脳内製作ハセガワ製「P-51Dムスタング」 (5621文字)
はじめに
今まで何度かプラモデルの脳内製作記を書いてきました。やっているうちに、「平面に描かれた図を見ながら立体の模型を想像して注意点などを書いていく作業は思いのほか楽しい。」となってしまいました。
で、今回はハセガワ製の1/72スケール「P-51Dムスタング」という第二次対戦中のアメリカ陸軍の戦闘機を脳内で作って行きます。
この戦闘機は、当時の飛行機の中では極めて近未来的なスタイルで、実機設計者のセンスを感じさせます。
また、現在でも全米にオーナーが多数いる人気プロペラ機です。映画俳優のトム・クルーズ氏も所有していると聞きました。
私がこの飛行機をはじめて作ったのは、小学生低学年の頃だったと思いますが(そのとき作ったのは恐らく親に買ってもらった1/32スケールの大きなプラモデルだったと思います。)、左右の主翼内に各3門づつ計6門の機銃が装備されているのを見て、その火力に驚いた記憶があります。
でもその後、アメリカの機銃は弾詰まりが多いので、弾詰まりしても他の機銃でそれを補えるように多数の機銃を装備していたと聞き、なんとなくがっかりしました。
それはそうと、飛行機プラモデルを作り出す前に決めておくべきことがあります。それは、飛行状態で作るのか、駐機状態(着陸しており、すぐには動けない状態)で作るのか決めることです。
飛行状態にする場合は、パイロットが搭乗していなければならないのと、完成後のプラモデルを糸等で吊すなどして飛行している状態の再現をすることになります。
駐機状態の場合は、パイロットが搭乗していてもしていなくてもいいのですが、パイロットがいない場合が多いでしょう。キャノピー(canopy 天蓋(「てんがい」)表現が難しいのですが、天井に相当する部分です。)は開いている状態にする方が自然です。
また、駐機してパイロットが搭乗していないとき、主翼のエルロンや水平尾翼のエレベーターが下に垂れ下がっている状態になるので、可能であればそれを再現することになります。
今回P-51Dムスタングは駐機状態で作るつもりですが、エルロンやエレベーターが垂れ下がっている状態にはしません。エルロンやエレベーターが別部品でないので今回は見送ります(主翼からエルロンを、水平尾翼からエレベーターを各々切り取って垂れ下がった状態に接着することもできますが、綺麗に切断できる道具がないので今回はやりません。)。
なお、このプラモデルのインスト(組立説明図のこと。)は1枚で、表面には完成写真と《マーキング及び塗装参考図》が描かれており、裏面には組立工程が描かれています。そしてこの裏面の組立工程には右側欄外に補足説明がされています。以下の説明では、この右欄外の内容に触れるときは「図-1欄外補足」のようにしてそれが書かれている箇所を示します。
ところで、インストの裏面の右下のは《部品番号及び名称》が書かれているので、参考までに次に示します。
1.胴体(左)、2.胴体(右)、3.ヘッドレスト、4.操縦席床、5.計器板、6.機首部品、7.人形、8.プロペラ止め、9.操縦管(投稿者注:これは操縦桿ではないかと思います。)、10.尾輪、11.プロペラ、12.主脚カバー(右)、13.主脚カバー(左)、14.主車輪(投稿者注:主車輪は左右分として同じ部品番号で2個あります。)、15.スピナー(前)、16.スピナー(後)、17.主脚(右)、18.主脚(左)、19.尾輪カバー、20.燃料タンク(右)(投稿者注:左右分として同じ部品番号で2個あります。)、21.燃料タンク(左)(投稿者注:こちらも左右分として同じ部品番号で2個あります。)、22.尾翼(左)(投稿者注:水平尾翼のこと。)、23.尾翼(右)(投稿者注:水平尾翼のこと。)、24.主翼下面、25.主翼上面(右)、26.主翼上面(左)。
そして、透明部品として 1.キャノピー前部、2.キャノピー後部(1)、3.キャノピー後部(2)。
