スズメ映画館に行ったら楽しかった件(ぐーたら保育士のベルリン日記)
さて、スズメ映画館というは、ベルリン市内の映画館が提供する、4歳から7歳の子供を対象とした映画のプログラムである。
「小さな子供たちに、初めての映画館を」
ということで月に一度、ベルリン市内の色々な映画館で、ショートアニメが3、4本上映される約45分のプログラムが上映される。
不安だ。
ちゃんと映画館行きが許されるか不安だ。同僚にも親にも連絡済みだけど。
ちゃんと映画館に行けるか不安だ。徒歩10分以内だけど。
ちゃんと予約されているか不安だ。電話予約して後で、わざわざ映画館にもメールしたけど。
ちゃんとご飯の時間に帰ってこれるか不安だ。遅れてキッチンの片付けが押したところで、大した問題ではないけれど。
そう、私は旅行が苦手な小心者であり、イベントを立てるのは好きだが、終わるまで不安で仕方がない人なのだ。
さて、今回の遠足に一緒いってくれるは、ちゃんとした同僚だ。なんというか、ちゃんとしている、という言葉がピッタリ。時間は守るし、状況をちゃんと把握しているし、ずっと立ち話とかしないし、頼れる存在である。
今回の映画館行き、言い出しっぺの私は、彼女の経験談を全て参考にし、事務作業を(私的には)ハイスピードでこなしたつもりである。が、当日は、彼女にお任せした。
頼れる人がいると、全くもってコンニャクになってしまう女である。
ボス、ついて行くだけです。
映画館の前にはわんさか子供の団体が歩いていた。10時の回は一杯だというので、11時15分の回を予約したのだけど、こちらも満杯だった。こんなに賑わっていると思わなかった。
映画館は、一階席と、二階席に分かれており、私たちは上の階に上がった。なかなか雰囲気がいい。ちゃんとした同僚は席と受付を行ったり来たりして、お金を払ったり、ポップコーンを買ってきたり、ポップコーンを取り分ける器をもらってきてくれたりした。
私は器が来るまで、大袋に入ったポップコーンを両手で支えていた。
子供達は始まるまでモゾモゾしていたが、お兄さんの声が聞こえてきたらパッと立ち上がった。
「皆さーんようこそ。スズメくんも挨拶してくれるかな?」
なんと案内役がいた!上からは姿は見えなかったが、どうやら手に持っているスズメと一人二役でトークしている。子供たちにも話しかける。
「みんなは雪が降ったら雪合戦するかな?みんなで雪を投げてみよう!」
子供達は大はしゃぎで雪を投げる真似をする。みんなノリがいいな。
「じゃあ最初の映画始まるよ」
という合図とともに子供たちの大合唱が始まった。
「Licht aus! Licht aus!」
(リヒト・アオス!リヒト・アオス!電気を消して!)
これは決まり文句なのか?両手を広げて頭の上で手を叩く。
しかし暗くなると、子供達はちゃんと静かになった。
最初と最後は日本でもお馴染みのピングーだった。ピングーが友達二人とソリで滑っているだけなのだが、子供達はガハハガハハと随所で笑っている。
これ、そんなに面白いの?
と、私は不思議な気分になったが、その笑い声を聞いておかしくなった。
二つ目のアニメは個人的に結構好きだった。
蚊のピークスという女の子が、雪が降って寒いので、上着が欲しくなる。オルガン弾きのところからパン屋に行き、銀行員のところに行き、仕立て屋のところに行って、上着を作ってもらうのだが、仕立て屋は
「お金払って」
と蚊に向かって言うのである。
無情である。
困った女の子は戻ってオルガン弾きからお金をもらうのだが、仕立て屋は悪いことをしたと思っており、やっぱりお金はいらないと上着をプレゼントする。お金を返すのかと思ったら、蚊のピークスは強面のパン屋のところにお金を置いて、ケーキを一つ取ってオルガン弾きに持って行った。オルガン弾きの女性はお金を置いていって男の子に、そのケーキをあげたのであった。
たった7分でほっこり。
一つの作品が終わるごとに、トークがあるのだが、その間私は忍びの如く腰を屈め、子供たちの器にポップコーンを補充した。
けっこう楽しかった。
帰り際にコップの水でタイツを濡らした女の子が、悲しんで泣いてしまったけれど。
濡れただけやん。悲しむなや。
などと無情なことを思っても、口に出してはいけない。
保育園で取り替えるしかないね、とりあえず帰ろうね、と言ったら
「着ているのも、脱ぐのも嫌」
と言うのではないか。もう、勝手にしてください。
なんだかんだで、みんなで保育園に帰ってご飯を食べたらホッとした。
また行きたいな。