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【沼宮内伝説】人身御供/レプタリアン 《続》

大蛇は【村を守りたければ、娘を差し出せ】と言った。供の者が、若い娘お連れした、と叫ぶと俄に風と大波が起こり青空が黒雲に変わり恐れ慄いた供の者は、一目散に逃げ帰ってしまった。と、その時、天にも轟く大音響と稲妻とともに大蛇が現れた。しかし寄寿姫は、少しも狼狽える事なく観音経を投げ付けた。経文を受けた大蛇の角は欠け、体は5つに分かれて空へと舞い上がった。藤原大夫正次の妻は寄寿姫の美しい心と観音経の功徳により前の姿に戻り寄寿姫に手を合わせ天に昇った。その後、寄寿姫は北の御堂観音に入り観音に仕えて村を守り続けた。それからというもの、この地は【沼宮内】と改められ平和な村になった。沼宮内を取り囲む里山には、大蛇の頭や胴体が分散して祀られた。旧暦の3月16日は【山見】という行事があり、里山に登って町を眺めながら、ご馳走をいただき、伝説を語りながら、寄寿姫に救われた村の昔を偲ぶのだった。

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