この点について数十年に渡ってアメリカのアジア戦略を取材していた私の見る所、アメリカ指導者をはじめ多くの人々は中国やアジアに対する政策を変えるべきだと考え始めている。トランプ大統領の下、アメリカの事を中心に考えようというナショナリスティックで孤立主義的な考え方が強くなるとともにアメリカの政治や生活の中に色濃く表れはじめている。アメリカ指導者達がパーティや研究会の席上で【日本はいつまでアメリカの核の傘に頼るつもりなのか】と冗談めかして言うようになっている。遠く離れたアジアにいつまでも関わっている訳には行かないと考えているからである。同時に優れた経済力ある日本は自分で自分の国を守る手立てを考えるべきだという姿勢が強くなっている事を示す。このアメリカの人々の変化に我々は留意しなければならない。日米安保体制に既に亀裂が入り始めている。世界中の人々の殆どが今後もアメリカ時代が続くものと確信している。しかしながら国内は明らかに政治体制が瓦解し社会の分裂が始まっている。貧富の差が拡大している。端的に言えば経済的に成功した日本をアメリカが自らの力で守り自らの国際的な立場を維持する政策が変わったのである。日米安保体制により支えられていた経済的に成功した日本を日米安保の仕組みの中で守り自らの国益に合わせてきたアメリカが、これまでのやり方を一変しようとしているのである。今や世界は1930年代ではなく16世紀に戻っていると指摘したのは日本を取り巻く世界情勢が、これまでの常識的な政治感覚では動かなくなっているからである。歴史的に見て日米安保体制の時代が終わった事は歴然だ。日本は新しい国際情勢に適応して存続するための体制と思想を持たなくてはならなくなっている。