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人のいない楽園・・・第四章     1982 第三話

 1982年5月某日。亜希子とのデートから戻った2024剛は自宅の本屋にある二階の自分の部屋に戻った。すると六郎が2024剛の布団で寝ていた。隣には等身大リアルドール美里がいる。等身大リアルドールが六郎にバレた事を悟った2024剛はあわてて六郎を起こした。
「おい、起きろ。」2024剛は六郎の体を揺さぶったが起きない。
「てめえ!散々仕事をサボってキャバクラで遊びまくっていた上に今度は俺の女を寝取りやがったな!。覚悟は出来ているか!。解雇だけでは済まさんぞ。」未来の恨みも重なったため2024剛は六郎の顔を全体重をかけて踏んだ.「いててててて。剛!てめえよくもこの俺のハンサムな顔を踏みにじってくれたな。」激怒して起き上がる六郎。すると美里ははだかだった。「てめえ!まさかやったのか!。」「やった?これやれるのか?。」「いや、今のはなんでもない。」六郎はこのドールの事をよく知らないのでやる事が出来るとは思っていなかったようだ。「てめえ、よくも俺の女を傷ものにしてくれたな!お前の彼女に言いつけてやるからな。」「それだけはやめてくれ、傷物になんかしていない。おっぱい触って抱き着いただけだ。」「だきついただと。やめろ!色移りするだろうが。」「色移り?。」訳が分からない六郎だった。
「てめえ、このおとしまえどうつけてくれるんだ ああ!。」
「う!なんかすごい迫力だな。下手なやくざ顔負けだなおい!。お前キャラ変わったな。」
2024剛は美里に服を着せてまたクローゼットに隠した。数分後落ち着いた2024剛はあらいざらい事の顛末を六郎に話した。
「なんだその都市伝説みたいな話は。でもお前のキャラ激変とあのおかしな車とこの人間としか思えない精巧なソフトな人形なんて今の技術じゃ不可能だしな。信じがたい話だがそれが本当ならすべて納得できる。俺の未来の話以外はな。」半信半疑な六郎はその信じがたい話をどうしても受け入れる事は出来なかったが話をするときの2024剛の目があまりにも真剣だったのでそのことが気になり、その後すぐに家に帰ったがその日の夜は眠る事が出来なかった。

 翌日の日曜日2024剛は美里をフェラーリの助手席に乗せてある場所に向かっていた。「ふう、昨日は美里の貞操の危機だったな。あれからかあちゃんに六郎を留守中に部屋にあげるなと言っておいたけど心配だから今のうちに美里と体験しておくか。美里も若いイケメンとやった方が幸せだろうしな。」
2024剛は若返った今のうちに美里と体験をしようとラブホに向かっているのだ。ラブホに到着した2024剛は受付のばあさんに現金を支払ってホテルに入った。
 「この時代のホテルは受付がいるの忘れていた。でも人形とバレなかった。よかった。」一階の一番駐車場から手前の部屋を選んだので誰にも持ち込む所を見られずに済んだ。2024剛は早速休憩がてらTVを見ていた。「ヤンヤン歌うスタジオか。懐かしいな。原田伸郎若!。」いちいち1982年のTV番組にツッコミを入れる2024剛。「お!ベータビデオデッキだ。いずれVHSに淘汰されるんだよな。この時代のエロビデオ見ていくかな?」いちいち見るものすべて懐かしい2024剛は美里を放置したままだった。「おっといけねえ。まずは美里を風呂にいれて六郎の薄汚いアカを落とさないとな。」美里を全裸にしてウレタンマットに寝かせてボディソープで念入りに全身を洗った。「ふう。こんなもんでいいかな。しかしよく出来ているよな。なんだかムラムラしてきた。若いからバイアグラ無しで一晩で10回はいけるかな?。」2024剛は若帰ったのをいいことに早速プレイを開始した。「まずはソープランドごっこだ。」30分後ソープランドごっこに飽きた2024剛はベッドに美里を寝かせて正上位、バック、その他あらゆる体位を試した。「さすがに還暦過ぎると出来ないプレイもあるからこの体のうちに楽しんでおこう。」20歳の最も元気な時期に戻った2024剛は一晩中地獄のケダモノのように美里と愛し合った。
 疲れ切った2024剛。床には無数のコンドームが散乱する。「まずい!5箱使い切ってもうこの部屋の在庫が切れたようだ。でもまだ足りない。」ちなみにひと箱24枚入りである。どんだけ絶倫なのだろうか!さすが将来の大物である。あっちも大物であった。この男一晩で100回以上やっている。
「今回はこれが潮時だな。また明日来て楽しもう。今度は20箱は用意しよう。」徹夜でやりまくった2024剛はホテルをチェックアウトしてフェラーリで出て行った。助手席の美里はみるからにうんざりしたような表情に見える。 
 国道を走って信号待ちをしていたら道路の左側の歩道に亜希子が妹と一緒に歩いていた。しかし2024剛はその様子に気が付いていない。「あ!おねえちゃん。フェラーリだよ。」「あ!ほんとだ。もしかして剛君。」手を振ろうとした瞬間 助手席の美里が見えた。人間にしか見えない精巧なこの時代ではありえない等身大リアルドールの美里を見た亜希子はものすごいショックを受けてしまった。「そんな・・・剛君に彼女がいたなんて・・・。」亜希子の目に涙が込み上げて来た。しかも有名なホテル街からフェラーリが走って来たので亜希子はすべてを察したような表情だった。「剛さんがまさか。そんなことをするようには見えなかったんだけどな。」その場で涙をこらえて立ち尽くす亜希子をそっと抱きしめる妹であった。


