こことあそこ
外の世界は、どのようなものなのかな。
どんな空気で満ちているのかな。
どんな匂いがするんだろうかな。
日差しは暖かいのだろうか。
雨は冷たいんだろうか。
いつも見えるあの人は、どんな人なのかな。
話したこともない。
何かを挟んででしか見たことがない。
どんな雰囲気なんだろう。
どんな匂いなのだろう。
青春は、しているのかな。
青春ってなんなんだろう。
楽しいんだろうな。
眩しいんだろうな。
私は独りだ。
この真っ白な場所で独り、いる。
いつも変わらないこの場所。
だけど私は変わってしまった。
届かない程高かった天井も
足の届かない椅子も
開けられなかった窓ですらも
全て、届いてしまった。
いつも暖かい食事の味も
開くたび新しい世界があった本も
窓から見える届かない場所ですらも
全て、飽きてしまった。
日差しが暖かいことは、知ってる。
空は終わりがない程広いことも。
与えてくれた物の暖かさも知ってる。
けど、知りたいんだ。
日差しがどれだけ暖かいのか。
空の端っこはどこにあるのか。
ここにはない何かを見つけたいんだ。
けど、私はここから出る方法を知らない。
この世界でしか生きていかざるをえない。
嫌だ。そんなの嫌だ。
ここに不満なんてない。
だからといって、満ちてもいない。
「出して、、、。」
初めて意識するより先に、言葉が出た。
きっとこれは私の本音なんだろうな。
無我夢中になって至るとこを叩いた。
ここに私がいることを知って欲しくて。
私を取り巻くこの壁に傷をつけたくて。
誰かが私を呼ぶ声がして。
「ここだよ!」
「ここに、いるよ!」
けど、誰もこちらを向いてはくれない。
街行く人はこちらを気にしない。
私を見てくれない。
手は真っ赤になって、
真っ白なドレスは白さを失って。
悔しかった。
悲しかった。
けど、嬉しかった。
自分にも、本のような感情があることを知ったから。
私を支えていた椅子を持った。
そして窓に叩きつけた。
私を支えてくれた椅子は壊れた。
窓は、私を囲っていたものは壊れた。
笠木を手に、新しい空気を肺に、進んだ。
「待ってましたよ。」
「あなたは、窓の外の人?」
「そうです。」
なんだか綺麗な顔だな、
なんだか顔が大きい気もするけど。
それよりも私は、新しい世界に脳が混乱していた。
「混乱、してるんでしょ。」
「うん。どうしたらいいの?」
「一時的な脳のバグです。
『脳がバグるぅ!!』って言ったら治ります。」
「の、脳がバグるぅ、、、。」
彼女は私がそう言うと、ケラケラと腹を抑えた。
「どうしたの?」
不安になって聞いてみた。
「い、、、いや、
まさか、、まさか、、、、本当に言うとは。」
なんだかイラッとした。
「ごめんなさい。冗談ですよ。」
なんだかムッとするな。
「て、ていうか。あ、アンタ誰なのよ。」
黒い服を着た窓の外の人は
笑窪を作って言った。
「初めまして、飛鳥さん。
私は山下美月。あなたの恋人というやつです。」