「行きて帰りし物語」 神話の基本構造と宇宙戦艦ヤマトの物語 (1124文字)
Eテレの『100分で名著』という番組は勉強になるので観るようにしています。
今年(2024年、令和6年)の7月の名著は、古今東西の世界の神話を研究したというジョーゼフ・キャンベル氏の『千の顔を持つ英雄』で、説明は佐宗邦威(さそう・くにたけ)さんでした。
細かなことは省略しますが、神話を「英雄の旅」と捉え、その英雄の旅のおおまかな構造を「行きて帰りし物語」としています。この構造は大きく、(A)出立(しゅったつ)・旅立ち、(B)通過儀礼の試練、(C)帰還、の三つに分類できるとしています。
話は変わりますが、私はアニメの『宇宙戦艦ヤマト』を「誰もが理解しやすくて、感情移入できる物語だ。」と思っていました。主題歌の「必ずここに帰ってくると」という詞は、ヤマト乗組員の使命を言い表して余すところがありません。
でもこれって、神話の「行きて帰りし物語」の書式にピッタリと合っています。ヤマトのアニメでは、次のような流れになっています。
(A)地球は謎の惑星ガミラスからの遊星爆弾の攻撃により、放射能で汚染され人類絶滅まであと1年と迫っていた。
この状況を打破し、地球を救うため宇宙戦艦ヤマトは、14万8000光年離れた大マゼラン雲の中にあるイスカンダル星に放射能除去装置を受けとるべく地球を出発します。今だ人類が経験したことのない大航海の始まりです。
(B)イスカンダル星までの航海中では、敵であるガミラス星の軍隊からの攻撃を受けますが、辛くもイスカンダル星にたどり着き放射能除去装置を受けとることに成功します。
(C)地球への帰路、ガミラス星のデスラー総統からの攻撃を受け、艦長を失うという不運に見舞われますがヤマトは地球に帰還し赤色化していた地球は青くなっていくところでアニメは終わります。
(上記の内容は、『宇宙戦艦ヤマト』に基づくもので、『宇宙戦艦ヤマト2199』では、いろいろな設定で科学的修正が施されていますが大筋の変更はありません。ただ、『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』で、ヤマトの帰還に大きな障害が付け加えられたくらいです。
こうして比較してみると、神話の物語性というのは私たちの心によく馴染むと感じます。
「行きて帰りし物語」が世界中の神話に共通している構造だということであれば、これって人類が持つ心の原風景に近いのかも知れません。
そう思うと神話に対する気持ちが変わってきました。
以前漫才コンビのガクテンソクの奥田さんが「古事記」の話をされていましたが、私も日本の神話に触れたくなってきました。
この夏、古事記の本を手に入れて読むつもりです。