感じることなのかもしれませんが、漫画やアニメに挟み込まれるエロさって、時にノイズに感じることがあるんですよね。
エロを求めて見るものもあるしそこを否定する気は全くないのですが、求めてないところにやたら強調されて出てくると邪魔だなーと思ってしまうこともある。
『山を渡る~』ではこの銭湯のシーンや、体のラインが出るような服を着ているシーンが出てくるけど、総じて健康的でこの漫画を読むうえで邪魔にならない。
これを物足りないと思うかどうかは人それぞれではありますが。

森林限界を越えた先で高山病にかかった加賀っち。
盛り上がる部員たちをよそにテントの中で休みながら、「一人取り残された記憶」を思い出す加賀っちのモノローグがすごく好き。
分かる~~分かるな~~~!

『山を渡る-三多摩大岳部録-』4巻 67ページ

なぜかこの後加賀っちは顔芸が多いw
厚切りタマゴサンドを死んだ目でほおばる加賀っちも好き。
山岳部の合宿、10日間風呂なしが女子には一番きついな……リアルな話、生理の時どうするんだろう。

『山を渡る-三多摩大岳部録-』4巻 143ページ

5巻は監督+上級生三人の沢登りと、夏合宿準備。
ひときわ身体の小さい南部ちゃんが、持てる荷物の限界に悩むところはまさに監督のいう「性別や体格によるレギュレーションのない登山の世界で悩み葛藤している」立場にあることが分かる。
ここで上級生の金田が言う「皆は同じじゃない、同じである必要もない、同じにすることが間違ってる」は、とても救いになる言葉だと思う。

『山を渡る-三多摩大岳部録-』5巻 156ページ

どうでもいいけどここで判明する黒木さんの体重が56㎏っていうのがまた現実的でいい……。

6巻はいざ北アルプスへ!
ここで初めて他大の山岳部が登場します。
共立大山岳部の小笠原くん、登場時こそ三多摩大をライバル視して突っかかってくるけど、その実すごくいいやつ!
テント場の空きを教えてくれたり、南部ちゃんには敬語でお礼を言ったり。なんだ君いいやつじゃん!

『山を渡る-三多摩大岳部録-』6巻 48ページ

槍ヶ岳を前にして、疲労で動けなくなった一年生たちは自分たちから「今は登れません」と決断する。
その決断を自分たちで下したことこそが一年生たちの成長を感じるエピソードになっていて、黒木の「自分たちで決めてくれた」の顔もいつもの強引さが引っ込んでよき先輩の顔になっている。
5巻で安達監督が言っていた「新人が成長するだけが夏合宿じゃない。牽引するお前らも後輩に成長させてもらえるチャンスということを忘れるな」がここにつながっているんだと思う。

槍ヶ岳登頂を諦めた日、山荘の前で会ったおじいさんに「山岳部の学生さん?」と聞かれてしゅんとなりながら「そうです」と答えた一年生三人が、翌日登頂を果たした後胸を張って「三多摩大山岳部です」と答える姿は、金田じゃないけど「よく頑張ったね」ってうれしくなる。

この山荘で出会ったおじいさんが語る『見る前に跳べ』(『Leap before you look』W.H.オーデン)の詩がすごくいい!
その詩とともに槍ヶ岳に登るシーンは本当に映像を見ているみたいでした。

6巻は北アルプスの壮大な景色がいっぱいなので、電子で読むときはタブレットか大きいモニターででっかく見開きで読むのがいい。
登山のわくわくがたくさん詰まった夏合宿は、この先さらに奥地の黒部源流域に。
続きも楽しみです!


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