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「外国人の子と遊ばせないで」に何を思えばいい??ぐーたら保育士のベルリン日記

あぁ。あのセリフをまた聞くことになるとは悲しいことだ。

「外国人の子供と関わって欲しくない」

ここはベルリンである。
多様化の象徴とも言えるドイツの首都である。
もちろん外国人もいっぱい住んでいる。
私が以前働いていた保育園は、移民難民の子供が4割いた。

それでもそんな親は、やっぱりいるのだ。
自分の子供が、外国人の子供と関わって欲しくない、遊んで欲しくない、話して欲しくない、と公言する親が。

いや、ちょっと待て。その前に、

私が外国人ですけど!!

私はこの保育園で、保育士として働いているのだ。

どこからどう見てもアジア人保育士の私を、彼らは一体今までどう思っていたのだろう。私が働き出した時「嫌だな」と思ったんだろうか。
これからどんな顔して彼らと関わっていけばいいのだ。この間私が話しかけた時、あのお父さんは一体何を思ったのだろう。

「そんなことを言っていた親Aと親Bがいたんだけど、ショックを受けないで」

と、今日の全体ミーティングで園長が私に言った。

「いえ、ショック、もう受けてます」

と私は答えた。


私が現在働く保育園は、ベルリン市の中心から離れた場所にある。最寄りの駅から伸びる大通りの両側には、個人経営の店やカフェがあり、教会の前は広場になっていて、定期的に小さな市場が出る。都市開発でどこもかしこも同じような風景になってしまう中、「古き良きドイツ」が感じられる街並みだ。

実は約一年前、私が入った頃、保育園に「外国人の子供」はいなかった。
彼らのいう「外国人の子供」はおそらく、ドイツ語を話さない子供、特にヨーロッパ圏ではない容姿の子供である。その子達は最近入ってきた。

彼らはしかし難民ではない。国から逃げてきた人たちではないし、どの親もちゃんと仕事についている。

どうしてドイツ語が話せないかというと、3年間保育園に行ってなかったとか、最近海外から引っ越してきたとか、両親が両方ともドイツ語が母国語でないためとか、理由は様々である。

「ドイツ人の子供だけがいる保育園」を求めて入ってきた保護者は、内心穏やかではなかったのかもしれない。そんな親がいるなんて、考えもしなかったけど。

「外国人を差別するなんて、なんてひどいドイツ人なんだろう」

と、あなたは思っただろうか。
確かに保護者Aも保護者Bもドイツ人である。

ここでちょっと想像を膨らませてみてもらいたい。もしあなたの大事な子供が、日本語を話さない外国人の子供に叩かれたら、どう思うだろうか?もしあなたの大事な子供が、学校で日本語を話さない臭い子供の隣に座らせられたらどう思うだろうか?
言葉で解決することがうまくできない子供が、手を出す事はよくある。難民の子供の場合、仮住居のため毎日シャワーを浴びることがないかもしれない。
私の可愛い子供は守られたところで育ってほしいと思う親は少なくないかもしれない。

実はこの差別的発言を聞くのは、今回が初めてではない。以前働いていた保育園でも聞いたことがあった。

「私の子供をドイツ語を話せない子供たちと遊ばせないで」

と保育士に頼んできた親はなんと外国籍であった。しかも母親はドイツ語が話せなかった。そして彼らの子供も3歳で保育園に来たため、ドイツ語がほとんど話せなかった。つまり親は「私の子供はドイツ語を習得しないといけないから」という理由で「あの子達と遊ばせないで」と頼んできたのである。

世も末だ。

話を現在に戻そう。
じゃあ外国人保育士である私はどうしよう、という話なのだ。

その話を聞いた瞬間

「奴らを全無視してやりたい」

という衝動に駆られた。
しかしそれは私の精神衛生に悪いし、保育士としては失格だし、子供には罪はない。そもそもグループが違うので、親とそれほど関わらない。

発想の展開が必要だ。

つまりは逆にめっちゃっ話しかけてやるのでやる。
親切丁寧に、親しみを込めた笑顔で、やたらめったら話しかけてやるのだ!
毎日どの子供と遊んだか報告してやるさ!

あなたたちがこの保育園を卒業するまで!

ふあははっははははハハハハハっ


ベルリンの保育園や生活について書きました。


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