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これぞまさに優秀な犬『少年と犬』馳星周

馳星周さん初読み。犬を飼っていて、おすすめ犬本として知って読んだんだけど……。
いや、優秀な犬よ、この子。と思った。
短編連作の中に出てくるのは、多聞(たもん)という名の同じ犬で、シェパードと和犬のミックスというから、いかつい犬のイメージ。
多聞がある目的から南西の方角を目指していて、途中で出会う人との交流を描いたストーリー。といっても、その人々がかなり追い詰められた状況にいるので、ほのぼのとはいえない。

そこなんだよなぁ犬の美点は、と思う。
うちの犬を見ていると、家族の中で悲しい人、辛い人がいたら必ずその人に寄りそう。いつもは怠け者だし威張ってるしワガママ犬の部類だけど、落ち込んでいるとそばに寄って舐めに来たり、隣にたたずんだり。
家族で喧嘩をしたときは仲裁に走り回る。

だから多聞は不幸や死を呼ぶ犬ではなく、最も悪い状況の人のそばにいようとする存在なんだと思う。
悲しい状況が全然変わらなくても、そこに犬がいることで心が軽くなるというか。心の荷物をほんの少し持ってくれる。

登場人物たちも、迷い犬を助けて面倒を見る優しさを残している。それってやっぱりいい面だと思う。自業自得の悪い状況でもどうしようもない人でも

優しさを与えて、返す

っていう動きが描かれているから、その人の温かさが出てくる感じがする。

犬の「可愛さ」よりも「頼もしさ」にスポットを当てた作品。
よかった~!!

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