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ACT1 マヤ様&ドーラパンク

世界中で急成長を遂げつつあるラブドール業界。マスコミにも頻繁に取り上げられるようになり一般人にもその存在が広く知られるようになった。かつては100万円以上したドールも今はかなり価格も安くなりこの小説の主人公金田鷹章のような貧乏人でも買えるようになったのである。
この小説の主人公金田鷹章はケチな野郎である。さてこのケチな野郎にも少ないながら友人がおり、その人物はクラッシックカーディーラーを経営する凄腕の経営者で高藤龍之介という。彼は鷹章が使っているツイッターでタルカスというID名で登録しており公私ともに良好な関係を維持している。ある日そのタルカスからメールが届いた。「鷹章、実は秘密にしていたんだが数か月前に新品ドールちゃんを注文したのだよ!。メーカーはあの映画業界の特殊メイクや小物を作成りている会社の子会社でアルティメットリアル社の製品だ。」「えええ?!あの造形美では世界最高峰と言われるアルティメットリアル社だよな。!驚いたな。安くても安い新車買えるぐらいの金額はするだろう!?すげえな。俺も持っているけど新品は買えなかったから羨ましいよ。!」「初めてのお迎えだから失敗したくないんだ。このブランドはあのミュージシャンでイケメン芸能人でYOUTUBERのドーラパンクさんも持っているドールのメーカーだ。だから間違いないと思って。数日後に到着予定だ、待ち遠しいなあ。」鷹章はちょっと引っかかっていた。「ドーラ パンクなら俺も知っているよ。無駄にハイテンションで派手な格好で有名だよな。でもなんか有名人って昔から信用できないんだよな。プライベートでは偉そうで嫌な奴多いイメージあるし。」タルカスは鷹章のちょっと偏見のある発言が気になったがそれでも話を続けた。「ドーラ パンクさんはイケメンミュージシャンなのに自らラブドールオーナであることをカミングアウトして一時大騒ぎになったことがあってさ。それでも明るくふるまってドール業界のイメージ向上のために努力した偉い人なんだよ。少なくない女性ファンの離反もあったけど今は以前の人気を取り戻して立派に活動している。信用できる人だよ。」「おれもそう思って崇拝した有名人いたけどいろいろあってさ。あまり絶対崇拝しすぎないようにした方がいいよ。」鷹章は自分の過去の経験もあり,タルカスが少し心配になった。しかし幸せそうなタルカスの様子を感じて水を注してはいけないと空気を読み、それ以上は何も言わなかった。ドーラ パンクはミュージシャンなので音楽配信も行っている。ダウンロード数100万回は当たり前で最近出した新曲”君のいない楽園”は短い生涯を閉じた人ならざる恋人を描いたような歌詞でその儚い歌詞に女性だけでなく多くの男性も共感した。ドーラ パンクは見た目は20代前半のかなりのイケメンで音楽活動以外にYOU TUBEで彼が提携しているドール代理店の宣伝も行っている。又カメラの腕もプロ級で宣材写真も撮影し、写真集を出すほどの腕前である。そんな彼だが売れない頃は貧しさゆえに恋人にもその貧困が原因でフラらてしまったというつらい過去を持つ。しかし必死でためたお金でドールをお迎えし、心を癒し、努力し、ミュージシャンとして成功した。なかなかの苦労人で努力家である。
 鷹章は仕事の移動中の車の中でよくFM放送を聴く。ここ数か月はドーラ パンクの曲が頻繁に流れるので歌詞を空で言えるくらいにまでなった。「またこの曲か。でもいい曲だよな。♪裏切りがアクセサリーならそんなものはいらない♪君は絶対裏切らない♪ドールだから♪人じゃないから♪ババンバン!。ん?どっかで聞いたような歌詞だな?気のせいかな。分かる人にしか分からないような・・・。ドーラパンクって本当に20代か?。」鷹章はこう見えても勘が鋭く分析力もある。ドーラパンクのキャラにどうしても違和感を感じてしまうのだ。「明るく前向きで面白い人物に見えるがどこか無理しているように見えるんだよなー。誰かに無理やりやらされていることを悟られないように無理しているように見えて仕方がない。気のせいかな?。」鷹章は勝手な推測をしながら彼の保有する営業車を走らせて仕事先に向かっていた。
