刑法#54 テーマ講義①
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詐欺の二重の故意
①相手を錯誤に到らしめる故意
②その錯誤をもって誤った意思表示をさせる故意
詐欺罪の成立の仕組み
①騙す行為(実行の着手)
②対象者が錯誤に陥る。
③財産的処分行為をする(これにて既遂)
民事上の詐欺
→取り消すことができるが、善意無過失の第三者には対抗できない。なお、対抗できないだけであって、取消自体をすることはできる。
第三者の詐欺
→相手側が善意無過失であれば相手方との法律行為を取り消すことができない。
【コラム 取消後の第三者】
錯誤や詐欺、強迫の取り消しの規定はあくまでも取消前の第三者には対抗できないとするもので(もちろん、相手方の主観的要件が別途ある)、取消後の第三者とは対抗関係となる。
詐欺罪
→財物罪と利得罪がある。
→なお、人を欺罔して自己以外の第三者に財物を取得させた場合も詐欺罪が成立する。
→詐欺罪の財物(一項)には不動産も含まれる。なお、窃盗や強盗における財物は動産のみである。
【コラム 利得罪について】
詐欺罪には利得罪があるが窃盗罪にはない。利得を窃盗してしまっても不可罰となる(利益窃盗)
事例
ある者は無銭飲食をした。
①もともと代金を支払う気がなかった場合
→代金を支払う気がないのに注文をすること自体か他人を欺く行為であり、詐欺の実行の着手である。財物である料理が運ばれた時点で既遂となる。
②食べ終わってから金がないことに気づいて逃げた。
→利益窃盗となる。支払債務を不当に逃れたが、誰かを欺罔していないので詐欺罪はあてはまらない。
③食べ終わってから金がないことに気づいて、金をもってくるからと店員に告げてそのまま逃げてしまった。
→二項詐欺となる。支払債務を先延ばしにするという利得を得ている。
④無銭飲食のついでに、注文して残ったおにぎりを上着の下に隠して、トイレにいくと告げて、逃げ去った。
→トイレにいくという嘘自体はそれにより店員に処分行為をさせてはないない。しかし、金がないとわかっているのに注文している時点で詐欺の実行の着手があり、注文した料理がでてきた時点で既遂となる。
→詐欺の後におにぎりを盗む行為は不可罰事後行為となる。
不作為による詐欺
→店員が間違えて多めのつり銭を渡してきたときはわかって逃げるのは不作為による詐欺となる。不真正不作為犯として多めのつり銭につき、告知する義務があるからである。
→店員の誤りに気づいたのが帰宅後であるなら、占有離脱物横領罪となる。
→誤った振り込みがあり、それを銀行で引き出そうとしたなら(窓口)詐欺罪が成立する。
事例
ある者は衣料品店の客を装い、試着した洋服を着たままトイレにいくと偽って逃げた。
→単に嘘をついただけであり、店員に財産的処分行為をさせたわけではない。
→窃盗の手段として嘘をついたというかたちであり、詐欺罪は成立しない。
事例
ある者は他人から借りたカメラを自分のものにしようとして、持ち主にそのカメラが盗まれたと言った。
→これも嘘により相手方が処分行為をしたわけではないため、横領の手段として嘘をついただけであり、詐欺罪ではない。
事例
ある者は債権者である者に対して市役所への陳述書であると偽り、自己に対する債務免除証書に署名捺印をさせた。なお、債権者は自己の名前以外の文字を知らない。
→やはり財産的処分行為がないため、私文書偽造のまて利用されただけ(間接正犯)。詐欺罪は成立しない。
事例
ある者は債務の履行遅滞の状態にあった。自宅に取り立てにきた債権者に対して、債務者はすでに債務を履行したかのように誤信させて安心して帰宅させた。しかし、債務者には債務を履行する意思はなかった。
→債務者はうそをついたが、それにより債権者は財産的処分行為をしていないため、詐欺罪は成立しない。
訴訟詐欺
→すでに消滅した債権を訴求し、裁判所を欺いて自己に有利な判決を得て財産上の利得を得た場合、詐欺罪が成立する。
→登記申請書類を偽造して登記官を欺いて自己名義の所有権の登記を得た場合は詐欺とはならない。登記官には不動産の処分権限がないからである。この場合は公正証書原本不実登記記載罪となる。
【コラム 機械と人】
詐欺罪が成立するためには、人を欺罔して処分行為をさせなければならない。したがって、機械に対しては原則的に詐欺罪は成立しない。
→たとえば、ある者がキャッシュカードを窃盗してその現金引き出しを窓口ですれば窃盗と詐欺の併合罪となる。また、ATMで引き出せば窃盗+窃盗の併合罪となる。
→国も人として扱われると判示している。国や公共団体は財産権の主体であるからである。
→パチンコ台の玉を磁石装置を操って出玉を出そうとする行為は窃盗となる。なお、電気メーターを逆回転させて電気代の支払を免れた場合は詐欺罪となる。後者はメーターに細工をすることにより課金する電力会社の社員を欺いたと評価される。
銀行や行政機関の発行物と詐欺
→自己名義の預金口座を開設するときでも、預金通帳とキャッシュカードを第三者に譲渡する意思があった時は、これを銀行の担当者に隠して申し入れをする行為は人を欺く行為となる。
※この判例では預金通帳を財物と認めて、黙示の欺罔行為と判断している。
→パスポート発行に関して欺罔行為がある場合は詐欺罪とはならないが、航空機搭乗券に関しては財物として扱われ、欺罔により処分行為がされたのであれば詐欺罪が成立する。
→生命保険書や国民健康保険被保険者証を欺罔によって得た場合は詐欺罪が成立する。
不法原因給付と詐欺
→民法上、不法原因給付が成立するからといって、それにより詐欺罪の成立が免れるというわけではない。
【コラム 不法原因給付】
不法な行為による給付においては返還請求ができず、すなわち民法上の保護が受けられない。クリーンハンズの原則に基づくとされる。
たとえば、愛人契約に基づいて宝石を譲渡された者が愛人契約を破棄して逃げてしまったとしても、愛人契約という不法な原因に基づく譲渡であるため、民法に基づき返還請求をすることができない。
ただし、上記の場合でも詐欺罪という刑法上の観点から追及することはできる。
相当対価の交付と詐欺罪
→ある財物を50万円の価値があるとして欺き、安くするからとして10万円で売った場合、その財物の相当価値が10万円であっても詐欺罪が成立する。
準詐欺罪
→未成年者の知慮浅薄や人の心神耗弱に乗じてその財物を交付させたり不法に利益を得た者は準詐欺罪となる。
→欺く行為がないのが特徴である。
→なお、まったく意思能力のない者に欺罔行為をした場合は窃盗となる。
詐欺の未遂
→詐欺には未遂罪があり、騙す行為により実行が着手され、被欺罔者の財産的処分行為により既遂となる。
→たとえば、未成年者を騙して金員を詐取しようとしたが、親が現れそれを制止した場合、詐欺未遂となる。
→また、あるものにオレオレ詐欺を試みた者がいて、その被害者が自分の家族からの電話でないとわかった場合、犯人に対する憐憫の情から、金員を渡した場合、欺罔されて処分行為をしたわけではないが、犯人は相手に錯誤にいたらしめて処分行為をさせようとする行為があったため詐欺未遂罪が成立する。
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