Re:Break Prologue
2022年 9月
埃っぽい部屋で1人、目が覚める。
床には使用済みティッシュや
コンビニ弁当のゴミばかり。
いつかの景品だったタペストリーも見つからない程に。
「キモッ。」
自分からでた廃棄物に吐き気がするルーティーン。
習慣は週3以上の頻度で2か月続けることで
生まれるらしいから、もう最早これは病気だろう。
仕事を辞めて2ヶ月。
バイトを初めて4日。
バ先の大学生から馬鹿にされるのはまだ慣れない。
家を出ると、排気ガスの匂いが鼻を刺した。
玄関の隣にある郵便受けはゴミ箱と化している。
いつもは目にもとまらないのに、
真新しい白の紙が目に止まった。
どうせ宗教勧誘だろ。
そう思ってみても、妙に頭に残る。
しばらく歩いてみてもまだ頭に残る。
後ろ髪を引かれるとはよく言ったものだ。
結局ゴミ箱紛いの箱まで戻ってきてしまった。
<結婚式招待状>
なんと簡潔か。
この手の類いはよくある。そりゃあ自分も25だ。
周りはどんどん幸せになって、自分はどんどん落ちぶれて。
なぜこんなものに後ろ髪を引かれたのか。
こんな幸せの押し売りに時間を取られたのか。
そんな愚痴も、差出人を見たときに吹き飛んだ。
忘れようとしたあの思い出。
塗り替えようとした女性関係。
取り戻そうとした刹那の2年間。
引き止られなかった、たった一人の女性。
歓喜の鐘が鳴る。
扉の開く音、その先にいる君。
早々と、ここに来たことを後悔した。もう割り切ったと思ってた。
、、、なんで君の目線に僕がいない。
やっと忘れたはずの考えが、また僕の頭を蝕んだ。
気づけば僕は、式場から抜け出していた。
式場から徒歩5分ほどに海がある。そこに僕はいた。
〈海の綺麗な場所で式を。〉
まだ部屋のどこかにある情報誌のことを思い出していた。
いつからだろうか。部屋が汚くなったのは。
君を失ったポイントは一体いつだったのか。
まぁ考えても答えは出ないのだが。
「やっぱりここにいた。」
「、、、!」
「なんでここにいんの?って顔してるね。」
「そりゃそう、、、だろ。」
「幼馴染舐めないでよね?」
「、、、。」
「、、、ずっと探してた。」
「うん。」
「、、、ずっと待ってた。」
「、、、。」
「、、、もう会えないかと思った。」
「ごめん。」
「、、、ねぇ?過去に戻りたいって思ったことある?」
「あるよ。」
「過去に戻れるって言ったらさ、信じる?」
「いいや。」
「ねぇ、過去に行って間違いを正そうよ。」
「ッフフ、、、どうやって?」
「この石を使って。」
その時、目の前が真っ白になった。