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君の声が聞こえるうちに

”お子さんは耳に異常がありました”

僕の両親は僕が生まれたときに耳の異常を伝えられた。その後も

”○○君はどんどん聴力が落ちています。手話の練習を始めましょう”

小学校の卒業のタイミングで医者にはこう言われた。そして、

”いつ耳が聞こえなくなってもおかしくありません”

高校入学で告げられた。




僕は長谷川○○。高校二年生。恥ずかしながら好きな人がいる。

○○:寒いなあ。もう今年終わるってやばいな。

トントン

○○:あ、おはよう。飛鳥。

飛鳥:おはよう、○○。何言ってたの?


彼女は齋藤飛鳥。高校に入学して仲良くなった、好きな人だ。飛鳥は僕の耳の事情を知っている唯一の友達だ。

○○:もう今年終わるんだなと思って。

飛鳥:確かに、早いよね。

○○:あのさ、今日放課後空いてる?

飛鳥:空いてるけど、なんで?

○○:一緒に行きたいとこあったから。

飛鳥:どこ行くの?

○○:んー。内緒かな

飛鳥:え、何それ。

こうして話しながら学校に向かい、一日の授業をちゃんと受けた。

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飛鳥:○○ー。行こー。

○○:・・・

飛鳥:あ、そっか。

トントン

○○:あ、飛鳥。そろそろ行こっか

飛鳥:うん。で、どこ行くの?

○○:結構遠いんだけど、イルミネーション見に行こうと思って。

飛鳥:え、なんで?

○○:今日イブだから。一緒に過ごしたかった…///

飛鳥:え、私でいいの…///

○○:うん。飛鳥がいいから…///

飛鳥:そっか。

電車に乗って30分すごい都会の方に向かった。

飛鳥:ほんとに遠いじゃん

○○:まあ、でも移動も結構楽しかったし。

飛鳥:確かに、何時からなの?

○○:18時から。まだ時間あるし、あったかい飲み物でも買ってくる?

飛鳥:そうだね。ちょうどス○バあるし。

○○:僕行ってくるよ。何がいい?

飛鳥:んー、任せるよ

○○:うわ、一番困るな、それ。

飛鳥:笑 じゃあ○○と同じやつで

○○:はいはーい。

僕はス〇バに入ってちょっと並んでからレジの前に来た。でも、そこで問題が起きた。

店員:・・・

○○:(あれ? 店員さんしゃっべてる?)

店員:?

○○:(あ、やばい)

店員:?

○○:あ、

飛鳥:これ二つください。

店員:かしこまりました。少々お待ちください。

そのまま飛鳥は僕の手をつかんで引っ張っていった。

しばらく経ってから

○○:あぁ。何があったの?

飛鳥:今聞こえてなかったでしょ。

○○:あ、だから店員さん何も言ってなかったのか。

飛鳥:ちょっと心配になったから見に行ったら、トラブってたから行ってよかった。

○○:・・・ごめん。

飛鳥:あ、いや、別に何も思ってないよ。それに謝罪じゃなくて、感謝が欲しいな。

○○:笑、ありがと。

飛鳥:笑 さ、行こ。

○○:うん

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僕たちは少し歩いてイルミネーションの場所へと着いた

○○:いっぱい人いるね。

飛鳥:そうだね。

すると飛鳥は急に立ち止まった

○○:どーした?

飛鳥:手、出して

○○:なんで?

飛鳥:逸れると大変だから...///

○○:あ、うん…///

飛鳥:べ、別に手つなぎたいわけじゃないから

○○:笑 はいはい。

飛鳥:・・・

○○:きれいだね

飛鳥:うん

○○:ありがとね。一緒に来てくれて。

飛鳥:こっちこそありがと。誘ってくれて

○○:・・・手つないだ方があったかいね

飛鳥:そうだね。

○○:心もあったまる

飛鳥:何言ってんの笑

○○:笑

僕たちは話しながらイルミネーションを見て回った。そして、帰る時間になり電車に乗って飛鳥を送ることになった。

○○:・・・

飛鳥:・・・○○はさ、

○○:ん?

