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STANDALONE!成行!       序章 じっちゃんはマニアック!第一話

昭和20年9月末頃、ミャンマー某所、捕虜となった”行成 成鉦(いきなりなりかね)は暗い牢獄でイギリス軍の捕虜収容所に収容されていた。すでに終戦を迎えており引き上げ船の迎えを待っていたがいつまでたっても迎えは来ない。「戦争が終わって2か月弱か、やる事も無いし長く感じるよな。」「正式に降伏の調印したらしいけどまだお迎えは先らしいぜ。まだ戦っている日本兵も少なくないそうだ。いつになったら帰れるのやら。」ため息をつく成鉦。「日本は負けたんだよなあ。戻っても裁判にかけられて下手すりゃ死刑もありうるらしいし・・・お先真っ暗だよなあ・・・日本はどうなっちまうんだよ。」成鉦たちは不安でいっぱいだった。捕虜収容所の病院は日本兵の入院患者でいっぱいで夜中にはうめき声で眠れないほどである。「俺たちは軽いけがですんだだけ幸運だよな。この前病院の掃除に駆り出されたんだけどそりゃひどいものだった。生きて戻れても結婚どころかまともに生活するさえ難しいだろうな。」「彼らのおかげで助かったような俺らの命だ、俺に出来る事なら何でもしてあげたいよな・・・。」成鉦たちは自分たちだけほぼ無傷で助かった事に罪悪感を感じ始めていた。
 昭和32年10月、あれから成鉦は無事に家に戻り婚約者と結婚し二人の男の子を出産した。成鉦は医者ではないが医療従事者として病院で働き、元傷病兵たちの為に一生懸命に働いた。埼玉県の某国立病院で入院患者の世話を続けていた成鉦だが、ある事に気が付き始めた。「皆目が死んでいる。戦死したと思い込んで元婚約者が別の男と結婚したり顔にやけどを負って結婚をあきらめたり、それどころか売春婦にさえ相手にされない元兵士も少なくないらしいな。」「何とかしてあげたいけど俺らにはどうしようもないかなあ?。」成鉦がため息をついていたらふとある新聞記事が目についた。「何々?。南極越冬隊の記事か。日本も南極に基地を作ったんだな。喜ばしいな。」成鉦はそのめでたいニュースを食い入るように読み込んだ。「え!南極一号?。」いわゆるダッジワイフの記事であった。「これだ!。」成鉦は早速このドールを数体自費で購入した。「これなら彼らの相手が出来る!。」成鉦は退院して一人暮らしをしている元傷病兵に安いレンタル料で自費で買った南極1号を貸し与えた。中には涙を流して喜んだ人もいたらしい。「好き好んでこんな姿になったわけじゃない!日本の為に必死で戦って傷ついたのに誰も助けないなら人形に助けてもらうしかない!。」成鉦は副業で南極1号を安価でレンタルする事業を始めた。

 1979年昭和54年、日本のオリエンタル工業が画期的なドールを開発した。
微笑と名付けられた等身大トルソードールが開発された。戦争が終わっても心の傷は癒えす、元傷病兵も50代になっていた。孤独に悩まされていた元傷病兵たちもこの商品に救われた人は少なくなかった。「これはいい、早速わが社も導入しよう。」ダッジワイフレンタル会社をすでに立ち上げて従業員も数人だが雇い入れるようになった成鉦は南極シリーズに代わってオリエンタル工業の製品に切り替える事を決意した。「戦争を無傷で生き残った俺が出来る事を、俺の代わりに傷ついてくれた元傷病兵の皆様の為に出来る事を精一杯やろう。」世間からは如何わしい商品を扱う会社とののしられながらも成鉦は必死で事業を継続していた。

