ドイツのとある保育士(私)の1日。その1
保育士は引く手あまただったのに、ここにきて風向きが怪しくなった。保育園に空席が目立つようになったのだ。子供の出生率が低下し、2023年は前年度に比べ6パーセント少ない赤ちゃんが生まれたそうだ。私が働く保育園でも夏にたくさんの子供が小学校へ上がったため、一気に子供が減ってしまった。
最寄駅に画用紙に手書きで「うちの保育園、空席あります!」という張り紙がしてあった。雨で文字がドロドロと流れていた。よそ様も大変そうだ。
私の子供が生まれた頃は、幾つもの保育園のウェイティングリストに載せてもらってひたすら返事を待っていたのいうのに。あっという間に世の中は変わるのだな。
さて、保育士として、まだ首をつないでいる私の1日は午前9時に始まることが多い。ちなみに1日6時間、週30時間ミニマムに働いている。
今週来週は小学校が秋休み中。それに合わせて保育園も短縮された時間で営業していて、6時半ではなく7時半から開いている。
2週間休暇を取っていた同僚が今週出てくるはずが、病欠でそのまま来ずじまいで、私は予定より30分早い8時半出勤になった。ドイツ人が休暇後に病欠になるのは、よくある。
朝ごはんは8時から。うちの保育園はオーガニックの食事を出すことを売りにしている。前働いていた保育園では朝食にチョコレートのコンフレークが出ていたので、なんだかなーと思っていたのだが、ここでは全粒パンにバターやジャムが出る。おやつの時間には果物だけでなく、色んなベリーも出てくるので、ちょっと感激した。
私は朝ごはんが終わった時間に到着するので、食べ終わって手を洗った子供達を部屋に迎え入れる。ワーワーと部屋の密度がだんだん高くなる。そして後からやってくる子供をタブレットでチェックする。前の保育園は手書きだったので、デジタルが嬉しい。
マークスが私の目の前にやってきて、「これあげる。この間くれたメダルくれたから」と言って、私の手のひらにコインを置いた。メダルというのは、私が子供たちに画用紙で作ったメダルのことだ。それぞれのメダルに、子供を褒める一言を書いたものだった。
おお、ちょっと嬉しい。私はお母さんにもペコリとお礼を言った。今日は気分のいいスタートを切れた。
さて、9時になる前に、この部屋を片付けなくてはいけない。この1日に何度もある片付けタイムは気が滅入る。いや、まだ朝だから元気に立ち向かえるけど。
片付けろと言えば、だいたいこういう返事が返っている
「私やってなーい」「僕遊んでなーい」
「いや、お前いただろそこに!知るか!!片付けろや!おりゃ!全員でやるんじゃこりゃ!こら!逃げるな!!」
という罵倒をマイルドでフレンドリーな言葉に言い直しながら、子供を追い立てる私。
この部屋が乱れていると、同僚のご機嫌が斜めになってしまう、という大人の都合もある。さあ、9時になると、それぞれのグループに分かれて朝の会が始まる。私は別の部屋へ移動し、自分のグループの子供達を集める。
朝の会は保育士がそれぞれ自由にやっている。私はあまり経験が少なく、
ストックもないので、あまりに何も考えていないと、ぐだぐだになってしまう。困った時は、とりあえずヨガカードを出す。子供用に作られたヨガのポーズが描かれたカードだ。しかし、ちょっと前まで乗り気でやってたのに、最近では「ヨガやだー」とか言い出して、内心面倒臭い。
朝の会が終わりに近づくと、部屋分けをする。だいたい美術の部屋と、おもちゃの部屋と、庭、となる。さあ子供達、勝手にやってくれ。
私たちの保育園はオファーをしてはいけないことになっている。どういうことかと言うと「さあ皆さん、今日はこれを作ります。これをこうしてこのようにしてこれを作りましょうね!」なんて言ってはいけないのだ。創造力は子供の内なる欲望でなければならない。アイデアは保育士からではなく、子供たちから提案されなければならない、と言うことである。
これに関しては、素晴らしい教育論なのだが、色々難しい面もある。まず、私の語彙力では、なかなか子供達の欲求を会話によって明確にし、意見をまとめ、いい塩梅に実践に持っていくのがまだ難しい。
そして全員のやりたいことが一致することがない。だから美術の部屋では、それぞれが、それぞれのやりたいことをやっている。人数が多くなると一気にカオスになる。
今週は子供が少ないので、美術の部屋は閉めて、みんなで庭に出た。最近天気が良くて嬉しい。でもたまに風が冷たくて、冬が来るんだなと感じる。
さて、昼ごはんの時間になりますが、続きは明日のnoteで!
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