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STANDALONE!成行!       序章 じっちゃんはマニアック!第二話

  2024年6月某日、日曜日。成行は午前10時を過ぎても起きずにベッドで寝ている。何故か隣には祖父により命を与えられた等身大リアルドールのミイアが寝ている。
 「うーん狭い、ん?なんだミイアの奴又俺のベッドに潜り込んだな。出ていけ狭い!。」
 「いやよ!棺桶は寝心地悪いんだもん、お前が出ていけ。」
「これは俺のベッドだ。ふざけるな!。」

二人がベッドでもみ合っていると成行のスマホのラインにメールが入った。「ん?友達が少ない俺にメールとは奇跡的だな。どれどれ。」メールの差出人は成行の元クラスメイトで山下高太郎という。
クラスメイトといってもほとんどしゃべったことが無いクラスでも地味な男である。写真が添付されていた。
「何々。久しぶりだな成行、ってなれなれしいな。親しくないのに。ん?これは・・・。」添付されていた写真を見ると女性とのツーショット写真だった。「なんだこりゃ。 (* ̄- ̄)ふ~ん派手な化粧の女だな。どうせ素顔はブスに決まっている。」メールを読むとマッチングアプリで知り合ってこれからデートなんだ。と書かれていた。かなりの件数にメールしたらしくアドレス欄がブランクになっていた。
「あの地味な生き地蔵とか言われていたアホに彼女ねえ。自慢したくて仕方がないんだな。無視したら妬んでいると思われるから最大限の賛辞を送ってやろう。ほれ。」成行は生きている等身大リアルドールのミイアとベッドの中でたった今撮影したツーショット写真を送った。
「これで二度とメールしてこないだろう。ミイアは見た目だけは芸能人顔負けだからなあ。敗北を味わうがいい。」
 成行ははっきり言って性格が悪い。他人の幸せなどどうでもいいのだ。
それゆえミイアとのベッド内のツーショットを送り付け、嫉妬に狂えば二度とメールしてこないと考えたのだ。しかし・・・
「ん?又ラインだな。もう!ブロックしてやろうかな?。ん?」成行はメールを読んだ。「何々、凄いかわいい子じゃないか?どうしてベッドの中なんだ?!どういう関係なんだ???うるせーな。ようし。そんなの一晩中愛し合ったからに決まっているじゃねえかよ。お前こそその厚化粧とやりまくっているんだろ!お似合いだぜっと。送信。」性格の悪い成行は嘘八百を並べ立てた。
「おい!成行!おまえふざけんな!私がいつお前と愛し合ったんだよ!この嘘つき。」「うるせえな。いいだろちょっとぐらい。馬鹿な元クラスメートに賛辞を送っただけだろ。」「それのどこが賛辞なんだよ。!」
怒りが収まらないミイア。見た目と違って気が強いようである。すると又山下からメールが届いた。「何々、本当だな?じゃあ今度ダブルデートしようぜだと。うざいなあこいつ、よっぽど俺の返信が気に入らなかったみたいだな。」「当たり前でしょ。人の彼女を厚化粧呼ばわりしたんだから怒るのは当り前よ。」成行は山下に返事を送った。「実物は写真の100倍かわいいぜ。それでもいいならダブルデートしてやっても良いがお前のおごりだぞっと。返信。ってなわけでミイア!彼女のふりよろ~。」ミイアはまるで不動明王みたいな顔で仁王立ちしている。「はあ!ふざけんなボケ。絶対いやだわ。」「おい!頼むよ、このくそ生意気な馬鹿野郎に死ぬほどの屈辱を味わわせてくれよ。」「何で私がお前のような悪魔に付き合わなきゃなんねえんだよ!お前の祖父から命を与えられていなかったらお前なんて100回はみすてているわよべええええ。」ミイアはあかんべえをして又寝てしまった。「まずい・・・もう山下に返事しちゃった。まあいいやいざとなったらドタキャンしよっと。でもあいつのアホ面見たいからミイアに又頼んでみるか。」成行は本当に性格が悪い。