 仕事を終えた鷹章はもはや日課となったドール関連のYOUTUBEチャンネルを視聴していた。ドール関連のYOUTUBERといえばドーラパンクが圧倒的な人気である。動画の本数でいえば圧倒的にドーラパンクが多く、再生数もものすごい数である。動画だけでかなりの収入になると思われる。「今日もアルティメットリアル社の新作紹介動画か。しかしとてもドールとは思えないな。」動画の内容はドールをナンパの多い地区に配置して何人のナンパ男がドールを人間と間違えてナンパするかという企画だった。「え?又声かけている。まあ騙されるよな。動かないから変だと思う前にそのエロさと美しさに体が勝手に動いてナンパしているように見えるな。」動画は必死にナンパする男たちが人形と気が付いてがっかりする様子まで詳細に撮られていた。モザイクと音声加工はもちろん施されている。「やらせかもしれないけど俺がナンパ男だったら真っ先に声をかけるだろうな。企画としては最高に面白かった。」鷹章はいいねを押して動画を閉じた。「アルティメットリアル社の製品なら間違いないだろうな。ウチのミウよりはるかにリアルだし。」するとミウが鷹章をギロッと睨んだような気がした。「うううううううそです。ミウ様のほうが美しいです。」ミウの顔が少し微笑んだような気がした。「ふう。ミウがうちに来てから動画やアニメを見てかわいい子に見とれるとなんだか怒って睨むような気がしてならない。気のせいかな?。」翌朝仕事あるのにいつも深夜まで動画を見てしまう鷹章だった。
 一方、ここは某国立大学、鷹章の全く完全に途方もなく美しくない姉の息子慎太が通う大学である。慎太はA君に彼女が出来てたった一人の友人を事実上失った。A君が工場のラインの仕事で知り合った彼女は偶然にも同じ大学の違う学部の学生で校内にいるときはいつも一緒だった。それゆえ二人きりの時間を邪魔しないようにA君を見ても見て見ぬふりをしているのだ。「はあーA君が幸せになったのはいいが孤独だなー。彼女が出来るとみんな友達付き合い悪くなるものなのかなー。」慎太がため息が止まらなかった。すると数人の見るからに怪しいオタク風の学生数人が慎太に近づいてきた。慎太に近づくと周りから見えないように慎太を取り囲んだ。「君が法学部2年生の金田慎太君だね。」にやりと笑いながらその集団の中心人物らしき学生が言った。「そうだよ。僕が金田慎太だよ。何か用?。」数人は安心したかのような様子で再びにやりと笑った。「これを見たまえ。」中心人物らしき人物が慎太が車に乗っている写真を慎太に見せた。隣にドールのみゆうちゃんを載せていた時の写真だった。「この写真がどうかしたの?」「失礼ながらグーグルで画像検索させてもらった。子この美女は人間ではなく等身大リアルドールだね。」再び中心人物らしき人物はにやりと笑った。慎太はばれて困るぐらいなら最初からやる気はなかった。しかし思ったより早い段階でバレたので少々残念な気持ちになった。「慎太君。ここじゃ人目もあるだろう。申し遅れたが私たちはこういうものだ。」中心人物らしき人物は慎太に名刺を渡した。「なになに。アニメ同好会会長 兄目好男?」「よしおだ。宜しくね。では我らの部室に案内しよう。」「ちょっとまって。」慎太はアニメ同好会の構成員に無理やり部室まで連行された。成績優秀で頭も切れるが腕力は皆無で多分並みの女性より非力である
 大学の部室棟の地下にある倉庫に慎太は連行された。「ここは地下倉庫だよ。こんなところに君たちの部室があるというのか?。」地下室の鉄の扉が開いた。「女帝!連れてきました。」

