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②「モネ 連作の情景」 感想と、 おすすめの予習コンテンツ

暖冬だといわれているこの冬。

でも、わたしが住んでいる街も、ここ数日はずいぶん寒いです。

みなさんお元気ですか。

さて、今回は「モネ 連作の情景」 感想と、おすすめの予習コンテンツの後半です。

展覧会の第3章の感想から書きます。

前回(第2章の感想まで)はこちらです。↓

第3章 テーマへの集中 の感想

モネは1880年代後半から「連作」を制作し、1891年に<積みわら>の連作15点を一挙に公開します。ここではそれ以前から、同じ構図で、日々変わる風景を描いていたことを教えてくれます。

いくつか制作テーマがあるなかで、漁師小屋を描いた3つの作品が印象的でした。

↓ここから見れます


①《ヴァランジュヴィルの漁師小屋》1882年、ヴァランジュヴィル、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館

空も海も青く、崖と崖の上に立っている漁師小屋、草木が日光に照らされ、明るくで穏やかなイメージです。

空と海との境界線はなんとかわかるものの、はっきりとは描かれず、互いの青が溶け合っている感じが、なんとも綺麗だなあと思いました。

絵に描かれている描かれているものも美しいですが、あの崖の上にある小屋の中から見る眺めは、とても美しいんだろうなあ、なんて想像するのも楽しいです。

②《ヴァランジュヴィルの崖のくぼみの道》1882年、ヴァランジュヴィル、ニュー・アート・ギャラリー・ウォルソール

②と③はこちらからも。↓

こちらは崖の下からの構図。

描かれているものは①とあまり変わっていません。

それなのに構図や色と光の違いで、随分と違う絵に見えます。

どこか力強さを感じました。

③《ヴァランジュヴィル付近の崖の小屋》1894-98年、ヴァランジュヴィル、二ュ・カールスベア美術館

①と同じ構図ですが、天候が悪いのでしょうか。

わたしには嵐に見えました。

①と違い、自然の厳しさを感じます。

もしあの小屋の中にいたら怖いだろうなあ、なんて思ってしまいました。

モネが同じテーマで制作したものを、3つも並べて比較できるのは楽しいですね。

漁師小屋だけでなく、この展覧会ではほかのテーマでもたくさん比較できるので面白いです。

さすが「100%モネ」の展覧会だなあと思います。

第4章 連作の画家、モネ の感想

いよいよ「連作」として発表された作品の登場です。

<ウォータールー橋>

この章から一部写真撮影が許可されているので、撮影してきました。

公式ガイドブックには、より楽しむための鑑賞方法が記載されています。

この絵が描かれたのは、どんな天気で、どんな時間帯だったのか?といったことを考えながら観るとよいそうです。

また、距離を変えて鑑賞することもお忘れなく。

まずは近寄って筆遣いを観る
その後は徐々に下がって色のハーモニーを楽しむ

AERA Art Collection 「モネ 連作の情景 完全ガイドブック」46ページ
(朝日新聞出版・2023年10月30日)

今回の展覧会だけでなく、印象派のほかの絵画を観る際にも、役立ちそうな方法ですね。

《ウォータールー橋、曇り》1900年、ロンドン、ヒュー・レイン・ギャラリー
《ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ》1904年、ロンドン、ワシントン・ナショナル・ギャラリー
《ウォータールー橋、ロンドン、日没》1904年、ロンドン、ワシントン・ナショナル・ギャラリー

夕暮れを緑で表現するなんて、わたしには思いつきません。

あと、わたしは題名を見ずに《ウォータールー橋、ロンドン、日没》を観たとき、朝焼けかと思いました。

「あちゃ。ちがった。笑」
なんて考えながら観てました。笑

「連作」は大人気だった

1891年、デュラン=リュエル画廊で〈積みわら〉の連作15点を公開し、国内外で名声を築きました。

その後も<ポプラ並木>や<ルーアンの大聖堂>などの「連作」は大人気だったそうです。
作品をまとめて展示したことならではのメリットもあったようです。

たとえば、<ルーアンの大聖堂>の「連作」発表についてです。

まとめて観た時に初めて、夜明けから日没までの時間の推移を体験できるひとつの大きな作品となる。このようなコンセプトの話題性や、購入者が比較しながら作品を選定できるメリットも、モネは考慮に入れていた。

Weeklyぴあ特別編集
「オルセー美術館展〜19世紀 芸術家たちの楽園〜のすべてを楽しむ公式ガイドブック」
50ページ(ぴあ・2006年10月20日)

モネには経済的に苦しい時期もあったようですが、こんなビジネススキルがあったんですね。

それとも、苦労してきたなかで培ってきたんでしょうか。

気になりましたが、調べきれませんでした……

第5章 「睡蓮」とジヴェルニーの庭 の感想

モネは50歳で、ジヴェルニーに屋敷を購入しました。

ジヴェルニーの自宅はモネの創作にとって最大の着想源となりました。「花の庭」と「水の庭」を本格的に整備し、花壇の草花や、睡蓮のある池を描いています。次第に制作の大半は〈睡蓮〉となり、池の水面に映る色と光の抽象的なハーモニーが次々に誕生します。

「モネ 連作の情景」公式ホームページ 第5章 「睡蓮」とジヴェルニーの庭

《睡蓮》1897-98年頃、ジヴェルニー、ロサンゼルス・カウンティ美術館

こちらの作品も写真撮影可能でした。

《睡蓮》1897-98年頃、ジヴェルニー、ロサンゼルス・カウンティ美術館

雑誌でも、HPでも散々観てきたこの作品。

日経おとなのOFFの付録のカレンダーも、1月2月はこの作品。

印刷物で見たときは、渋いなあ、なんて思っていました。

ですが実物を見てみると、

立体感すごい!!