以上です。
1 操縦席の組立て
操縦席は、パイロット(部品番号7の人形)を含めて5個の部品で構成されています。インストには塗装する塗料の色指定がありますが、私はそれっぽい色で塗ります。私は、「プラモデル製作は実機の再現ではなく、製作者の独創である。」と考えています。ですから、私が作った作品に対しては、詳しい人から「ここはこの色じゃない。」などという指摘がなされるべき箇所が多いのでしょうが、私は完成品を他人に見せません。ですから余計な助言を受けることもありません。
図1では操縦席だけでなく、燃料タンクも2組作るよう指示されています(部品番号20のタンク上面で、部品番号21がタンク下面になります。)。これらは増加燃料タンクで、これ以外にも主翼の中とか機体の中にも燃料タンクがあります。(インスト表面の《ムスタングについて》によると、増加タンクつきで、後続距離は3,686キロメートルになるとあります。)増加燃料タンクは、図5で主翼に取り付けるんですが、その前に(主翼に取り付ける前に)銀色に塗装するつもりです。
なお、私は飛行機プラモデルのパイロットは乗せないようにしています。それは、駐機状態で作ることがほとんどであるためパイロットを乗せる必要がないからなのと、パイロットの装具などの塗り分けに時間がかかるからです。塗装については、「ほどほどに省略するなり誤魔化せばいい。」という考え方もあると思いますが、私としては「だったら最初からやらない。」と考えます。「わざと負けるつもりで試合するなら、最初から試合をしない。」という考えです。
2 胴体の組立て
図1で組み立てた操縦席を挟むようにして左右の胴体を貼り合わせます。インストでは左右の胴体の内側全体をカーキグリーンで塗るよう指定されていますが、私は操縦席付近と尾輪格納部分あたりだけ塗装すればいいと思います。完成後に機体を外から除き見たとき、プラスチックの素材の色が見えなければそれでいいと思っています。後で見えなくなる部分を塗装するのは、塗料の無駄使いだと思います。
なお、ゼロ戦などの機内色は「青竹色」(あおたけいろ)ですし、ロシア軍のジェット機の機内色は赤ですから、アメリカ軍の機内色も何色であれ手持ちの塗料で塗っていいと思います。
胴体について注意が必要なのは、P-51Dムスタングの液冷エンジンの排気管が胴体と一緒にモールド(mold 流し型)されているので、後々、機体とは別の色で塗装しなければならないということです。でも、これも「排気管は機体色と同じ色でいいんだ。」と割り切るならそれはそれでいいと思います。
3 主翼、尾翼の取付け
胴体に主翼と尾翼(部品番号22、23 水平尾翼のこと。以下「水平尾翼」といいます。)を取り付けます。ここでは、①主翼の取り付け順序と②水平尾翼の左右を間違えないことに注意が必要です。以下に詳しく書きます。
①主翼の取り付け順序
主翼は、下面(部品番号24)、右上面(部品番号25)、左上面(部品番号26)の三つの部品で構成されています(左右とは、操縦席に座っているパイロットを基準にしています。電車でも進行方向に体の正面を向けた状態で、右手がある方を右、左手がある方を左と呼称しますね。)。
ここでは、インストの描き形に沿って、大きく描かれた部品の方から接着順について書いていきます。
接着順は、まず主翼下面(部品番号24)に主翼上面左側(部品番号26)を貼付けます。次に、胴体を貼付けますが、このとき胴体と主翼左上面との間に隙間ができないようにします。そして、最後に残った主翼右上面を貼付けますがこのときも胴体と主翼右上面との間に隙間ができないようにします。部品の金型(「かながた」 プラモデルの原料を過熱して液状にし、成型加工して製品化するため、主として金属素材を用いて作られた型。)の品質によって、胴体と主翼上面との間に隙間ができることがあります。少しでもその隙間ができないように上記のように接着するんですが、隙間が大きすぎて接着方法などではどうにもならない場合があります。そういうときはパテ(半固形の充填剤みたいなもの。模型店等で売っています。また、接着剤の瓶にランナーを切って入れて自作することもできます。)等で補修します。