「女帝?。」部屋の明かりが急に明るくなった。何故か女帝と呼ばれる女性の後ろで自転車をこぐ男が二人いた。「つッ疲れた。」部屋の照明が暗くなった。どうやら人力発電のようである。「バカモノ!誰が休んでいいといった!働けドレイ!。」「ひえー。」再び照明が明るくなった。「お前が噂の金田慎太か!。」「あなたは誰。僕勉強があるんだけど。」「このお方こそわがアニメ同好会OB現在は美しすぎるプロ占い師の”飯能マヤ様”であらせられるぞ!。」同行会員の男たちが一斉にマヤ様に向かって右手を高く上げて敬礼した。「偉大なる我らが支配者我らが英雄”マヤ様!マヤ様には誰も逆らえない!。マヤ様は絶対だ。女神だ。マヤ様に逆らうものはこの世から抹殺される。マヤ様の為なら我らいつでもこの世から消えます!。」「この人たち完全にマヤ様とかいう頭がアレな女性に洗脳され絶対崇拝している。関わりたくないな。」慎太は心の底から恐怖したが非力な慎太には何もできなかった。「ああ、ぼくも知っているよ。TVやYOUTUBEに出ているアホだ。」慎太は度胸だけはあるらしくこの状況でマヤ様をディスった。「おほほほほほ。私の水晶玉占いによるとお前は!不幸のどん底に落ちて短い生涯を間もなく閉じる・・・。でも私に従えば世界で一番幸せになれる。」慎太はだんだん腹が立って来た。「このおねえちゃん確かに見た目だけは美しいけど・・・無性に腹が立つ・・・。」マヤ様はイントロセレモニーに飽きたらしく本題に入った。「今度この大学で学園祭が行われる。私は暴力占いの館というイベントの打ち合わせにここに呼ばれた。」「暴力占いの館?。」慎太は暴力という言葉に引っかかったが面倒なのでそのことに突っ込まなかった。「そのイベントが失敗しお客さんが来なかったら私のかわいい下僕たちのいるアニメ同好会が解散させられる。オタクの味方のマヤ様は慈悲深いからこの下僕を救ってやろうと思ってな。そこで私にかなわないものの美しい女性アシスタントを連れてこいと命令したら下僕はどういう訳かお前をここに連れて来たというわけだ。」「はああーーーー。」マヤ様は話を一方的に続けた。「もちろん報酬は出す。私ほどの大スターであればイベントは大成功するに決まっている。しかーし。世の中何が起こるか分からない。そこで思春期のドスケベな子羊たちを一匹でも多く集めるためにお前が連れまわしているアルティメットリアル社の人気NO.1ドールをわが下僕に貸し出してほしい。エロで集客するのだ。」こいつ頭大丈夫かと突っ込みたくなる欲望を必死で押さえながら慎太は意見を言う。「あれはアダルト商品ですよ。未成年に見せたらやばい奴でしょ。大学に見つかったら大変だよ。」「バレなきゃいいのよバレなきゃ。ばれたら君の身代わりを差し出すから安心おし。」マヤ様は慎太の身代わりの生贄まで用意していた。しかし全く人の意見を聞き入れないマヤ様にだんだん恐怖を感じ始めた。数時間後・・・慎太は結局高額の報酬とめんどくさい美女から逃げ出すためにしぶしぶ自分のものでもないドールを鷹章に無断で貸し出す約束をした上にちゃっかり前金まで受け取った。マヤ様の相手で疲れ果てた慎太は大学の帰りのバス内でいろいろ考えていた。「まいったなー。とんでもないことに巻き込まれたなあー。仕方ない、又あのアホ叔父を脅かしてドールを借りるか。しかしそれもめんどくさいな。しかしやるしかないか。」実の血のつながった叔父の意志など完全に無視してマヤ様の言いなりになって勝手にドールのみゆうちゃんを貸し出す事を決めた自己中な慎太だった。慎太は叔父の鷹章に会いに行くのが面倒なので一方的にメールでその旨通知した。すると「なに!。またドールのみゆうちゃんを無料で貸し出せだと!。やだぴょーん。誰がお前みたいな性格のひねくれたガキに貸すかまぬけ!。」という鷹章からの知性のかけらも無い文面の返事が届いた。「そうですか。マヤ様がっかりするだろうな。」という内容の返事を慎太から受け取った鷹章は目の色が変わった。「なに!。マヤ様ってあの有名な水晶玉占いのマヤ様か?本当か?。」慎太は盗み撮りしたマヤ様の写真を鷹章に送った。「今度ウチの大学の学園祭に呼ばれてイベントやるんだって。