ロディニア〜個性派の弟〜6
ロディニアはその後11月末にようやく美浦トレセンに入厩。デビューに向けてまずはゲート試験に合格。年明け1月の中山競馬場で、兄パンサラッサの主戦ジョッキーだった吉田豊騎手騎乗でデビュー予定と発表された。しかしレース前の追い切りではまだ満足のいく動きが出来ておらず調教タイムも詰めれなかったため、再び育成牧場へ移動。デビューが一旦白紙になる。
育成牧場でしっかり調整をした後2月末に美浦トレセンに帰厩。再びデビューへ向けての調教が始まった。
2024年3月
「行ってきまーす」
日曜日、いつもと同じ時間に家を出る。しかし今日は仕事ではない。地元の消防団の巡回の当番の日なので、仕事は有給をとり消防団活動に参加する。巡回は消防車に乗ってその地域のパトロールを1時間ほどする。大体は何事も起こらずただドライブをしてるだけの感じだが。
消防団の詰所に到着10人くらいの団員が集まっていた。日曜日なのでいつもよりは多い。みんな近所の人なので顔馴染みの人がほとんどだ。
「おはようさん!日曜日やのに珍しいな!仕事休みとれたんか?」
団長の中竹さんだ。
「おはようございます!今日は有給取ってこっちに来ました。仕事より巡回してる方が気が楽なんで」
「ハハハ!正直やな!まあ消防に参加してくれるのはありがたい!」
「そうや!それより昨日のチューリップ賞観たか?スウィープフィート強かったな!」
消防団には競馬好きの人が何人かおり「競馬愛好会」というLINEグループを作っている。中竹さんはそのメンバーの一人だ。
「あの馬スイープトウショウの孫やろ?せやからデビューから注目してたんよ!あの追い込みはスイープトウショウやな!馬券買っとけば良かったなー。」
中竹さんはスイープトウショウが活躍してた頃から競馬を始めたようで、思い入れのある1頭らしい。
「そういえばお前ここのクラブ、YGGやったっけ?会員やったよな?」
「そうなんです!中竹さんと同じでスウィープフィートは祖母にスイープトウショウがいるという所にめっちゃ魅力を感じてました。でも母の父ディープスカイってのがちょっと主流から外れてるかなあと思って出資は見送ったんですよ。それが今や桜花賞有力候補です。」
「もったいな!なかなか走る馬を見極めるのは難しいな」
こうやって競馬の話が出来る人もし消防団活動も悪くない。
「おー、また2人で競馬談義かいな。熱心やなぁ」
「あっ、森中さんおはようございます!はい、熱心に取り組んでます!消防団活動!」
「どこがやねん(笑)競馬の話しかしてへんやん。昨日のチューリップ賞素直に武豊を買っておけば良かったわー。最近当たらないわ!」
森中さんは競馬愛好会を取り仕切るリーダーだ。数年前に後輩である中竹さんに競馬を教えてもらって以来競馬の魅力に取り憑かれた1人だ。
「そういえば君、パンサラッサの弟に出資してるって言うてたけどデビューまだか?新馬戦終わってしもたやん。」
「そやそや!ロディニアやったっけ?」
中竹さんも森中さんも一口馬主にはちょっと興味があるようだ。
「2日前にトレセンに入ったんですよ!順調に行けば2週間後くらいにデビューやと思います!」
「ようやくか!楽しみやな!デビューする時はまた愛好会のLINEで報告してよ!」
「もちろんです!」
覚えていてくれた事がなんだか嬉しい。やはりG1馬の弟というのはインパクトがあるということか。
この日はその後消防車の中にある備品や放水の時に使う器具などがちゃんとあるかの確認(器具点検という)を行い、地域のパトロール(巡回)をして午前中に終了した。
(よし!弥生賞リアルタイムで観れる!)
仕事は休みやし今日は良い日だ。そう思える日常の1コマだった。
その2日後···
続く