保育園に就職するときの間違い 6選
保育士を志望される皆さん、全国で保育園がどれくらいあるか、また利用者数などをご存知でしょうか。
施設数と利用定員は増加していますが、実際に利用している児童数は減少しています。地域差があるとしても、定員充足率の89.1%がそれを証明しています。
まずは、このデータを頭に入れたうえで就職活動をするとよいでしょう。
園で勤務した経験のない人たちは何を基準に就職園を選んだらよいかと困惑することが多くあると思います。経験がないのだから当然のことです。
上記のように全国に約40,000か所もある保育施設から自分にぴったりの1か所を選び出すのは至難の業です。残念ながら就職して数か月で「(この園)やっぱり合わないから辞める」という声もよく聞きます。今はまだそれが通りますが、あと数年経つとそうも言ってられなくなる可能性があります。
というのも出生数が減少するなか、子どもの絶対数が少なくなれば、保育のニーズも減少します。そのバランスがあと3年くらいで保育のニーズと保育園の数が同数になり、5年で逆転すると考えられています。
では、どうしたらよいのでしょうか。
ここで、約20年間、専門学校や大学・短大で学生を送り出してきた経験と、現在、社会福祉法人の認可保育所で理事長を務めながら感じていることを意外と陥りやすい6つの「間違いの視点」からまとめてみようと思います。
<間違いその1> 「うちの園良いよ、就職しない?」という先輩の声
卒業生の先輩から「うちの園良いよ、就職しない?」と誘ってもらった。一見よさそうに見えますが、就活者と先輩との感性は同じでしょうか。いくら先輩が「良いよ」と言っても、自分に合うかはわかりません。
仮に信頼できる先輩であれば、半分は信じてみて、何よりも実際に自分の目で見ることです。実習やボランティアの機会を利用して体感してみることが重要です。
<間違いその2> 自分の性格や傾向を知らずして手当たり次第に受験
自己分析というと少々大げさかも知れませんが、就職園(先)を決める際の指針となります。一般企業の就活や転職でもまず自己分析から始めることが多いです。
例えば、気持ちが外向きの人と内向きの人では選ぶ園も違ってきます。
まずは、自分自身を知ることです。一般就職用の自己分析ツールが充実していますので活用して、自分の方向性を見つけましょう。
<間違いその3> 学校の就職課で相談する
学校などの就職課には多くの求人情報が集まってきます。ただ、多くの求人票などについて誰がどこまで読み込めているでしょうか。
東京都の認可保育園数は約3,500か所、そのすべてを就職課の担当者が精通しているでしょうか。それは不可能に近いと思います。中には、求人票だけ整理してファイルして開示しているだけ、という養成校もあると聞きます。
対策としては、求人票や園の案内書などを手掛かりしながらも、資料を鵜呑みにせずに自分で足を運んで確認することです。
<間違いその4> 実習して感触が良かったからその園に就職する
実習生として園児と関わることと、職員として園児に関わるとは違います。学生も実習園でよくしてもらった(叱られず、ある程度許してもらったなど)からそのまま就職。現状、まだまだ保育士不足に頭を悩ませる保育園が多い中、実習生は格好のターゲットです。
実習園から職員にならないか?と誘いがあったら、「職員として見てもらう実習」をお願いすることです。職員としてその園の文化や習慣や考え方についていけるかどうかを見てもらいましょう。
また、自身もその園でやっていけるかを見る良い機会になります。
<間違いその5> 人材派遣業者の言いなり就職
人材派遣会社に登録すると頻繁に電話がかかってきて、いろいろな保育園を紹介してくれます。紹介してくれる園はマージンの高い園からとなることが多いようです。平均採用単価は60万円~140万円ほど、というデータもあります。
人材派遣業者に任せればいろいろ探してくれて効率的な面もありますが、ここでもやはり自分の目で確かめることは必須となります。
<間違いその6> パンフレットは参考程度に
とてもおしゃれでファッション雑誌と見間違うような保育園のパンフレットも増えています。パンフレットは誰のためにあるのでしょうか。保育士募集のため?
私も保育園の理事長をしていますが、わが園にはパンフレットはありません。A4を三つ折りにした簡易なものはありますが、まったくお金をかけていません。そこにお金をかけるなら園児や保育士に本当に必要なもののために使うというのが園の考え方です。
どんなに素敵なものでもパンフレットはパンフレットです。日々の業務が素敵なパンフレットに綴られていたとおり、とはなかなかいきません。あくまで参考資料として活用しましょう。
ではどうする?
自分の足で歩いて、駅からどのくらいかかるのか? 自分の目で見て、園児の顔や保育士の顔はどんな様子か? 降園時に保護者はどんな顔をしてお迎えにくるのか? そこを見てみましょう。
そして、自分がそこに保育士として働いていることがイメージできるか? を重視しましょう。単純なことなのです。
また、一度就職したら3年は頑張ってほしいと思います。3年やればキャリアになります。1年目はきっと園行事などについていくのが精いっぱい。2年目は、5月になれば、6月の行事のこともちょっと準備ができるようになります。
3年やれば、2か月先の園行事の準備場できるようになります。1年未満など短期間で辞めてきた人を積極的に採用する園は少ないでしょう。
なぜならば、採用してもまた1年で辞めてしまう可能性があるからです。そのようなリスクの高い人を採用するのは躊躇します。「石の上にも三年」とは良く言ったものです。
過去の卒業生に、就職して一か月も経たずに辞めてきた者がいます。よく話を聞くと本人の考えている園とはまったく違う方向性をもつ園でした。最初に内定をもらったからそこにしたというなんとも安直な選び方でした。これは進路指導の失敗でもあり、本人の自己分析ができていなかった結果なのです。このようにすべて自分自身に跳ね返ってきてしまいます。
自分の目や感性を重視して、ときに周りの助言、ツールなども上手に使いながら皆様にとってよい園に出会えることを願っています。
また、特別な試験対策が必要になりますが公立保育園への就職もおすすめです。
保育の実務経験がない方にはオンライン講座で保育の実務について詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
橋本圭介
社会デザイン学修士、社会福祉法人友愛会川口アイ保育園理事長、学校法人三幸学園 大宮こども専門学校専任講師、埼玉県の社会的養護を考える会 代表