 成行は遅い朝食を食べてミイアに再度ニセデートを頼み込んだがミイアは口をきいてくれなくなった。「ご主人様をなめやがって!裸にひん剥いてやろうかな。」物騒な事を言いながら一週間分のたまった郵便物を確認していると見慣れない渋い和紙で出来た封筒を見つけた。「なんだこりゃ。どれどれ。」差出人は行成宗家となっていた。「漢字ばっかで読めない。んフリガナ付いている。」内容はかいつまんで言うと祖父から話を聞いただろうからさっさと修行に来いという内容だった。「ふん、誰が行くか。」封筒を捨てようとしたら一枚の写真が落ちた。「写真だな。え!すごい美人の巫女さんの写真だ。え!名前はが麗美(れみ)ちゃんか!俺の彼女にしてやってもいいな。修行はこの巫女さんがつきっきりで手取り足取り修行を手伝うって!。やっぱ行こうかな!?いやいやいや!俺には北条美里さんっていう心に決めた人が・・・でもあくまで修行だから浮気じゃないし・・。場所も割と近いな。よし、午後から行ってみるか。」めちゃくちゃ不純な動機で宗家からの呼び出しに応じる事にした成行だった。

1時間後、電車バスで山奥にある行成宗家の神社”周防神社”に到着した。「ふう、地図で見ると近いのに電車バスで1時間か?後で交通費請求してやろう。」せこい成行である。神社の鳥居をくぐると古い雰囲気のある赤い屋根の小さな神社が立っていた。鳥居の先の賽銭箱の前に巫女服に身を包んだかわいい少女が立っていた。「お待ちしていました成行様。親方様がお待ちです。こちらへどうぞ。」大変な美女だが無表情である。「おお!写真の麗美ちゃんだ やっほー。」軽い感じで挨拶して手を挙げる成行。無表情な麗美は成行の右手を握って奥の部屋まで引っ張るように案内した。「え?手が氷のように冷たい・・・でも柔らかい・・・もしかして麗美ちゃんって等身大リアルドール?。じっちゃんの他にも命を与える能力持っている人いるんだな。100年間途絶えていたんじゃなかったのかな?。」ふと麗美を見ると歩くたびに胸が揺れる。しかも巫女服が薄いので乳首が透けて見える。「は~。ドールとはいえよく出来ているな。こんなに綺麗で魅力的ならドールでも全然OKだな。」良からぬことを考えながら奥の部屋に通された。奥の部屋は電気が通っていないらしくろうそくの明かりしかない。奥の一段高い場所の高そうな座布団の上に親方様と呼ばれているがまだ若い色白の男性が座っている。やせ型だが背は高く、細面の純日本風のイケメンである。年齢は23歳で家業の神社の神主をやっている。成行は麗美が敷いてくれた座布団の上に正座した。「よく来てくれた。私が第142代宗家の主”行成鷹成(いきなりたかなり)です。」「行成成行です。話は祖父から聞きました。」ややかしこまった様子の成行。「あのー。一つ質問してもいいですか?。じっちゃんお話だと宗家は100年前に途絶えたそうですがあなたがおられるという事は途絶えていませんよね。麗美さんも命を得た人形のようですし私に用はないと思うのですが。」
銀は無表情で答える。「ほう、流石ですね。麗美が人形だと見破るとは。いかにも麗美は人形です。しかし私は宗家の嫡男ですが生まれつき病弱で修行もままならず麗美一人に生命を与えるだけで精一杯です。100年前の当主は歴代でも最強と呼ばれた方で100人もの人形に生命を与え、多くの心傷ついた民を救ったそうです。しかしその次の代から能力が何故か劣化し、最低限の能力しか継承されなくなりました。仕方がないので代々才能ある子孫が現れるまで修行の場を維持し、辛抱強く時を待ったのです。」「なるほど、才能ある子が生まれるまで最低限のインフラを宗家が代々維持してきたという事ですね。」成行はなんとなく理解したようだ。「実はそれだけではありません。行成家は人の心を癒すだけでなく人間に激しい恨みを持ち、復讐を遂げようとする邪神に取りつかれた等身大人形の征伐も行ってきました。」「なんだって。そんな物騒な魔物がいるのですか?。しかも代々征伐をしてきただなんて!。信じられないです。」銀は真剣な表情で話を続ける。
「ここ100年間は幸いにも大きな災いは起きませんでした。それは100年前の当主がものすごい能力を持っていたので邪神の封印に成功したからです。しかしその封印ももう限界に近いそうです・・・。」銀はそこで言葉を止めた。「一方的な話ばかりですみませんでした。あなたにも生活はあると思います。もちろん慈善事業ではないので生活は保障します。身分も国家公務員と同等で宮内庁直属の組織になります。」「はー。ってことは俺が官僚みたいな身分になれるのかな?。」「修行に耐えて能力が覚醒すれば準官僚並みの待遇が保証されます。何しろ陰陽師の一派ですから平安時代なら上級貴族です。」「能力に覚醒すればマスコミに引っ張りだこで女優と付き合う事も夢じゃないかもですね。しかも100人の等身大ドールに生命を与えれば美女ドールと毎晩愛し合う事も可能ですよね。」「ドールには各自個性があります。例えて言うならドールが車なら行成家はガソリンスタンドみたいなものなので赤の他人です。愛し合う事も可能です。私もそうしています。」銀はちょっと顔が赤くなった。「分かりました。世の為人の為にこのお話お前向きに検討します。」成行は不純な動機ではあるが思わぬ好待遇の話にすっかり乗り気になっていた。「何度も言いますが厳しい修行に耐えて覚醒したらのお話です。どうかお忘れなく。修行の案内はこの麗美が担当します。」成行は麗美を見る。透けた巫女服がろうそくの明かりで怪しげな雰囲気を出しており成行は股間が熱くなるのを感じた。「いかんいかんいかん。あの子は宗家の当主の巫女だ。変な事を考えてはいかん。」そんなことを考えながら夜10時に家路についた。
 