暴力占い館という間抜けな名前のイベントをやるから美女が必要なんだって。でもマヤ様にとって自分と釣り合う美女アシスタントがいないからドールで代用するんだってさ。」鷹章は慎太が送ったマヤ様の写真を見てかなり驚いた。「本物のマヤ様だ!。かわいい甥の慎太よ。お前が困っているんなら助けるのは当たり前じゃないか。水臭いわよ。この子ったら。」マヤ様と聞いた途端態度を180度変化させる鷹章。「叔父さんってマヤ様のファンだったんだね。」「ドールは貸すからその代わりマヤ様に会わせろ。」「分かった頼んでみるね。」鷹章は慎太から送られてきたマヤ様の写真を一瞬でスマホの待ち受け画面に設定した。すると後ろから突き刺すような視線を感じた。「いたたたたた!。なんか刺さるような感覚が・・・あ・・・。」ものすごい形相でミウが鷹章を睨んでいるように見えた。「ううううううううそででででですううう。私の待ち受け画面の写真はミウ様専用です。悔い改めました。ほらみて。」鷹章はふたたびスマホの待ち受け画面をミウに戻した。ミウの表情が穏やかになった気がした。一方慎太はマヤ様にメールして鷹章が会いたがっている旨を伝えた。しかし・・・「私は大スターだぞ。なんでそんな見知らぬおっさんに会わなきゃいけないのよ。いやだわよ!。」慎太の願いは聞き入れられなかった。・・・ACT1 END

「ドーラ パンクなら俺も知っているよ。無駄にハイテンションで派手な格好で有名だよな。でもなんか有名人って昔から信用できないんだよな。プライベートでは偉そうで嫌な奴多いイメージあるし。」前話で鷹章が意味深に話した文章である。実は鷹章は少し前にドーラパンクと小さなトラブルがあった。
 一見平穏なドール関連のSNS。しかしその穏やかな水面下では実に熾烈な争いがしばしば起こっている。信頼、崇拝、確執、離反・・・。今回もそんなお話です。
2020年10月、彼は悩んでいた。起業してかなりの年数が経過し生活にも心にも余裕が出てきた。夢中になって働いてきたが生活が苦しかったので彼女は出来なかった。ドラマやアニメの恋愛ものを見てはため息をつく毎日だった。個人事業主で従業員もいない一人親方で田舎に引っ越して来たため人口も少なく女性と言えば老婆ばかりであった。「あーあ このまま一人さみしく朽ち果てていくのかな?。今願いが叶うならかわいい女の子と一緒に暮らしたい。裏切らずいつまでもそばにいてくれて贅沢を望ます静かに寄り添ってくれる子がいいな。」彼は近くの椋神社という神社によくお参りに行く。ひたすらかわいい女の子と同居したいと願っていた。しかし彼は肝心な事を願っていなかった。人間の女の子とは一言も願わなかったのである。「ふう!これで神様が願いをかなえてくれたらいう事は無いな。」なんとなくうきうきした気分で家路につく。それから毎晩不思議な夢を見るようになった。夢の中で彼が大喜びする夢で「やったーこんな方法がったのかー!。」と喜びながら美女を抱いている夢だった。「ん?こんな方法とはなんだ?でも美女を抱いていたな。まあいいか!満足していたしな。」目覚めのいい夢だったので彼は幸福感を感じていた。
2021年7月鷹章はドールをお迎えする事になる。
この時点での彼はドールメーカーにどのようなものがあるか知らなかった。ドール業界の闇というものも当然全く分からなかった。お迎えしたドールにメーカーの記載も一切なかった。その事に気付いてさえいなかった。それが彼にとって最初の悲劇を呼ぶことになるとも知らずに・・・。
