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ものすごく怒られそうな雑誌の表紙デザインの話

こんにちは。Web制作会社であれやこれやしているタカハシモンチャックです。
この度オンラインコミュニティ「マエデ」で、グラヘックというかっこよさをグラフィカルに追求した雑誌の表紙を制作しました。正確に言えばコンペで生き残り、2種類の表紙のうち1つとして出版されました。

「Grapheck(グラヘック)」という雑誌

青いほうをつくりました
どういう…こと?

表現する楽しさを追い求めたくてデザイナーになったはずなのに、仕事で作るのは型にハマったデザインばかり。これを読んでいるあなたも、もしかしてそんな“量産型デザイナー”の一人になってしまっていませんか?「純粋なデザインの楽しさを取り戻しそう」。私たちはそんな想いで活動し、一冊の雑誌を作りました。

クラウドファンディング紹介より

大人の事情を取っ払い、非商用のかっこいいデザインだけを追求した雑誌を作ろうということで、コミュニティの中でプロジェクトが立ち上がりました。このnoteはわたしが、熱量の高いコミュニティの中でカロリー低めに作っているデザインの話です。ちゃんとした人間を装っているのでできれば書きたくなかったのですが、クラウドファンディングの進捗が芳しくないということで、0.1%の販促にでもなればいいなと思って筆を取りました。

怒られそうなデザインプロセス

表紙コンペがあるという話は聞いていましたが、提出は必須ではないので一生懸命ダラダラと過ごしていました。「時間があって気が向いたら作るか」くらいの気持ちだったのですが、何かのついでに時間ができて気が向いたので、なんとなく作ることにしました。

「かっこいいって言われてもナァ」

「めちゃくちゃかっこいいデザイン雑誌!なのによく読んでみるとオナラがテーマになっている」ということをまじめにミーティングで話していたので、小学生男子の会話みたいだな…と思っていました。かっこいいのなんたるやも定義しないままパソコンを前にして、考えることなく先に手を動かし始めます。この時点で完成形は何も思い描いていません。

まずは安易に走ってみる

とりあえずスカンクでも置いてみるか…
かわいいね…切り取りむず

おならのスタンダード

スカンクは安易すぎてダメだった…
おしゃれな女性とかどう?モノクロのアンニュイなやつ。

モデルとカメラマンが良いとそれっぽくなる

うーーーん、女性がおしゃれなだけでデザイン性ないけどまあ、仮置きでね。次は煙でも置いてみるか

とりあえず購入したケムリ素材

なんかオシャレっぽい…いいぞ…

じゃあ、これを組み合わせて…

尻に煙でね

あーーーー安易な感じになってしまった…
写真も切れてるしデザインの未来が見えない…やめよう

そういや、この間購入した素材セットの使いどころがないから使おう。とりあえずPCの読み込みが遅いので上の方にある素材で、印象の影響を受けにくい白黒にしよう。厳密に言うと煙じゃないけどいいかバレないでしょう。

なんかのグリッター素材

黒いな…なんとなく焼き込みカラーにして…
さっきの煙を重ねて……なんでかわからんけど一部青くなった

青い…

とりあえず手を動かそう…
前職では縁がなかったけど使いたかったフィルター>描画>雲追加…

あ、青い…

ウソだろ…めちゃくちゃ青い…
次……ベベルとエンボス……

なじまないシワの完成

あーーーーーー余計なことした非表示にしよ
次、グラデーションオーバーレイつかお

可能性み

お…?
可能性を感じる……奥行きが出てるしガラス風でなんだか雰囲気があっていい感じ。とりあえず求められている「おならっぽくない・飾りたくなる・異国感」は満たしている気がするのでいいでしょう。デザインは本来いろんな差分を作成して検証しますが、とにかくローカロリーでいきたいのでそのまま出すことにしました。

次はタイトル

マエボン4って言わないらしいから、AKB風にしてなんとなく横にしよう

ここまでタイトル作業時間1分

完成!

 できた〜〜〜〜〜

提出しよう〜〜みんなきちんとかっこいいのつくっててえらい。

カロリー低めのデザイン実現論

「使いたい効果や技を積極的に使う」
「デザインイメージを持たず材料からインスピレーションを組み合わせる」
「できた偶然のデザインを必然のように装う」

いかがでしたでしょうか。これがわたしのローカロリーデザイン論です。まじめにコンペに出された方に怒られると思ってnoteが書けませんでした。この後2024年7月に開催されたオフラインイベントにて4作品に選出されるも仕事が忙しいため表紙を辞退しようとするなど、紆余曲折ありながらヒイヒイしていたらいつのまにか雑誌が出来上がっていました。

カロリーが低くても表紙になるとうれしい

わたしの何倍の時間と案を作った方もいると思うので、選んでいただいて申し訳ないなぁと思いながら先行販売会に行きました。2種類の表紙が並んでいて、思ったより大きくてざらざらとした触感です。
その時は子どもが一緒に来ていたので滞在時間は3分ほどでしたが、帰りに「これわたしが作った表紙です」と伝えると、子どもは「へぇ。なんか怖いね」と言いながら雑誌を手に取って読みました。青いからね。わたしも英語圏ホラー映画のパッケージみたいだなと考えていたので、気が合うなと思いました。
ページをめくってこの色がいいあの形がいいと話をする姿は、Grapheckが考えるかっこいいの根本の形にも思えます。ただなんとなく、テーマはおならなんですと言いそびれてしまいました。

時間をかけないデザインは時間をかけたデザインに劣るのか

炎上しそうな見出しとなりますが、条件に合致していれば選ばれることがある、ということが結論です。
わたしが表紙デザインを行う際、じっくり設計してかっちりしたデザインを提案したとします。それがコンペで採用されたかどうかは正直微妙なところだと思っています。今回採用されたのはオフラインイベントがあり投票制になっていて、たまたま得票数が多かったこと、応募時点で「Grapheckという雑誌はこういうもの」というデザイン面での共通認識がなかったことが理由です。そのため、抽象的なアート嗜好のデザインでも雰囲気を匂わせることで「なんかいい」と思わせられたということです。
色々な条件が重なることで、選ばれるものも変わってくると思いました。

デザインの狭窄の話

あまりにもデザイン設計にフォーカスした作業を行っていると、思考や視野の狭窄が起こっているなと感じることがあります。自分がやりたい方向性にジョインしてとりあえず手を動かすというのは、デザイナーとしての殻を破ることへ最終的に繋がるのかなと今回の制作を通して思いました。


参考に売れ行きの話

わたしの表紙、B!

裏表紙もオシャン!
し、品切れ!!!
ま、まだある!!!

裏表紙の人……ごめん…ごめん…ね!!

以上です。

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