 同日同時刻の午後10時、横浜ランドマークタワーの頂に大きな扇子を持ち、白髪のショートボブに白と赤の巫女服を着た綺麗な少女が立っていた。一般人が立ち入る事が出来ない場所に何故?どうやって侵入したのか?。赤い口紅と赤いアイシャドウがまるで何か邪悪なものを思わせるかのような雰囲気を漂わせている。町の夜景がまるでひっくり返した宝石箱のようである。その少女はにやりと笑いながら夜景を見つめている。この少女の名は”抱狐”だっこと呼びます。
 「聞こえる・・・。人形達の悲しみの叫びが・・・憎しみが・・・恨みの声が・・・聞こえる・・・・心の汚れた人間たちの邪な欲望の声が・・・もっと欲しいと叫んでいる・・・・。」その少女は突然タワーから飛びおりた。自殺か・・・・しかしタワーの周辺には誰も落ちてこない・・・。いったい何者なのだろうか?

 翌朝6時半、いつもならミイアがベッドに潜り込んでくるのにその日の朝はおらず棺桶から出て来た。「おはようミイア。」さわやかそうな笑顔で挨拶するもミイアはあからさまに無視した。「ミイアの奴まだ怒っているのかな。」成行は朝食を取りながらネットニュースをスマホでチェックした。「ん?何々、横浜みなとみらいで殺人事件!?被害者はエリートサラリーマンか。物騒だな。ん?部屋の中から等身大リアルドールが盗まれていた?。おいおい、等身大リアルドール強盗か?人を殺してでも奪いたくなるほどのモデルなのかなあ?。俺も気を付けないとな。」朝から等身大リアルドール強盗殺人事件?っぽい事件の報道があり、オーナーとなった成行も明日は我が身かもしれないと思ったがそれ以上の事は考えなかった。
 職場のリサイクルショップの朝の朝礼を終えて成行は先輩社員の北条美里と一緒に倉庫の整理を行っていた。6月とはいえまだ梅雨入りしておらず、倉庫内で成行と美里が二人だけで在庫チェックを行っていた。
「暑いわね。はいこれ。」美里は白いTシャツ姿で首にタオルをかけておりスポーツドリンクを成行に手渡した。「ありがとうございます。え?!」美里のブラが汗で透けて見える。下半身もG短パンでかなりラフである。足とヒップラインが引き締まっており綺麗にまとまって見える。ドキドキする成行。成行は工業高校出身で女子生徒は皆無の3年間だった。それゆえ女性に免疫が無く、美里のラフな姿は目に毒であり理性を抑えるのも大変な様子である。
「あ~今変な事考えたでしょ。セクハラだわー。」「いえいえいえいえそんなことは決して・・・」言い終わらぬうちに二人は支店長に呼び出された。「もう何よ!忙しいのにさ。どうせまた難癖つけて説教でもする気ね。あのおっさん。」支店長室に二人は呼び出された。

「忙しいのに急に呼び出してすまなかったね。って北条君いくら暑いからと言ってその恰好はだめだよ。」そういいつつ美里の胸を見る支店長。
「急な話ですまないが明日から2日間本社のリサイクル工場に応援に行ってくれ。成行君は工業高校出身だよね。うちの工場に興味があると言っていたことは覚えているよ。ぜひ応援に参加して工場を見てきなさい。」「本当ですか!?嬉しいです。ありがというございます。」 続く


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