2024年6月、成鉦は95歳になっていた。会社のダッジワイフレンタル会社は親戚に引き継いでもらいすでに引退して数年が経過した。すでに老人施設に入居が決まったため成鉦の自宅は親族で片付けることになった。行成 成鉦の孫 成行(なりゆき) もこの片付けに駆り出されていた。成行は今年高校を卒業して大手リサイクルチェーン店の店員として数か月勤務している。日曜日だけの手伝いだが欲しいものがあれば持って行っていいという言葉につられてやって来たのだ。「ゲーム機とかはさすがにないよなあ・・・エロDVDぐらいあればラッキーってとこだな。」行成成行19歳、彼女いない歴19年で初恋の相手は呪術回戦の釘崎野薔薇である。成行は二階の祖父の書斎に入った。「へっへっへ、ブルーレイプレイヤーにノートPCめっけ!。いただきい。」段ボールにAV機器を詰め込む成行。すると奥のクローゼットに鍵がかかっているのを見つけた。「何か気になるな?。エロDVDが入っているに違いない。」しばらく鍵を探す成行。すると 秘密 開けるな!特に成行は絶対開けるな!めっ! と書かれた缶を見つけた。「名指しで開けるなだと!俺に開けろって言っているようなもんだ。」缶を開けると案の定鍵が入っていた。「俺の名前が書かれていたという事はクローゼットの中身は全部俺のものだ。」成行は鍵を解除して早速クローゼットの扉を開けた。すると巨大な棺桶のような木箱が立てた状態で出て来た。「なんだこりゃ?。ドラキュラでも入っているのか?。」成行はおそるおそる棺桶のような木箱を開けた。すると大変美しい若い美女が入っていた。白いドレスを着ており、黒い瞳が輝いている。巨乳で90cm近くありそうなバストに理想的なウエストラインがドレスの上からも見える。「人間なわけないよな。ん?」成行は説明書のような紙を見つけた。「何々!?オリエンタル工業株式会社 ヘッド番号55番  ミイア?なんだこりゃ?。ん?未開封だな。」

説明書を読んだ成行はこの等身大ドールがアダルト商品であることをすぐに理解した。「すごいな。人間と区別がつかないや。」成行はミイアの胸を触った。「すげえ!昔ふざけて母ちゃんの胸を触った時の感触と同じだ!。」するとどこからともなく若い女性の声がした。「触るな変態!!。」「え?。」しかし部屋には成行以外誰もいない。「空耳だな。よし!このドール俺のドストライクだからもらって帰ろう。レンタカーで来て大正解だったな。しかし重いなあ。」「なんだと!重くないわよ!」「え?又声が聞こえた。疲れているのかなあ?。」成行は片付け業者に手伝ってもらって木箱入りの等身大ドールを下まで運んでレンタカーのバンに乗せた。「成行!なんだそれは?。」兄の成信が尋ねる。「でっへっへ。極秘だよ。」結局成行は等身大リアルドールとAV機器だけを持ち帰ることにした。
 成行はワンルームマンションで一人暮らしをしている。二階の角部屋に住んでいる。四苦八苦しながら棺桶のような木箱を自室に運び込んでシャワーを浴びた後早速ミイアを開封した。すると箱の中に一枚のDVDが入っていた。成行へと書かれた封筒に入っていた。「やっぱり俺宛でいいみたいだな。なんだろう。?」PCでDVDを再生すると成鉦が画面に映った。「お!じっちゃんだ。日付は先月だな。」画面の中の成鉦がしゃべりだした。「これを見ている頃は私はすでに施設に入った後だと思う。成行よ突然このような話を聞いても信じられないとは思うが大切な事なので最後まで聞いてほしい。」真剣な眼差しの成鉦。「行成家は実は陰陽師の一派の家系で平安時代から続く由緒ある家系なのだ。しかしその能力は100年前に一度途絶えている。才能ある子孫に恵まれず、厳しい修行をしても十分な能力が身につかなかったからだ。しかし私が見つけた古文書によると途絶えて100年が経過した今年、子孫の一人が覚醒するという文言を見つけた。条件は6月生まれの20を迎えていない男子、一族の中で当てはまるのは成行おまえだけだ。この最新型等身大リアルドールは私の念が籠っている。私が生きている限り命を宿しお前を支える役目を与えている。名前はミイアだ。丁度オリエンタル工業の新作のこの子の名前もミイアだったのでこの子に決定した。実は私の初恋の人の名だ。」成鉦はちょっと赤くなった。「じっちゃんの初恋?わりとどうでもいいな。ばあちゃんに言いつけてやろう。」成鉦の話は続く。「行成家はつくも神の召喚を行う陰陽師の一派で人形に生命を与えることができる。私は能力が低いのでお前に譲ったミイア一体にだけ生命を与えることが精いっぱいだった。」「え?この人形に生命があるのか?。」成行はミイアを見つめた。「何見てんのよ!。」「え!人形がしゃべった?。自立AIでも仕込んでいるのかな?。」成鉦の話は続く。「ミイアの元で修行して行成家を陰陽師の一派として復活させてくれ。そして世の心が傷ついた人々を救ってくれ。」その言葉を最後にDVDの画像が終了した。動画を見終わった成行は暫く考え込んだ。にわかに信じがたい事ばかりだったので頭の整理がついて行かなかった。「さっぱりわからん。いきなり陰陽師の子孫と言われてもなあ。何をすれないいんだ?。それにこのミイアっていうドールだがAIが仕込まれているのかしゃべるようだし・・・。」又成行は考え込んだ。するとミイアが又しゃべりだした。「あなたの祖父成鉦は戦争で傷つき、恋も出来なかった元傷病兵や障害者を救うために会社を興したのよ。その心が能力の覚醒につながったのよ。あなたの役目は傷つき恋も出来なくなった人々を救う事よ。」「いきなりそんなことを言われてもなあ。仕事もあるし、それに実は俺好きな人がいるから自分の恋で精いっぱいだし。悪いな。」そういってミイアの棺桶を閉めようとしたが・・・「あれ!?閉まらない。え!ドールが動いている。凄い力だな。」必死でミイアは蓋を閉めないように両手で蓋を支えた。そして棺桶から出て来た。「うわあああああ!動いた!!。助けてくれー。ローゼンメイデンかよ!!。」結局頭の整理がつかないまま片付けで疲れ果てた成行は明日の仕事もあるのでその日はそのままミイアを放置して寝てしまった。

