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EveningMoon(73)

わたしがついた嘘なんて
あなたの誘惑に比べたら
それはそれは幼くて
わたしがついた嘘なんて
あなたを傷つけるわけもなく
知らん顔の素通りで
木枯らしのひとつも吹けば
忘れられてしまうよね
傷跡どころか爪跡も
背中にも心にも
残すことができないわ
わたしの背中には
あなたがたてた
爪の痕
わたしの心には
あなたがたてた
剣がそのままで
血が止まりそうになると
またひとつ深くして
わたしの中をえぐりとる
あなたの剣が刺さった場所は
燃えるように熱くて
もっともっととせかしてしまう
わたしがついた嘘なんて
木枯らしのひとつも吹けば
そこになんにも残らない
わたしにあなたは刻まれたのに
あなたの記憶には
嘘みたいに残らない


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