「WILL」を観てきたよ
パーン!と銃声がして鹿がバタッと倒れる。
駆け寄っていく東出さん。
鹿の腹をナイフで裂いて内臓を素手で掻き出す。
60㎏はある鹿を冬に大汗をかきながらトラックに運ぶ。
家に着いたら皮を剝いでいく。
皮の下からは白い脂肪層がべロリと現れる。
筋肉が出ているところは所々赤い。
落とされた首がごろりと転がる。
前足が外される。
「鹿」が「鹿だったもの」になっていく。
どんどん肉になっていく。
東出さんは躊躇いなく鹿を撃っていた。
「撃った鹿を見ると可哀そうと思う、でも食べるとやっぱり美味しいと思う」
これを殺生する価値が自分にあるのか、ずっと考え続けているという。
「クズなのに一生懸命生きてる人やな」
映画の感想はこれに尽きる。
東出昌大。俳優。浮気して妻子と別れ、山でインフラなし携帯圏外の
自給自足生活をしている人。狩猟をしている。女性三人と共同生活。
数年前に世間を騒がせた不倫騒動。
妻と彼女、どちらを選ぶのかと聞かれて黙り込んだ人。
私が映画を見る前に東出さんに知っていたのはこのくらいだった。
いやクズじゃん!
メディアから逃げて山奥へ行ってそこでも女性を囲う。
ちゃらんぽらんもいいところ。
その上こんなドキュメンタリー映画まで作って
結局芸能界に未練タラタラじゃん!!
でも主題歌を聞いてみたら…あまりに重い。
MOROHA「命の不始末」
だから気になって映画を観に行った。
映画は山での狩猟生活を軸にしながら、
・生きるために殺生すること
・都会の生活と田舎の生活の対比
・矛盾したことについて考え続けること
を描いていた。
映画の中の東出さんは私が想像していたより普通の人だった。
というか、私の10年来の友達に似たような人がいる。
その友達のことをRさんと呼ぼう。
Rさんは明るくて人好きする性格だ。
子供みたいに自分に素直で、その分無神経なところがある.
小さなことから大きなことまで、私はRさんに何度か傷つけられた。
本人に悪意がないのはわかってる。
Rさんは意志が強くて、自分がやったことで首を絞められても
ちょっとやそっとじゃ意思を曲げない。
聞くぶんには美しいかもしれないけど近くにるこっちは大変だった。
自分の首を多少絞めても大丈夫!な人だから
友人程度を傷つけても本人は気付かない。
傷ついたと伝えるとごめんとは言う。
でも本人は変わることはない。
性格が悪いのではなく、
他人に嫌われようが呪われようが
自分に素直でいたいんだろう。
東出さんもそういうところがある人なのかもしれない。
自分のせいで妻子や所属事務所、仕事関係者を傷つけて裏切って
自分も記者やアンチに追いかけられて鬱状態になって
一度は山に逃げて事務所を辞める。
それでも狩猟生活が馴染むと続け、やりたい仕事の俳優も続けている。
むしろ山の生活が演技の肥やしになっているという。
グロいなぁ…
こんなに各方面に残酷に振る舞ってでも自分の意思は曲げないんだ。
やりたいことはやるんだこの人!
この映画は副題が「残酷すぎる世界への意思」とあるけど、私はどちらかというと
「自分のずるさや残酷性とどう向き合うか」
だと思った。
可哀そうと言いながらも鹿を撃ったり
その鹿を食べてやっぱり美味しいと思ったり
そのくせ自分の子供が撃たれて食べられたらとかは想像もしたくないと言ったり
自分が殺されそうになったらきっとみっともなく泣きわめいて命乞いすると言ったり
残酷だけど優しいし弱い。
矛盾しながらしっかり人間なんだなと思った。
映画の中で印象に残ったシーンがある。
そのシーンを見て私は
東出さんは自分の残酷さを自覚するために狩猟をしているのかなと思った。
残酷な自分を分かりやすく映し出してくれるのは
都会よりも山の狩猟生活なのかもしれない。
東出さんを取材に来た週刊誌の記者も登場した。
人の秘密を暴くこの仕事が時々いやになると言っていた。
じゃあどうして続けているの?と質問されたら
「お金が必要だし、仕事だから」と言っていた。
仕事だから。
そう言ったその人の表情は少し苦そうに見えた。
残酷性は自覚しないと自分を苦しめるのかもしれない。
この映画の最後は、わかりやすい答えはなく、矛盾していることを考え続けていく、と〆られている。
後半が多少物語的に描かれすぎている気があるし140分と多少長いけど、色々な示唆に富んだ骨太の映画でした。
ぜひ見てみてね。
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