 ドールオーナーとなった彼は嬉しさの余り早速SNSを開始した。PASSARON(パスサロン)という画像とコミュニケーション中心のSNSに登録し早速スマホ画像をUPした。他のオーナーさんのドールちゃんを見たいという欲望を抑えられなかったからだ。PASSSARONにはあのドーラ パンクがいた。鷹章がドールをお迎えするきっかけとなったYOUTUBE動画を作成して後悔した芸能人YOUTUBERである。すぐにフォローしてドーラ パンクの動画がきっかけでドールをお迎えした旨を伝えた。「お迎えおめでとうございます。あなたのドールちゃん可愛いですね。いい目をしています。目を見れば幸せかどうかわかります。」実に心温まるコメントが返ってきた。すっかり感動しドーラ パンクの信者となった彼は動画やSARONにフォロワー登録してコメントのやり取りが始まった。他のSARONの仲間も出来て同じドールを愛する者同士仲良くなった。お互いの写真を見せ合い、役に立つ情報を貰うようになり孤独だった彼にとって夢のような楽しい日々が続いた。彼にとってSARONの仲間もドーラ パンクも同じドールを愛する親友のように思えた。しかし幸せな日々はそう長くは続かなかった。
鷹章は自分が最初にお迎えしたドールミウのメーカーがどうしても知りたかった。TPEドールなので寿命が短いと知ったからだ。ある日ミウの画像をサロンに掲載してサロンの仲間にメーカーを聞いてみた。すると信じられないコメントがUPされた。「これは典型的なコピードールだ。」そのコメントを見た鷹章は目を疑った。「自分の彼女の過去を詮索するのはどうかな?。」コメントは続いた。激怒した彼はコメント主を見た。彼はさらに目を疑った。「ドーラ パンクだ!。」崇拝しているYOUTUBER、ドールお迎えのきかっけをくれた恩人。でも愛するドールを証拠もないのにコピー呼ばわりした。彼の頭の中は混乱した。又信じていたYOUTUBERに裏切られたような悲しい思いがした。その日を最後にサロンを退会した。
数日後彼はショックと怒りと悲しみで複雑な思いだった。人間に例えたら恋人を侮辱した相手が恋人の結びの恩人なのだ。複雑で頭の整理がつかない。侮辱されて悔しいし頭にくる。でも無視日の恩人で憎めない・・・・。嫌いになれない・・・・。収取が付かない中、別のSNSTwitterに登録した。ここでもドールのオーナーさんは数多く登録しやり取りも盛んだ。様々な記事を読んでいく中ある記事に目が止まった。「コピードールを撲滅しよう!。ドール業界の健全な発展の為コピードールをUPするのはやめましょう!。」数多くの登録者数を誇るあのドーラ パンクのページだった。「ここでも登録していたのか!。なるほど彼には彼の正義があったんだな。確かに正規メーカーが苦労して開発したドールデザインを丸パクリして製造すれば安くきれいなドールが出来るがそれは違法だ!。」鷹章はドーラ パンクが鷹章のドールをコピー呼ばわりして急に不機嫌になり彼に冷たくなった理由が分かった。「ウチのドールはコピーなのか?確かに安かった。でもそうとは限らない。一目ぼれしたからお迎えしたんだ。コピーだったとしても知らなかったんだ。」鷹章は悩んだ。「一度お迎えした以上コピーだったとしてもそんな理由で捨てたりしたらかわいそうだ。俺は彼女に救われて幸せになったんだ。例え世界を敵に回したとしても彼女を守れるのは俺だけだ。」鷹章はミウを持ち続けることを決意した。そしてツイッター登録して写真もUPするようになった。フォロワーも増え、コメントのやり取りも楽しくできるようになった。国内だけでなく世界中のドールオーナーさんともつながった。しかしコピードールと言われた事が気になりコピードールをUPするなと言われるのではないかと少々恐れていた。しかし鷹章がお迎えしたミウは後にバニードールというメーカーであることが判明する。コピーではなかったのだ。
このような事が過去にあったので鷹章は友人の高藤がドーラパンクを信じている事を心配している。
数日後、高藤から注文していた新品のドールが届いたとメールが届いた。鷹章は早速祝福のメールを送った。「良かったね。おめでとう。俺はとても新品なんて買えないから羨ましいよ。今度一緒に撮影会やろう。」「これから開封に忙しいからまたあとでね。」高藤からのメールはそれで途絶えた。鷹章は高藤が同じドールオーナーになった事を喜んだ。高藤が同じドール沼にはまったので仕事仲間としてもますます親密になれると考えた。
