御守りの役目

御守りとして身につけている物はありますか?

御守りのように、
小さい頃から使うタオルケットやぬいぐるみ。


娘や息子からもらった手紙や家族写真。

肌身離さず持つ物は、形や物を問わず御守りとして身の回りに存在してる気がします。

それがあったら大丈夫な気がする、落ち着ける。

家族からの一言や顔を見せることで安心する。これも一つの御守りとしていいのではないでしょうか。

“お守り”をネットで調べてみると、
「神様の力が宿っているとされるもの」をさすらしいです。

ちなみに、
神社で買う御守りは自分用ではなく、人に買ってあげることが1番効果を発揮しご利益があるらしいです。
なんか著名な人が言ってました。


私は1年ほど、御守りとして財布に入れていたものがありました。

映画の半券です。

映画やライブのチケットは昔から捨てずに取っておくタイプで、本の栞や手帳に挟むなどしてました。
財布に入れておくのは稀です。

一緒に観に行った人は、9つほど年上の会社の先輩でした。

その日は、私が生理痛でサシ飲みをキャンセルしたことによるリスケの日でした。

夜ご飯は中華を食べに行きました。
車だったこともありアルコールはなし、
時間が早かったので、この後どうするんだろうなと思って餃子を頬張りました。

先輩とは波長が合うので、ユーモアたっぷりにお送りする会社の愚痴から、10年前に流行ったジブリ映画の都市伝説までなんでも話せました。

わたしは最近観に行った映画の話をしていたら、
その映画をご飯の後2人で観に行くことになりました。

私は理解が追いつかない内容でもう一度観たいと思ってたのでナイスタイミングでした。

まさかのレイトショーを先輩と2人で観れることが嬉しく、冗談で「カップルシートにしますか?」と言ったら本当にそうなりました。

カップルシート初めて座りました。
あれすごいですね、背もたれだけ個々にあるんですね。快適でした。
たぶん本当のカップルならば、手を繋いだりするんでしょうね。いいな。


先輩によると、その映画は過去一意味わからなかったらしいです。
潔かった感想を聞けました。

個人的には、自分の理解できてなかったことを1回目鑑賞後にTwitterでめちゃくちゃ調べてからの2回目だったのでとても面白かったです。


映画が終わってからの帰り道、
先輩が車で家まで送ってくれました。

「帰りたくないですね、家につきたくないですね。ゆっくり遠回りしてください」などと面倒臭い言葉を吐く私を横目に爆速で田舎道を遠回りする先輩は優しかったです。

後にも先にも、私が先輩と映画を観たのはこの一回だけです。


その数ヶ月後、会社の別の先輩の結婚式に私たちは参列しました。

ひとの結婚式、正直よくわかりません。
悪くもないけど良くもないみたいな。でも本当におめでとうだし、びっくりするぐらい全員が笑っていて世界の貧困や戦争はこの瞬間には入り込めないなと思います。

私はいつもこうです。
その場にいるのに、別のことを考えてから、今のこの瞬間がいかに良いものなのかを判断してしまいます。
邪念が多いんですね。嫌ですね。

脱線しました。

こんにちは、本題に帰って来ました。お待たせ。

その結婚式の二次会の帰り道、
2人で乗った電車の中で散々、私の友達の愚痴を聞いてもらったのに、本来話したかったことが話せずにモヤモヤしていました。

駅につき、タクシーを呼ぼうとしたとき、
「飲み足りないです付き合ってください」と近くのチェーン居酒屋に先輩を連れて行きました。

本来話したかった、会社の愚痴(私がおかれている状況といかに自分の身体が悲鳴をあげているか)を、不幸プレゼンしました。

嫌な後輩の誕生です。

先輩は、いつも淡々と話を聞いてくれます。
中立の立場でものを言う人なので信頼できるし、嘘をつきません。
そういうところで居心地が良かったです。

その日結婚式で昼からお酒をたらふく飲み、でも全く酔えずに深夜まで息をしていました。

でもどうやら不幸プレゼンで、口が止まらなくなり、
もう仕事が限界であること、助けてほしくても面倒で誰も手を貸してくれないこと、忙しいかなと思って先輩に頼ることすら気が引けてしまうこと。
口が滑った、と思うほどの感情の全てを出してしまいました。

先輩は、うんうん、と言いながら目を見てくれました。

「あなたが本当に大事なときこそ人を頼れなかったり、気を使いすぎて助けてと言えないことはよくわかってる。それが良いところでもあり損してるところでもある。あなたが声をかけようとした○○先輩は、面倒くさいとか厄介だとかは全く思わないような人だし、あなたを助けたいと思っている側の人間だよ。言っていいんだよ、抱えすぎてる。会社の方針はおかしい、自分からも上に聞いてみるよ。あなたはよく頑張ってるよ。同期の中でも比べ物にならない。他はまだ学生気分でいるよ。辛かったね、よくやってるよ」

私は知らない間に顔が濡れてました。

自分が認識しないうちに、泣いていました。
“涙が溢れる”とはこの事か、とその瞬間に知りました。
邪念、この時だけはありませんでした。

他人の前では絶対に泣かない、と決めていた自分の人生が変わった瞬間でした。

こういうことを私は誰かに言って欲しかったんだ、と、
先輩に教えてもらったし、
泣きながら「ああ救われたな、もう終わりにしよう」とふと思いました。

数ヶ月後に私は仕事を辞め、実家に帰り暮らしの全てをリセットしました。

職場があった田舎町にはあれから一度も行っていないし、同僚からの飲みの誘いなども全部断って今に至ります。

人間関係をリセット。
ときめかない相手とは人間関係を構築しなくなりました。

そんな、私の人生を変えるきっかけをくれた先輩と行った映画の半券。

財布に御守りとして入れてました。
あの日の涙ポロポロ時間を過ごせたからこそ、今笑っていられます。


その映画の半券が、とうとう色褪せ、文字が薄らと見えるぐらいになりました。

どんどん色褪せていくと同時に、同じぐらいゆっくりなスピードで私の人生には彩りが増しています。

毎日楽しく、充実しています。
やりたい事をやれている実感があります。


この先輩とは結婚しました、と言えればいいんですが残念ながら先輩は既婚者でしたので健全な先輩後輩としてお付き合いしていました。

お互いに恋愛感情が湧かないからこそ、
1人の人間、として関係があったのだと思います。

男女になると本当にクソみたいなことになりますので。


御守りの役目は一先ず終わりました。

いや、御守りの効果は一生かもしれない。
あの変われた日からずっと、御守りの効果は継続し続けている。

こんなにも毎日がハッピーハッピーハッピーなのだから。

きっかけをくれた先輩へ

元気でやっていますか。
また飲もうねと言ってくれてからもう一年以上が経ちました。
私はあの時バカみたいに飲んでいたお酒をほとんどやめてしまいましたよ。
でも代わりに趣味が2つできました。
あの無趣味だった私が、です。
言いたいので早く当ててください。
シンキングタイム中は場を華やかにする小躍りをします。りんぐり。

私より