10年ぶりにベルリン観光した現地人(私)
多分10年ぐらい経っている。ベルリンで久しぶりに観光した。日本から観光に来ていた知人をアテンドしたのだ。
引っ越して、街の中心から離れて、ますます足が遠のいていたから、すごく久しぶり。
場所はアレキサンダープラッツからブランデンブルガー門に続くフリードリッヒ通り。
あいにくの雨であった。
アレキサンダープラッツの前に立つテレビ塔。その斜め向かいにある赤の市庁舎のてっぺんには、ベルリンの旗がなびいている。横向きのクマのマークが、ベルリンのシンボルだ。
お土産でも買いたいかなと思って、アンプルマンのお店に入った。これは東ドイツ時代の信号機の「止まれ」と「進め」のシンボル。ちょっと可愛らしいのだが、知人は特に興味がなかったようで、何も買わずに出た。そこから進んでベルリン大聖堂の立派な建物を横目に、博物館島に入る。
ベルリン大聖堂の向かいには、かつて東ベルリン時代に建てられた共和国宮殿(Palast der Republik)が立っていた。謎めいたモダンなデザインで、結構好きだった。取り壊される前の空っぽの建物の中ではアートイベントがあり、中国の遺跡の展示があったときに行ったことがある。
その共和国宮殿は取り壊され、ベルリン王宮・フンボルトフォーラムという建物が建てられるため、長い間工事現場だった。2020年に完成した姿を、今更ながら初めて見た。まるでずっと前からあるかのように、しれっと、しかしドーンッと建っていた。
不思議なもんだ。
博物館島からフリードリッヒ通りに出て、図書館でトイレを借り、カフェに入る。
超絶にぶっきらぼうなアジア系のカフェの店員おばちゃん。リーズナブルだが、もっと素敵なカフェでもよかったかもしれない。
「ヨーロッパは建物の中に入ると壮大ですね」と日本の知人は言っていた。
そこから左手にオペラ座を眺め、てくてくとブランデンブルガー門の方へ歩く途中、ニベアの店に入りたいと言うので立ち寄る。星座の絵が描かれたニベア缶を一瞬買おうか悩んだが、結局また何も買わずに出る。
ブランデンブルガー門の前ではデモをしていた。何のデモかはわからないが、犬のマスクをかぶり、SMプレイのコスチュームかと思うような怪しい犬の格好をしたお兄さんやおじさんたち、そしてちょっとだけお姉さんで溢れていた。
その謎集団を横目に今度は国会議事堂に出る。国会議事堂のてっぺんはガラス張りで、議会場を覗けるのだが、そんな時間もなく川沿いを歩いて行く。今日のメインはフェリーでベルリン市内観光。しかし天気が悪すぎて、とても寒い。
甲板に出ていると凍えてしまいそうなので、結局中に入り、フェリー走行中の半分は風景をほどほどに眺める。
食事はソーセージばかり。ソーセージにパンか、ソーセージにじゃがいものサラダか。もっといいレストランにでも連れて行ってあげればよかったと反省した。
帰り際、日本的にお辞儀で終わりそうだったから、握手してもらった。この場面ならドイツ人はハグをするだろうが、さすがにそれはドン引きされるかと思い、やめておいた。
「会えてよかった」と言ってもらえて、私は本当に嬉しかった。
この日に撮った写真は、今月出版する本の表紙にすることにした。本の名前は『ベルリンの12ヶ月』。私がここで生活している様子を1年分にまとめたものだ。表紙にベルリンの壁が写っていないのは、この日壁を見なかったからだ。
そもそも、現地の生活の様子を書いているので、作中にはベルリンの観光地は一つも登場しない。これはマジでリアルな海外生活ライフである。
表紙を作るタイミングで、日本から知人が来るなんて。おかげで観光地にわざわざ行く理由ができた。写真が撮れてよかったが、あいにくの天気でまさにドイツらしいどんより空。
ここだけの話、表紙の空は青く加工した。
日本の知人はあっという間に次の都市へ移動してしまい、どんより空のベルリンしか見ていない。
ちょっと残念だ。この街が良い印象を残していることを願う。
でも一年通して曇っている日が多いかもしれない。
これもリアルか。