ハセガワのキットでは金型の精度がいいのか、滅多にそういう隙間ができないので助かります。
②水平尾翼の左右部品
水平尾翼は右側が部品番号23、左側が部品番号22です。
水平尾翼は右側も左側も、上面と下面の模様が違うので、取り付ける部品を間違えないように気をつけましょう。左右とも水平尾翼の上面には、小さな四角形(恐らく水平尾翼の修理用の扉でしょう。)が描かれています。
なお、万が一水平尾翼の左右を間違えて接着してしまい、接着部分が乾燥して固定してしまったら、間違えた水平尾翼はそのまま修正せずにおきます。力を掛けて水平尾翼を胴体から剥がそうとすると、胴体を痛めてしまうおそれがあります。「失敗した」と感じたときは、後先を考えずに何かやってしまい、被害を拡大しがちですので、ここは冷静に対応します。
失敗は失敗として自分の記憶の中で整理し、次回のプラモデル製作のとき用の教訓にしましょう。今は、このP-51Dムスタングを完成させることが先決です。
4 プロペラ、キャノピーの取付け
プロペラは、黒色に塗装しますが、先端部分は黄色に塗装します。これは、地上でエンジンを始動したときに地上整備員がプロペラの先端を認識しやすくする安全のための目印です。
操縦席にいるパイロットは視界に制限があるので、パイロット自身が地上整備員の安全を確保をするには限界があります。だから、機外にいる人が自ら安全確保できるようにこうしています。
で、このプロペラですが、組み立て終わると改めて塗装することが難しくなるので、この段階で塗装しておきます。
まず、薄い色である黄色を四つあるプロペラのブレード(blade 羽根)の先端に塗り、その後黄色の部分をマスキングテープかセロテープで隠して黒色を塗ります(プラモデルの塗装は、隠蔽力の低い色(薄い色)を先に塗り、隠蔽力の強い色(濃い色)を後に塗るのが原則です。)。各ブレードの黄色部分が同じ大きさなるようにできるだけ注意します。なお、各ブレードの黄色の部分は表面にしかないため、ブレードの裏面は黒一色になります。大概のプロペラ軍用機のブレードの裏面は黒色ですが、これはパイロットの視界を光の反射等で妨げないようにするためです。
プロペラを機体に取り付けるには4個の部品(部品番号15、8、11、16)を組み立てる必要があります。このうち、部品番号15と部品番号16は塗装が必要ですから、塗装してからこれらの4個の部品を組み立てます(部品番号11のプロペラは既に塗装が終わっているはずです。)。
そしてキャノピーですが、このプラモデルでは風貌(「ふうぼう」windshield又はwindscreen)とキャノピーとが別部品になっています。これはキャノピーの部品が2種類あって(透明部品2と透明部品3)、このインストで選択できる「ウィリアム.C.クラーク大佐機」と「ジョン.C.メイヤー中佐機」を作り分ける際には、その2種類のうちのどちらかを選択しなければならないからです。私は両者について何も知らないので、なんとなく外形がカッコイイ透明部品3にするつもりです。
なお、私はこの機体を一部を除き銀色で塗装するつもりなので、キャノピーも風貌も銀色で塗装しておきます。
ここでキャノピーや風貌などの透明部品の塗装について付け加えておきます。
