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笑う君へ 第十一話 「再現」

翌週

衝撃のニュースが流れる

『乃木坂46 賀喜遥香、消えた日本のダイヤと手繋ぎデート』

朝10時、大手週刊誌がネット記事で第一報を流す

写真集の発売まで1ヶ月を切り

5期生を中心としたごたごたも冷めやらぬ中での報道は一気に拡散された

無論、〇〇のところに連絡がないはずもなく、関係者一同集められる

ただし、賀喜と遠藤、田村は別部屋で待機

大人達の会議の末、半日後に〇〇一人での記者会見が開かれることに決まった

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そして、大勢が詰めかける会見に一人乗り込む〇〇

容赦のないフラッシュが着席から一言目まで降り注ぐ

そんなものは諸共せずマイク片手に口を開いた

「お久しぶりです、大野〇〇です

本日は今日午前に報道された件について会見をいたします。

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会見の様子はさくとまゆたんとマネージャーさんと一緒に見ていた

彼の会見は昔と変わらずシンプルで論理的であった

当日は二人ではなくマネージャーや他メンバーもいたこと

私たちが乃木坂の運営側への確認も行っていたこと

一瞬脳裏をよぎる、なぜ、彼はこんなにも内部情報を知っているのか

次の一言に衝撃が走る


◯:私は今年1月から運営側に正社員として採用されています

  皆さんが思う甘い関係ではなく、義務と責任が生じる立場です



そこから会見は一気に収束へと向かった

それは過去に彼へのマスコミ側からの贖罪か

それとも新しくネタにできることを見つけたことによる満足か

いずれにせよ結果は最善へと向かう予感を見せた


マ:これで、一安心ね

  こちらに非がないことは主張できたから、三人も特別対応はいらないわ

賀:はい…

遠:かっきー、大丈夫だよ

賀:うん…

田:でも、〇〇くん、社員だって教えてくれても…

マ:ごめんね、私も知ってたんだけど、口止めされてて…

田:違うんです、マネージャーさんを責めているわけじゃなくて…

遠:そんなこと言っても仕方ないよ..

賀:そうだよね….

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次の日から、世間は彼の話題で持ちきり

『日本のダイヤ、乃木坂のイメージアップで採用か』

『大野〇〇、乃木坂と大学生活』

わたしたちへの謝罪の文面のちらほら散見された

無実の主張のために何事もないかのように大学へ向かう

授業が始まる直前、彼は教室へ入る


◯:おはよ

遠:おはよう

  昨日はありがとね

◯:いや、特に大したことはないよ

田:私たちも裏で見てたんだよ

  けど、社員なのは伝えて欲しかったな…

◯:ごめんね

田:これからは隠し事なしだよ?

◯:それは約束できないけど、家は招待するよ

教:は~い、授業始めるぞ~


~~~~~


田「家はいついけるの?」

◯「別に今日でもいいよ

  都合いい日で」

田「流石に今は良くないか」

◯「逆に堂々行ってもいいけどね

  そんな長居することもないだろうし」

田「それもそっか

  授業終わりで聞いてみようか」


~~~~~


授業が終わり、珍しく〇〇の周りに人だかり

男1:大野、日本代表のやつだったのか

女1:今は何の仕事してるの~?

  芸能科にいるなら何かしらしてるんでしょ?

◯:どうせバレるから1週間待って、ネット見てくれ笑

男2:三人とはほんとに何もないのか~?笑

◯:ねーよ

  あったら社員にもファンにも殺されるぞ

男3:まあ、昔辛かっただろうからそんなことはしないんだろうな

女2:連絡先交換しようよ

  そのぐらいなら何も問題ないでしょ?

◯:ああ、全然いいよ

女3:私も~


質問攻めに合うが基本的に好意的なものばかり

むしろ、私も持っていない連絡先を渡してるなんて


田:あれ、さくちゃん、どうかした?

遠:え?!

田:すごい顔で大野くんの方睨んでるから

遠:あぁ、いや、何もないけど…

田:けど?笑

遠:ううん、なんでもない

田:ふ~ん

  あ、そうだ、家行くのいつでもいいって話なんだけどこの後行く?

遠:時期的にいいのかな?

田:悪いことしてないなら問題ないでしょ、って言ってたよ

遠:それもそっか

  かっきーもいく?

賀:え、あ、う、うん

  二人が行くなら行こうかな

田:そう?

  じゃあ、マネージャーさんに連絡しておこうか

賀:よ、よろしくね

  ちょっと、私先戻るね

タタッ

田:かっきー、どうしたんだろ?

  昨日の件なんかひきづってるよね?

遠:うん….〇〇くんに申し訳なさとかあるのかな

田:それはありそうだね、責任感強いし

  ちょっと、〇〇くんにも言っておかないと

遠:そうだね


同級生の質問攻めがひと段落し、二人の元へ戻る〇〇


田:今から行くよ~

◯:本当?

  いいけど、賀喜さんは?

遠:先に車戻ったよ

  それと、かっきー、昨日の件、気にしているみたいだから気遣ってあげて

◯:そうね、もちろん

遠:それから!

◯:??

遠:…やっぱ今はいいや

◯:お、おう


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はぁ

また、私は彼に負担をかけてしまったのだろうか

あの時と同じでただ彼が一人前に立つのを見ているだけ

今度は私が助ける番だと決めていたのに

そして彼はまた無理をしている

これまであまり化粧をしているのを見なかったからわかるが

クマがあるのを見逃さなかった

多分、昨日は、いや、今日の朝まで書類や対応に追われていたのだろう

彼が社員であることを隠していたのも気分を下げた

思い返せば、スケジュールをあたかも知っていそうなことも

私たち3人に冤罪とはいえ女性関係の問題があった人をつけることも

なんらかの背景があったと考えれば辻褄は合うが何故教えてくれなかったのか

飛鳥さんと親しげに話す彼と私たちの前とでは見せる態度が違う

私は彼にとって何者でもないのだろうか

何者でもなくて、さらに、何もしてあげられないのか

無力感が一人座席で襲ってくる



マ:大丈夫?

  って言っても、気にすることは多いだろうから、仕方ないけど

賀:はい、ちょっと疲れちゃって

マ:写真集のこともあるし、抑えられるところは抑えようか

賀:いえ、そこまでは大丈夫です!

マ:ほんと?

  ならいいけど、ちゃんと言うのよ

賀:はい


程なくして三人が到着する



◯:賀喜さん、お待たせ

田:おまたせ~

賀:全然大丈夫だよ~

◯:じゃあ、自分ちに行くんでいいですかね?

マ:おっけー、じゃあ運転任せてもいい?

◯:まあ、その方がいいですね

遠:運転できるんですね

◯:まあ、高校から時間あったしね

遠:あ、でも連絡先交換できないじゃん!

田:家ついてからでいいんじゃない?笑

遠:そっか

賀:ふふっ、おっちょこちょいだね~

マ:安全運転で頼むよ?

◯:もちろんですよ、助手席は頼みますよ

田:私が座りたかったのに~

◯:安全的によ

田:は~い

◯:もう出ますんで、シートベルト閉めてください

一同:は~い

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