という感想を持ちました。

花びら1枚1枚が繊細に描かれていて、花そのものも、印刷物で見るよりも鮮やかだと感じました。

やっぱり、美術館で本物をみないといけないなあ、とあらためて感じさせてくれた1枚でした。

《睡蓮の池》1918年頃、ジヴェルニー、ハッソ・プラットナー・コレクション

《睡蓮の池》1918年頃、ジヴェルニー、ハッソ・プラットナー・コレクション

空は描かれていませんが、水面に写る空と光が、絵画の外の風景を想像させてくれます

わたしはモネの絵の、そういうところが好きです。

晩年のモネの作品では、主役は睡蓮ではなく、水面の光だったようです。

確かに花びらの細部まで描いていた《睡蓮》と比べると、随分違いますね。

また、白内障の影響もあり作品は変化していきます。

作品は抽象化していき、後の抽象画家たちにも影響を与えたとか。

大阪展ではこのころの《睡蓮、柳の反影》が観られるようですよ。

同じ画家が同じテーマで制作しても、描き方は変わっていくんだ、ということが勉強になります。

モネの家はおすすめスポット

ちなみにモネの家は、立派な観光スポットになっています。

睡蓮の池がある「水の庭」「花の庭」、そして「モネの家」

家の中にも入れます。

実はわたしも行ったことがあります。

ツアーに組み込まれていて行く前までは「ふーん」くらいに思っていましたが、予想以上に楽しめました。

庭はとても美しく、家は外も中も可愛らしいです。

パリ近郊に行くご予定がある方は、ぜひ立ち寄ってもらいたいです。

水の庭 2015年7月撮影
水の庭。池ごしに、モネの家が見えました 2015年7月撮影
水の庭。奥に見えるのが太鼓橋。2015年7月撮影
花の庭。2015年7月撮影
花の庭。小道の奥に見えるのがモネの家。2015年7月撮影

これも予習のときに使っていれば……追加のおすすめ予習コンテンツ

①公式ガイドブック

ミュージアムショップで、図録を買う予算がなかったので、公式ガイドブックを購入しました。

そして思いました。

絵を観る前に読むべきだった……。

モネの生涯、作品の細部の紹介、印象派の歴史、画法、おすすめの鑑賞方法など詳しく載っています。

今年はモネの大当たり年!

日経トレンディ2024年1月臨時増刊号No.518「日経おとなのOFF 2024年 絶対見逃せない美術展」(日経BP・2023年12月15日発行

1月27日からは東京都美術館で「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」があり、秋には国立西洋美術館で「モネ 睡蓮のとき」が始まります。

この先の展覧会を考えても、有効なアイテムだと思います。


②YouTube なんて美だ!ch

非公認アンバサダーである、錦鯉さんとやす子さんによる、モネの解説動画です。

親しみやすくて面白いですが、専門家も一緒に解説してくれますから、ちゃんと学べます

錦鯉のお2人もやす子さんも、音声ガイド(WEBアプリ特別版)のおみやげトラックでお話しされてるくらいですから、もはや非公認なのかは怪しいですが……笑

わたしは知らなかったのですが、やす子さんは美術館に1人で行くこともあるそうです。

やす子さんのふとした発言に、モネの絵のこともよく観てるのかな、なんて思いました。

なお、後編の動画ではモネの人生を学びながら、長谷川さんの人生も少し学べます。笑

おわりに

モネは印象派代表の画家であり、そのモネの生涯と作品に思い切り浸ることができるこの展覧会は、すごく有意義だと思います。

それに、多くの風景画を目にしていると、ちょっと旅行に行けた気分にもなります。

光を丁寧に描くモネの絵は、絵に描かれてない部分の風景も想像させてくれるからです。

この記事が、少しでもみなさんのお役に立てばうれしいです。

最後までお読みいただき、ほんとうにありがとうございました。


東京展は上野の森美術館で2024年1月28日まで。
9:00~17:00(金・土・祝日は~19:00、日は〜18:00)
2024年1月12日より
9:00~18:00(金・土は~20:00)
※入館は閉館の30分前まで。日時指定予約制

大阪展は大阪中之島美術館にて開かれます。
2024年2月10日(土)~2024年5月6日(月・休)
休館日:月曜日(2/12、4/1、15、22、29、5/6は開館)
10:00~18:00(最終入場は17:30まで)

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