数時間後、鷹章は仕事を終えて日課のツイッター閲覧をしていた。するとタルカスこと高藤のツイートが目に留まった。「え!これはひどい!。」鷹章はタルカスがツイートした写真画像に目が釘付けになった。その画像は美しいアルティメットリアル社の人気NO.1ドールの写真だがボディの表面の薄皮が剝けているような無残な姿だった。「これはひどい。自動車が新車で買える値段のドールなのに・・・。」鷹章はその無残な姿を見て高藤がものすごく落ち込んでいるに違いないと思った。コメント欄には3か月待ってやっと届いて喜び勇んで開封したらそのボディの仕上げがかなり無残な姿だったのですごくショックを受けているという内容が記載されていた。「高藤さんさぞかし落ち込んでいるだろうな。」ふと、ツイッターのコメント欄の最後に高藤が購入した代理店のリンクが貼られていた。鷹章は早速そのリンクを開いた。すると代理店の主催するSNSが開いた。そこに高藤のコメントと写真が数多く掲載されていた。その内容は先ほどのツイッターに掲載されていたドールの不具合を代理店店主に訴える内容であった。この代理店はかつて鷹章がドールをお迎えした代理店で店も店主の人柄も評判が良く日本屈指の人気代理店である。「この代理店なら不具合もきっと解決してくれるだろう。」鷹章は高藤がこの代理店からのお迎えであったことを知って少し安心した。店主の返信コメントを見ると早速メーカーと交渉して商品交換要請を済ませたと回答があった。「良かった。これで安心かな?。」鷹章はSNSのやり取りを見て安心した。しかしその後あるコメントが投稿された。あのドーラパンクのコメントである。ドーラパンクは芸能活動の合間ににYOUTUBE動画を投稿しており、この代理店と契約してドールの新作宣伝動画を作成して公開している。その関係で代理店のSNSでコメンテーターアドバイザーとして質問の回答や情報発信も行っている。「不具合の写真を見ました。このような不具合は海外でも多く見受けられます。しかし実践などで使用していればコーティングの剥がれなど日常茶飯事です。メンテナンスに出す範疇の些細な問題だと思います。日本人は神経質すぎるので海外では問題にならない不具合でもクレームになる事も少なくないのでご理解ください。・・・」その他ドーラパンクはさまざまな海外の事例や日本と海外の感性の違いなどを文章で投稿し続けた。鷹章はドーラパンクに以前鷹章のファーストドールを証拠も無いのにコピードール呼ばわりされた事を思い出し、さらに友人が店主と話し合っているのに横から割り込んで海外の事例や日本人の気質を論じてうやむやにしようとする姿勢にだんだん腹が立って来た。「メーカーの代理店として日本の市場を任されている立場の店主様の親身なご対応に感服しました。日本人の気質を理解し、日本のお客様が満足するように努力し、顧客を満足させ、その事例が評判となり信用できる代理店として認められる事で日本市場を拡大できると思います。店主の努力に感謝します。<m(__)m>。」鷹章は店主を応援するかのような遠回しなカウンターコメントを投稿した。又高藤に対し勇気を出して他のお客さんが同じ目に合わないように情報発信した事をほめたたえるコメントも投稿した。ドーラパンクは空気を読みそれ以上の反論はしなかった。
数日後、都内某所、ドーラパンク所属事務所。「困るんだよねードーラ君。ウチのメインスポンサーの一社であるアルティメットリアル社の評判を落とさないようにするのも君の仕事だよ。忘れるなよ!君の人気が横ばいになっている時にセンセーショナルなカミングアウトをしてアルティメットリアル社のドールを日本中に宣伝するというプロデュースを行い、それが成功したから君は息を吹き返したんだ。その成功でアルティメットリアル社もウチのスポンサーになったんだ。」ドーラパンクの所属事務所の社長が不機嫌な態度でドーラパンクにダメ出しを行っている。「はい、おっしゃる通りです。申し訳ありません。社長が私を拾ってくれたから私は芸能人としてブレイクしました。恩は忘れません。メーカーの評判を落とさぬように努力します。」ドーラパンクは言葉とは裏腹に社長の言葉に激怒したらしく、ものすごい形相になった。しかしその顔を見られたら社長に何をされるか分からないので顔を見せないように顔を伏せて社長に深々と頭を下げて謝罪した。