 翌日、朝6時半、眠い目をこすりながら成行は起きた。「ん?ミイアはまだ寝ているのか?。」なんとミイアは成行の隣で寝ていた。「ミイアはねぼすけだな。このままミイアが起きる前に出かけるか。」成行はミイアを見つめる。「こうしてみるとかわいいんだけどなあ。しかし人間にしか見えないよなあ。」成行はミイアの胸元を見た、ドレスがはだけてもう少しで乳首が見えそうである。成行の前が膨らんだ。「いかんいかんいかん!この人形はじっちゃんの生命で動いているんだ。もしミイアとSEXしたら近親相姦になっちゃうじゃないか!じっちゃんの生命とやるわけにはいかない!。」必死に思いとどまる成行。「いかんいかん遅刻する~。でもミイアは大丈夫かなア?。」成行はミイアを放置して出て行った。
 
 成行はソフトONという大手リサイクルチェーン店の店員として働いている。契約社員で1年更新である。家庭用雑貨やゲーム機、家具 家電 玩具や腕時計 衣装などなんでも扱っている。成行は朝8時の朝礼に参加している。店長の話が始まる。「えーここ数年の物価上昇に伴い中古製品の需要は伸びつつあるが仕入れ値も高騰しており油断できない状況である。・・・」店長の長い話が終わり、皆それぞれの持ち場についた。成行は研修中である女性スタッフの元で指導を受けながら業務を行っている。「行成さん、これが昨日の仕入れ品です。お店の過去の売り上げ実績と照合させて適正な値段表を貼って陳列してください。覚えることが多くて大変だと思うけど頑張ってね。」微笑む指導員。成行を指導しているのは”北条美里”24歳独身、元体操部で引き締まったウエストと下半身が魅力的な美女である。「はい、北条先輩!いつもご指導ありがとうございます。」張り切る成行。遠目で見ている男性スタッフが数人いる。「新人の行成のやついいなあ。あこがれの北条さんにつきっきりで仕事が出来るなんて。しかしあのお尻たまんねえよなあ。」エロい視線で北条を見つめるスタッフ達。しかし安い単価で大勢の従業員、店舗の家賃やその他のランニングコストを稼ぎ出すためにはかなり濃密で数多くの業務をこなさねばならず経営も必死である。それゆえいつも仕事が終わるのは深夜になってしまう。午後7時閉店後に売り上げ集計に商品再陳列、その他で午後10時にようやく一日の業務が終わる。成行の給料は安く、時給に換算すれば600円前後である。皆タイムカードを押して疲れ切った表情で家路についた。誰も飲みに行くものがいないくらいの激務のようである。
成行も疲れ切っている。「お疲れ様でーす。ふう、やっと終わった。あ!そういえばミイアは大丈夫かなあ?。」成行はあわてて帰宅した。続く


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