 2024年5月某日1982剛は秘書の松本理沙と一緒に津酔組の事務所で会議?を行っていた。「さっきはうちのバカを許してくれてありがとよ。あいつはきょうでの現場でただで死ぬほどこき使ってやってくんな。死なない程度に飯食わせるだけでいいからよ。」「親分さん、ご厚意ありがとうございます。」頭を下げる1982剛。「ところできょうでえにお願いってのはな。うちの若い衆が出所したんだよ。でも行く当てがねえからきょうでえの現場で面倒みちゃあくれねえかい?。」1982剛は少し驚いたが今の状況が分からないので理沙に尋ねた。「松本さん。親分さんああいっているけどどうしようか?。」「はあ?。そんなことは大頭領が決めてくださいよ。」「そんな冷たい事言うなよ。どうすればいいか教えて?。」理沙は困惑した渋い表情で答えた。「もう!しっかりしてくださいよ!。日本の若い子はすぐ辞めちゃうし外国人やとっても教育が大変だし入国管理局がうるさいから親分さんに若い衆お世話になろうかな?。とか言っていたじゃあありませんが!。作業員の寮はがら空きでしよ。昨日の事ですよ。しっかりしてください。」「そそそそそうだったね。松本さん。冗談ですよ冗談。」苦笑いする1982剛。「親分さん。ご安心ください。うちの寮がら空きだから心配しないで。」権三郎は大喜びした。「いやーきょうでえなら絶対そう言ってくれると思ってたぜ。おい、早速ムショ帰りの若い衆連れて来い。きょうでえに挨拶させよう。」
 数分後 出所した組の若い衆5人がやって来た。「押忍!。大頭領!」見るからにガラの悪い狂暴そうな若いが体のいい男たちがやって来た。入れ墨傷は当たり前でなぜかスキンヘッドの者までいる。「てめえら、このお方が男の中の男!大頭領こと山城剛社長様よ!てめえら明日から気合入れて働けよ。」「押忍、この命大頭領にお預けいたしやす。」全員深々と頭を下げる。「いやいやいやいやそこまでしなくていいから。人手不足らしいからうちも助かるみたいだし。」「聞いたかてめえら。でかい男ってえものはな。謙虚で威張らねえもんなんだ。しっかり見習え。」「親分さん、念のために聞いていいですか?この人たち何をおやらかしになったので?。」「そうだよな。わるかったなきょうでえ。人を雇うんだからそれぐらい知っておかねえとな。何大したことじゃねえよ。こいつは喧嘩のはずみで一人殴り殺しちまってな。こいつは暴走族がうるせえってんでダンプカーで20台ほど族車を轢きつぶしただけだ。こいつは貢いだ女に逃げられそうになった腹いせにレ〇プしまくって回しちまって、こいつは・・・」「もももももういいです。私が悪かった。下手な詮索はだめですよね。」1982剛は顔が真っ青になった。「さあ今日はめでてえ日だ、出所祝いと大頭領こと山城剛社長への感謝の会をこれからおっぱじめようぜ!。おい!酒と女を用意しろ!。」
「まってましたぜ親分!。」どうやら宴会が始まるようだ。
「大頭領、私は今日はこれで失礼します。」秘書の理沙があきれた表情になり帰ろうとすると。「松本さん、帰らないで。一人にしないで。俺一人じゃ何もできないんだ。」
 「はあ!私に夜の酒の接待までさせる気ですか?。契約違反です。帰ります。」1982剛は理沙のハイヒールにしがみついたがそのまま引きずられて引き離された。
 「きょうでえ。女が一人減ったぐらいでわめくなよ。本当にきょうでえは女好きだよなあ。おい。今すぐ追加の女を手配しろ。」「ヘイ親分。」「いやいやいやそういう問題じゃなくて・・・。」
 「今日はきょうでえが抱きてえって言っていた太った黒人女も呼んであるぜ。喜んでくれや。」
「ここ黒人女?未来の俺ってどんだけストライクゾーン拡大しているんだよ全く!。」
人は変わるものとはよく言ったものだがここまで42年で激変する人も珍しい。結局朝まで1982剛は親分たちと飲み明かした。

