Re:Break 7
「さくら!」
知ってるようで知らない道をただ、進む。
その間に垣間見える景色一つ一つが奈々未との過去で。
「ついてこないで!」
悲痛なさくらの返答にただ、心が痛んだ。
「聞いてくれ!」
「いやだ!」
ただただ意味のないやりとりが住宅街に響く。
ふと思う。
今のさくらが僕なんだな、と。
答えを聞くのが怖くて、
次の行動全てが恐ろしくなって。
全てから逃げ出した。
側から見れば、大したことのない筈なのに。
僕があそこまで心を閉ざした理由だって、
〈振られた。〉
ただ、それだけ。
よくあること。ありふれたこと。
確かに傷つくけれど、挑戦した証だったのに。
傷つくことに、慣れてなさすぎた。
僕はみんなを、傷つけていたのに。
息が上がる。
喉が痛い。
脇腹を抑えながら、足を緩めた。
さくらを、公園のベンチで見つけた。
すべり台もない、砂場しかない小さな公園。
「さくら。」
そう呼びかけたが、返事はなかった。
それでもこちらを一瞥したところを見ると
気づいてはいるようだ。
さくらの隣
いつも定位置にゆっくり腰掛けた。
「なぁ。」
「、、、。」
「独り言、、、なんだけどさ。」
「今のさくらはさ、俺みたいなんだよね。」
「、、、。」
「今目の前で起きようとすることに
勝手に予測を立てて
逃げようとする感じがさ。」
「、、、。」
「俺が誰とも連絡を取らなくなったのは、
事実を受けいられなかっただけじゃないんだ。」
「ただ、次を想像するのが怖かったんだ。」
「盛大に前祝いを受けてさ、
もちろん、絶対に成功する自信があったし。」
「、、、!」
「けど振られて、
心がバキバキになった後全てが怖くなったんだ。」
「明日会社になんて顔していけばいいの?
明日奈々未とどう話せばいいの?
明日から、どうすればいいの?
全部、間違ってたの?」
「だから、
こっちで奈々未の顔だってちゃんと見えなかった。」
さくらは深く、俯いてしまった。
「ごめんなさい、、、。」
ゆっくりと、か細くさくらは言った。
「何を謝ってるのさ。」
「私のせいで、、、。」
「辛いことを思い出させたって?」
「へ、、、?」
「俺言ったよね?
マダムみたいな人に公園で会った時、
クソ迷惑なお陰で前を向けそうだって。」
「そう、、、だっけ。」
「うん。だから今、さくらと向き合えてるんだよ。」
「奈々未さんにまだ、想いを持ってる、、、?」
さくらは俯く顔を少し上げて僕に聞いた。
「どう、、、だろね。」
「どっち?」
「んー。無い、と言えば嘘になるな。」
「、、、。」
「けど、今奈々未には幸せにすべき人がいて。」
「もちろん俺がそこに入る権利なんてない。」
「、、、。」
「奈々未だって、それはわかってる筈だよ。」
「じゃあ、、、私は?」
「へ?」
「ねぇ○○、私はまだ○○が好きだよ。」
「、、、。」
「この世界に飛ばしたのだって、
それが理由なんだよ。」
「え、、、。」
「立ち直って欲しい。
それ以上に私に振り向いてほしかった。」
「○○の為なんかじゃあなくて、私のためなんだよ。」
「、、、。」
「私のために、
○○に過去を変えさせようとしたんだよ。」
「過去に行って、
奈々未さんよりも私の方がふさわしいって
そう、言うつもりだったんだよ。」
「さくら、、、。」
「けど、そんなことなかったんだよ。」
「私は多分○○のことを1番知ってる。
幼馴染だからね。」
さくらは拳をギュッと握りしめた。
「けど、私はそれまでなんだ。」
「あの時の約束だって、○○の優しさなのに。」
▽
「東京に行くのはわかってる。
けど、私と、、、付き合ってください!」
3年前
すべり台もない、砂場しかない小さな公園。
幼馴染に告白をした
いつもの集合場所。いつものベンチの位置で。
「嬉しいよ、、、さくら。」
「じゃあ、、、!」
「ごめんなさい。」
「え?」
「東京に行って、
自分の身が建てられるかもわかんないのに
さくらを本気で恋人として扱えないと思うんだ。」
そうだ。○○は超がつくほど真面目なんだった。
「そんなこと、、、!」
いつも自分を律しすぎて、逃げ場を失ってるのに。
私はその逃げ場になれるのに。なってた筈なのに。
「俺は出来ないよ。
さくらの恋心をないがしろになんて。」
「、、、。」
どうして。
どうして。
、、、どうして。
涙で前が見えない。
私の涙なんて、○○はいっぱい見てきた。
私が泣いたらすぐ、駆け寄ってくれた。
ねぇ○○?
なんで私の方をみてくれないの?
いつも私の涙を拭いてくれてたじゃん。
なんで、、、こっちを見てくれないの?
「俺、東京である程度安定したら戻ってくる。」
「え、、、?」
「そん時、
まださくらが俺のこと好きだったら、
付き合おう?」
「うん。待ってるから。」
△
「ハッ。」
「何笑ってんのよ。」
「いや、ごめんごめん。
俺が帰る場所はちゃんとあったのになぁ
馬鹿だなぁって思っちゃって。」
「そうだよ。○○は馬鹿なんだよ。」
俯いていたさくらが、ゆっくりとこちらを見た。
俺もさくらの目をじっと見つめ返した。
「俺、決めたよ。変える過去。」