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イヤホンとコンポ




Ooga-Chaka Ooga-Ooga
Ooga-Chaka Ooga-Ooga



玄関を開けて一呼吸太陽は
夏よりも優しい顔をしてる。

そしてイヤホンから流れる謎の掛け声。
でも、いつも少しだけ歩くのが楽しくなる。

大したことない道だけど、気分は宇宙旅行。
石ころ蹴飛ばし向かう先はインフィニティストーン
でもなんでもないちょっと気になる先輩だけど。






「遅いんだけど。」


「へ?」

「お・そ・い!」

「へ?」

「イヤホン外せよ!
 ていうかこれも聞こえないんか?!」

「ごめんなさいごめんなさい。」




今日は3回目のデート。
正直言って1番緊張してる。




「早く行こ?
 あ、遅れたからお昼奢りね。」




だって今日、告白するから。







夏の残暑残る昼時、ちょっと洒落たパスタ屋。
この人のリクエストはいつも大人。


一体何で調べたら
ちょうどいい感じのパスタ屋なんて見つかるんや。


「ねぇ、聞いてんの?」




この人微妙にヤンキー臭するのなんなんやろ。

「聞いてます聞いてます。」

「じゃあ私、何て言った?」

「、、、金がねぇ!!!!!」

「金森じゃねえわ。
 デートでそんなこと言わねぇだろ。」


頭をしばかれた。

「なんか悩みでもあんの?」

こういう時この人は凄い鋭い。
だからこそ、好き。


「悩みなんて無いです。
 ただちょっと、、、緊張してるだけで。」

「、、、可愛い。」

「へ?」

「なんでもない。」

「いや、めっちゃニヤけて言われても。」


鼻にしわができてる。
可愛い。
あかん、全部可愛い。

「ていうか、そろそろ敬語外してくれよぉ。」


肩をつつきながら言ってきた。
指細いから肩が痛い。全部ツボに入ってる。



「先輩ですし。」

「、、、あっそ。」


肩を落ちして
ちょっといじけて顔を横に向けた。

「ところで、今日何します?」

「今日?うーん。
 とりあえず、敬語外せ。先輩命令。」

「、、、こんにちわ。」



ーーーーーーブフッ



お互い吹いた。
やっぱりおかしかったか。


「なんで、、、挨拶、、なの、、、よ。」

笑いすぎて言葉が細切れになってる。


「他に思いつかんかったんですよ!」

「それにしてもだわ!」








秋を感じる夕方、
夕日がなんだかいつもよりでかい気がする。


「今日は楽しかったよ。」

「ほんまに、、、ですか?」

「、、、。」

「ほんまに?」

「うん。ほんまほんま。」


「イントネーションが違います。」


「見逃してくれよ。」



ーーーーーーふふっ



やっぱり、この人しかいない。

「梅澤先輩。」

深呼吸一つして、向き合った。

「、、、はい。」


こういう時ふざけないのも、好き。







「バイトで初めてシフトが一緒になった時
 優しく教えてくれてありがとうございます。」

「いえいえ。」







「いつもしょうもないノリに付き合ってくれて
 ありがとうございます。」
「何をおっしゃいますやら。」






「梅澤美波さん。
 あなたが好きです。付き合ってください。」









Ooga-Chaka Ooga-Ooga
Ooga-Chaka Ooga-Ooga




寝ぼけ眼を擦ってコンポを再生。
あえてカセットテープで聴くのは映画のせい。

それと、


「もぉ、、、うるさい!」

朝を少しリミックスしたかったから。


おわり

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