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リズム 〜 太古の痕跡から離婚の理由まで

 人類アフリカ起源説に関する本を読んでいて、ふと思った。現代人の遺伝子のどこかに、はるか遠い昔の痕跡が残っていることはないだろうか? そこで思い当たったのが、「リズム」だ。

音楽のリズム

 アフリカの村を訪れるテレビ番組では、太鼓に合わせて踊る人の映像がよく流れる。聴いていると、太鼓の鼓動に体の奥底の何かが反応する感じがあり、思いがけず手足が動いてしまうこともある。

 ジャズが好きでよく聴くから? 確かにドラムとベースのリズム・セッションが好きだし、ジャズの名奏者の多くはアフリカ系だ。

 でも、もっと根源的な気がしてならない。

 「和太鼓」は日本の伝統芸能になっているが、何故か「作った」ような気がする。魂に届くように感じるのは、むしろアフリカの太鼓の方なのだ。 

 物理学的定義では、「音」は「聴覚を引き起こす空気の波=音波または単に音」(岩波「科学の事典」第3版)ということになるらしい。すると、リズムに対する感受性は、人体機能の一つである聴覚の方にありそうで、太古の痕跡が残っている可能性がわずかにあるかも知れない・・・潜在意識や記憶のどこかに?

言葉のリズム

 リズムを言葉の世界で最も重視しているのは、多分「詩」の世界だろう。先日、気になるので、すっかり変色した上田敏の訳詩集「海潮音」(1908)を本棚からひっぱり出した。

 「秋の日の ヴィオロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し。・・・」で始まるポオル・ヴェルレーヌの「落葉」の一節を覚えている人は少なくないだろう。日本語として名訳で、中学校の教科書にも出てきた。今回、上田敏が「仏蘭西フランスの詩は・・・(中略)・・・ヴェルレエヌに至りて音楽の声を伝へ・・・」と解説を付しているのに、初めて気がついた。長く忘れないでいるのは、多分リズムではないかと思った。優れた詩は、言葉だけでなく、リズムも良いのだ。

いろいろなリズム

 日常生活でもよく使う。代表格は「生活のリズム」。起床から就寝まで、食事・運動・仕事などの日常活動を、時間的規則性を持って行うことを指すのが一般的だろう。生活のリズムの意図しない変化や強要された変更で、「リズムが乱れて」体調が崩れたりすると、その責を問われる。

 「彼とは波長が合わなかったのよ」なんて、時に恋愛の破局や離婚の原因にされたりする。リズムは、人生の一大事を左右する重要な要因にもなる。

(了)

 

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