 翌日、2024年5月某日、二日酔いでふらふらになりながら現場で全作業員を集めて定例の月一朝礼を行った。
「ううう、気持ち悪い。しかもこの年で一晩中若い女の相手したから足腰ふらふらだ。しかし初めての女体盛りもごちになったし、夢のような時間だった。」演説台の上で薄ら笑いをする1982剛。
「それではこれより偉大なる我らが指導者 大頭領こと 山城剛社長より諸君らに挨拶がある。全員敬礼!。(`・ω・´)ゞ」「偉大なるわれらが英雄、指導者、親方様、支配者、山城剛 大頭領。」全員が起立して右手を高々と上げる。その様子にビビりまくる1982剛。「みみみみなさんおはようございます。本日は晴天なり。皆さんいつもお仕事ご苦労様です。」頭を下げる1982剛。しかし会場は何故かざわついている。「今日の大頭領なんか変だな。」「頭なんか下げないお方なのになあ?。」「ねぎらわれるほど仕事してねえのになあ?。なんかおどおどしているな。具合でも悪いのかな?。」
 場内がざわつく。「静粛に!大頭領、どうなさったのですか?。いつもみたいに厳しく厳格にやっておくんなさいよ。」
 副社長の氷室が心配になって演説台に来た。
「今日の大頭領はお体の具合が悪いのに押してここに来て下さったのだ。皆感謝するように。」朝礼は早々に打ち切られた。

 しかし集まった作業員たちは不安を隠せなかった。「なんだか今日の大頭領は情けなく見えたな。どうしちまったんだ?。」
 その時、作業員のリーダー格の男がハッとなった。
「分かった、あれは芝居だ!本当はものすごく怒り猛り狂っているに違いない。俺たちがあまりにもだらしがないので今度はわざと情けないふりして様子を見ようとしているんだ。なめた態度を取る奴をあぶりだして後で粛清しようって魂胆だ。」
「なるほどー。さすが大頭領だ。ずるがしこいな。そんないやらしい作戦を思いつくなんて無駄にIQ高いな。その手には乗らないぜ。」
 その日を境に現場作業員達は皆、人が変わったように真面目に働くようになった。
 数日後「大頭領!さすがですね。作業が遅れていた現場ですがあの演説の後急に作業員皆やる気を出して作業の遅れがかなり改善されました。」
「えええええ?何でだ?。」理沙の報告とは裏腹にその朗報が信じられない1982剛だった。

 1982年6月、ホテルの一件から亜希子と突然連絡が取れなくなった2024剛、電話をしてもいつも亜希子は出ないのでさすがに変だと思った2024剛は直接亜希子の短大に会いに行った。しかしスマホもSNSも無い時代なので連絡手段がない。そこで暇さえあれば短大に亜希子に会いに行っていた。
 校門の前でストーカーのように待ち続ける2024剛。するとようやく亜希子の姿を見つけた。駆け寄る2024剛。
 「亜希子ちゃん、久しぶり、やっと会えたね。」しかし亜希子は無視して通り過ぎようとする。「ちょっとまってよ。」つい大声をあげて亜希子の腕をつかむ2024剛「いたい、放してよ。」2024剛の腕を振りほどいて振り向いた亜希子の目は涙目になっていた。

第三話 END
 


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