飛鳥:その・・・なんで耳のこと私にしか言わないの? 違う友達にも言えばいいのに。

○○:なんでって・・・んー、飛鳥のこと信用してるからかな

飛鳥:でも、ほかの人にも言った方が学校生活とか不自由なく過ごせるんじゃない?クラスのみんなもいろいろ手伝ってくれたりしてくれると思うけど。

○○:・・・何もわからないでしょ

飛鳥:え?

○○:飛鳥には何もわからないよ! 耳が少し悪いだけで、人から差別されて、冷たい目線を受けるんだ! そんなこともうされたくない。 みんなもきっとそうだ。僕が耳が悪いって聞いただけで、下に見始める。

飛鳥:そんなつもりで言ったんじゃ・・・

○○:僕が、僕が毎晩どんな気持ちでいるか教えてあげようか? もし明日朝起きて耳が聞こえなくなってたらどうしよう、みんなの、好きな人の声が聞こえなくなってたらどうしようって。毎晩おびえてるんだ。そんな経験ないでしょ! 

飛鳥:あ、その、ごめん・・・

そこから僕たちの間に会話はなかった

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次の日

先生:おはよう。あ、今日は○○休みだから。んじゃ今日もがんばれよ。あと、クリスマスだし早く帰れよー

飛鳥:(○○休みなんだ。やっぱり昨日のことで。謝りに行かないと)

一方・・・

○母:○○ー。もっと体調悪くなったらすぐ連絡するのよ

○○:ほんとに大丈夫だから。仕事行ってきていいよ。

○母:そう。ゆっくり休んでね

○○:うん

ガチャ

学校をさぼってしまった。初めてだ。昨日のことがあって飛鳥と顔を合わせられなかった。伝えたいこともあったのに。過去のことを引きずってはいけないとわかってる。でも、心の傷は癒えなかった。


小学生のころ、僕は今とは違うところに住んでいた。その頃は、僕の耳のことを周りにいるすべての人が知っていた。

○○:おはよう。

△△:あ、おはよう。

▢▢:おいおい、あいつまた声かけてきてるよ ボソッ

△△:やめとけよ笑

▢▢:大丈夫だよ笑 どうせ聞こえねえんだから

○○:(いや、聞こえてますよ、全然。余裕で聞こえてますよ)

先生:朝の会始めるよー、今見えてたけど△△君と▢▢君はいい子だね。耳の悪い○○君と仲良くして、お手伝いしてたね。これからも、みんなも○○君と仲良くしてあげてね。

クラス:はーい

○○:(結局、教員も一緒だ。)

それからも小学校6年間でいじめは続いた。教員も気づいているんだろう。でも、めんどくさいことをスルーしている。もううんざりだ。でも、そんなときに支えてくれたのは母だった。

○母:○○。学校なんて行かなくていいよ笑 ○○が生きたいように生きればいいんだよ。そうだ引っ越そうか。遠いところに行こう。そっちで信頼できる友達を作ろう。

うれしかった。母がいてくれて本当に良かった。

○○:お母さん(泣 引っ越したい

○母:落ち着くまで引っ越し先でも学校は行かなくていいよ。高校からでも全然いいよ。私は、○○に楽しく生きてほしいんだ。

○○:ありがとう。お母さん。 

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そして、高校に入って飛鳥に出会った。始めてできた好きな人だった。でも、どんどん耳の具合が悪くなった。だから、彼女の、飛鳥の声が聞こえるうちに想いを伝えたかった。でも、

○○:もう飛鳥には会えない。

涙を流しながら僕は眠りについていた。

ピンポーン

○○:ああ、だいぶ寝てたな。

ピンポーン

○○:誰か来たわ。

僕は急いで階段を降りてモニターを見た

○○:あ、飛鳥か。今は会いたくないな・・・

飛鳥:○○いないのかな。会いたかったのに。帰ろ

○○:はあ、聞こえてるよ。全部、まだ・・・

飛鳥は帰っていった。本当は話したかった。謝りたかった。想いも伝えたかった。そう思っても無理だった。

○○:寝よ。

また僕は眠りについた。
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その夜

ピンポーン

○母:はーい

ガチャ

飛鳥:夜遅くにすみません。あ、あの・・・

○母:どちら様でしょう

飛鳥:齋藤飛鳥と言います。その・・・ ○○君の友達です。

○母:あら、そうなの! ○○に友達が! しかも心配してきてくれたのね。○○はいい友達を持ったわ。どうぞ、上がって

飛鳥:え、あ、失礼します。

○母:私が呼んできてリビングで待ってる?それとも、自分で部屋に行く?

