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コトヴィア〜いつかあのウィナーズサークルで〜4

仁川駅の改札口(ここの改札だけなぜか競馬のゲートに見える)を出て競馬場へと向かう地下道を歩く。最初のエスカレーターを下りると裃を着た馬の置き物が競馬ファンを出迎える。このキャラクターの名前は分からないが、ここを通る時絶対にこの馬の頭を撫でる人がいる(だいたいおっちゃん)。そしてのこの日も競馬新聞に赤ペンを引っ掛けて歩いてるおっちゃんが裃を着た馬の頭を撫でている。

「今日も頼むでー!」

馬券が当たるようにお願いしてるようだ。一種の願掛けなのだろう。撫でてる人をよく見かけるという事は本当にご利益があるのだろうかと思ってしまう。

 通路の両サイドに掲示している過去の名馬達のポスターを眺めながら歩いていくとあっと言う間に阪神競馬場の入場門だ。予めスマホで購入しておいた入場券のQRコードを女性スタッフに見せて入場。前回2月に行った時は雨だったが今日は快晴。長袖のシャツだと暑い。ネクタイも着けてるから余計に暑い。もうすぐ1Rが発走する時刻だ。

「大きい滑り台行きたい!」

娘はワクワクしてるようだ。

「コトヴィアのレースは何時から?」

「次のレースやから10時25分発走」

「分かった!それまでキッズガーデンに2人でいるわ。レースの時間になったらゴール前に行ったらいい?」

「そうやな。もうすぐパドックやからそれ見てから俺もゴール前に行くわ!じゃああとで」

 妻と娘とは一旦別行動で私はパドックへ向かい出資馬コトヴィアが出てくるのを待つ。午前中なので観客はまだ少なく、すんなりと最前列まで行けた。

真平に連絡をしなくてはと思いスマホを出す

「着いたで!今パドックにおる」

間もなく真平から4階指定席から見える風景を撮った写真が送られてくる。ゴール前の良い席が取れたようだ。

「俺は1時間前に着いたで!もうビール2杯目や!」

確かに送られてきた写真の片隅にビールの入った紙コップが見える。朝からビールを飲みながら競馬を楽しむ。これも最高の休日の過ごし方じゃないか。

「次のレースやな!もうすぐしたら俺も下に行くわ!ゴール前な!」

 真平とも連絡が取れたところでパドックに目をやる。このレースは16頭立て。1番の馬から順番に登場してくる。コトヴィアは15番なので最後の方に登場。スマホで愛馬の写真を撮る。しかし逆光で上手く撮れてるか分からない。とりあえず何枚か適当に写真を撮る。いい加減な性格はこういう時に現れる。

 コトヴィアの姿を追う。馬体重は448kg。前走から+2kg。気温は30℃近くに達しそうだが極端な発汗はない。首を上下にリズムよく動かしキビキビと歩いている。状態は良さそうだ。もちろん自分の出資馬だからそう思うのかも知れない。でも単勝オッズを見ると現在1番人気。馬券を買ってる人達はコトヴィアが一番勝つ可能性が高いと思っている。コトヴィアが私の目の前を歩く。心の中で呟く。

(頼むぞコトヴィア。今日こそウィナーズサークルへ連れて行ってくれよ)

上下に動く首が私の問いかけに深く頷いてくれてるように見えた。

 パドックでの周回が終わるといよいよ本馬場への入場。真平と妻と娘の待ち合わせ場所のゴール前付近でコトヴィアが入場し、キャンター(駈歩)でスタートへと走っていった。

(もうすぐレースだ)

高鳴る鼓動を抑えてスマホを取り出しちょっと一息。SNSを見ると真平がストーリーをアップしていた。自分が座っている4階の席からウィナーズサークルを撮った写真。その写真にはコメントが

(このウィナーズサークルで友人が口取りしてる姿を見たいから応援するぞ!)


続く

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