キャノピーや風貌などは、窓枠の部分を機体と同じ色で塗装したり、別の色で塗装したりすると思いますが、機体と接着するところは塗装しない人が多いと思われます。でも、ここを塗装しないと後で機体と接着した後で接着剤の硬化後の姿が透明部品を透して見えてしまいます。だから、私は透明部品が機体と接着される面も窓枠と同じ色か機内色で塗ることにしています。そして接着には「ボンドGクリヤー」を使っています。この接着剤は塗装したプラスチック同士も接着できるのと(プラスチックモデル用の接着剤は塗装したプラスチック同士を接着できません。)乾燥すると透明になるので多少はみ出しがあっても目立ちません。ただ、ベトっとしているので、接着面にまんべんなく塗るのではなくて、爪楊枝などで接着面に点々とちょっとづつ付けて接着(この接着方法を「イモ付け」と呼ばれることがあります。)した方が失敗が少ないです。点々と付けて接着しても接着が弱くてすぐ部品が外れるということはめったにありません。
5 部品の取付け
この工程では、主脚周辺や尾輪周辺の組立や胴体への取り付けをします。
ただ、駐機状態の場合は、脚カバーに加工する必要があります。
加工といっても部品の脚カバー(主脚と尾輪のカバー)を切断するだけです(図-5欄外補足)。後は必要に応じて塗装してから接着します。切断面はプラスチックが割れた不自然になるので、必ず紙やすり等で研磨しておきましょう。
この工程で最も注意するところは、翼端灯と識別灯(後述)です。
まず、翼端灯から書きます。翼端灯とは航行灯(「こうこうとう」 navigation light。船舶、航空機、宇宙船に設置する灯火。)の一種。乗り物の位置・方向・状態に関する情報を他者に提供します。
飛行機の右翼の端には青色、左翼の端には赤色の翼端灯が付いています。インストではクリアーブルーやクリヤーレッドが塗装指示されていますが、各々青色と赤色でもいいと思います。
また、右主翼の下面翼端の三つの丸があり、その中に各々クリヤーイエロー、クリヤーブルー、クリヤーレッドを塗るよう指示されています。この三つの丸は識別灯で、用途は見方に自機の存在を知らせるのだと思いますが、詳しくはわかりません。
これも、黄色、青、赤で塗装することでいいと思います。
翼端灯も識別灯も細かな物なので、塗装に苦労しますが、マスキングテープかセロテープを細く切って塗装部分の周囲を囲うなどしてできるだけ丁寧に塗装します。
マスキングテープを丸く(小さな丸)くり抜くのは難しいので、マスキングゾル(瓶に入っている液体で、塗装しない部分に薄く塗ります。乾燥すると硬化するので、乾燥後にデザインナイフ等で塗装する領域を切り抜きます。模型店にあります。)を塗って、デザインナイフを使い目見当で丸くくり抜き各色の塗装をするのがいいのでしょうが、その作業で正確に小さな円をくり抜くのは難しそうです。仮に成功したとしても、苦労の割に報われる成果が大きくないようなので、適当なところで妥協します。
主輪ですが、これは地面に接する部分は軽く削ってすこしだけ平(たいら)にしておき、その平な面が地面と接するようにするとそれらしい感じがでます。このタイヤの平なところは、飛行機の自重でタイヤが変形しているという表現です。
塗装
塗装はインストのとおりです。私は手持ちの塗料をやりくりして適当に塗装しています。
インスト表面の《マーキング及び塗装参考図》に沿って作るなら、私は既にキャノピーに透明部品3を選んでいるのでジョン.C.メイヤー中佐機の塗装指示に従うことになります。全面銀色で塗装するのはいいとして、問題は機首上面の色です。インストには「ダークブルー」とありますが、いろいろ混色しなければならないようです。私はそんなことはしたくないので、手持ちの塗料の中の青色を塗ります。
機体を塗装してからスライドマーク(ハセガワのインストにはスライドマークとありますが、他のメーカーではデカールと呼ばれていることがあります。)を貼ります。インスト表面の最下部の「スライドマークのはり方」を読んでから行ってください。なお、この「スライドマークのはり方」の項目3のときピンセットを使うことをお勧めします。また、項目4の水分の吸収には麺棒を使うと、うっかりスライドマークがズレたときに修正しやすいです。
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