飛鳥:あ、じゃあここで待って・・・いや、自分で部屋に行きます!

○母:笑 わかったわ。階段上って右の部屋よ。

飛鳥:ありがとうございます。

飛鳥:(謝りに来たんだ。絶対に○○に。)

飛鳥:ここか

コンコン

飛鳥:○○ー、は、入るよー

ガチャ

飛鳥:あ、すごい寝てる。 ○○ー起きてー。全然起きないや。寝顔かわいい笑

トントン

飛鳥:○○ー起きてー

○○:ん、はああ(あくび)

飛鳥:あ、ま、○○。おはよう。

○○:? 飛鳥?

飛鳥:○○、そのこの前のこと謝りたくて。この前は分かった気になって無責任に言いたいこと言って、ほんとにごめん!

○○:? 飛鳥? どうしたの?

飛鳥:え、今、○○まさか

○○:あ 飛鳥、母さん呼んできて(泣

僕はこの瞬間の飛鳥の表情で察してしまった。自分の耳が聞こえなくなっていることに。その後僕は病院に運ばれた。

夜十時

”大事を取って、一日入院してください。安静にしてくださいね”

病院の先生は話しながら、手話を使って話していた。窓を見ると雪が降っていた。

○母:”○○、何か欲しいものある?”

○○:”大丈夫、ありがとう”

飛鳥:あのー、何を?

○母:あ、手話で話してたの。

飛鳥:○○に伝えたいことがあるんですけど。

○母:何?

飛鳥:ごめんねって。とにかく、ごめんねって伝えてください。

○母:”ごめんねって、飛鳥ちゃんが言ってるよ”

○○:”僕もごめんねって伝えてくれる? 後、二人にしてくれない?”

○母:”どうやって話すの?”

○○:”なんとかするよ”

○母:僕もごめんねだって、飛鳥ちゃん

飛鳥:仲直りでいいんですかね?

○母:たぶんね。それと私は一回出ていくね。

飛鳥:え? 何でですか?

母は病室から出ていき、部屋には僕と飛鳥だけになった。

○○:話したいことあるんだ。悪いけど飛鳥はLINEで打ってもらってもいい?

飛鳥LINE:わかった

○○:まずは本当に謝りたい。飛鳥は、僕のことを思って言ってくれてたのに。ほんとにごめん。

飛鳥LINE:私の方こそごめん無責任にあんなこと言っちゃって。

○○:いいんだ。正直今、話しているのも不安なんだ。大きな声で話していないかとか、イントネーションはあってるのかとか。

飛鳥LINE:大丈夫だよ。ていうか、それでも話してる○○はすごいよ

○○:(泣

飛鳥LINE:え!? どうしたの!?

○○:君の、飛鳥の声が聞きたい(泣

飛鳥LINE:○○・・・

○○:クリスマスって大事な日に、君の声が聞こえなくなって、喧嘩までしちゃった

飛鳥LINE:・・・

○○:イブに、君の声が聞こえるうちに告白したかった。

飛鳥LINE:え?

○○:こんな僕だけど、付き合ってくれますか?

飛鳥LINE:・・・私だって、○○の耳が聞こえるうちに告白したかった。でも、自分に自信がなくて言えなかった。

○○:それって。

飛鳥LINE:いいに決まってるじゃん。私だって、その・・・大好きなんだから。

○○:じゃあ

飛鳥LINE:付き合ってください

○○:やった。

飛鳥LINE:手話教えてね。

○○:もちろん。

飛鳥LINE:毎日来るからね

○○:うれしい。そうだ、外出たい。

飛鳥LINE:いいよ

飛鳥とともに僕は病院内にある中庭に出た。

飛鳥LINE:寒くない?

○○:うん、大丈夫。飛鳥は?

飛鳥LINE:大丈夫だよ。

○○:ねえ、こっち向いて。

飛鳥:ん?

僕は飛鳥の頬にキスをした

飛鳥:もう、外してるよ

○○:今なん、

そういって僕たちは口づけを交わした。空からは雪の花が降っていた。


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