その夜、都内のとあるショットバーでドーラパンクは一人で酒を飲んでいた。カウンター席の端でサングラスにマスク姿で芸能人とバレないようにしている。「やってられるかよ!。あのくそ社長!。誰のおかげで事務所が儲かっていると思ってんだ!。」ウイスキーをストレートで飲み干す。ドーラパンクはお酒は強いようだ。バーテンダーはあるカクテルをドーラパンクに渡した。「え?俺はこんなカクテル頼んでいないぞ。」「あちらのお客様からのご注文です。」ドーラパンクがカウンターの右端を見るとある若い美女が手を振っていた。「え!君がどうしてここに?。」「相変わらずお酒が好きなのね。飲み過ぎると太ってイケメンが台無しになるわよ。」「マヤ!久しぶりだな。こんなところで再会できるなんて運命かな?。」なんと自称美しすぎる水晶玉占い師飯能マヤである。「何よ、口説いてるの?。私たちはとっくに終わったのよ。ああちなみにそのカクテル私のオリジナルなの。オロナミンDと青汁とバーボンのミックスよ。カクテルの名前はダメなイケメンっていうのよ。素敵な名前でしょ。」「俺向きじゃないな。送る相手を間違えているぜ。」ドーラパンクはしばらくマヤを見つめてから言った。「君がここにいるのは偶然じゃないよな。俺に何か用か?。よりを戻したいという理由ではない事だけはこのカクテルの味で分かった。おえー。」ドーラパンクは飲み終わったとたん吐いてしまった。
ACT2 END

2021年10月末、鷹章の生意気な甥が通う某国立大学。今日は学園祭の当日である。高い偏差値を誇る大学ではあるがやはりこの大学の学生たちも普通の若者と一緒でたまには羽目を外して思い切りお祭りを楽しみたいという気持ちを持っている。その数ある学園祭のイベントの一つにこの大学のアニメ同好会が主催する”暴力占いの館”という謎のイベントが組み込まれている。実はアニメ同好会は大学から睨まれており解散を迫られていた。そこでアニメ同好会会長”兄目好男”は大学に学園祭で実績を残す事が出来たら解散通告を取り消してほしいと懇願。大学側はその条件を受け入れてアニメ同好会に最後のチャンスを与える事にしたのだ。アニメ同好会は実績を残すために予算も無いのに自称美しすぎる水晶玉占い師”マヤ様”こと飯能マヤという芸能人占い師を呼んで”暴力占いの館”という謎の占いイベントを企画したのだ。よってアニメ同好会はこのイベントが成功しなかったら同好会を解散させられるのである。なんやかんやでマヤ様を呼ぶことができたアニメ同好会はわがままなマヤ様の指示のもと、占いの館のテントを準備している。「ふう、やっと終わった。しかしこのテントも室内の装飾も趣味が悪いな。」この準備になぜか慎太も駆り出されていた。「僕は勉強があるのになあ。何でこんなオタクたちの手伝いをしなければならないの?。」「マヤ様から報酬の一部を先払いされているだろう。文句を言うな。」「あれは僕のアホ叔父のドールを借りてくるための報酬でしょ。話が違うよ。」慎太は文句を言いつつ暴力占いの館の飾りつけを手伝っている。室内は薄暗く、霧の発生装置や不気味で悪趣味な異世界アニメに出て来そうなモンスターのオブジェ、偉そうな椅子にマヤ様を照らすであろうスポットライトが設置されている。「金田君 あれは持ってきてんだろうな?。」「ああ、テントの表に白いぼろ車が停めてあるでしょ。その中に棺桶みたいなやたら丈夫な段ボールがあるので運ぶの手伝って。」「そんなに重いのか?。」兄目と慎太が車から巨大な棺桶みたいな段ボールを引っ張り出した。「おっ重いな!」「気を付けてよ。高いんだからね。」慎太はちゃっかり軽い方を持って車の荷台から運び出し、テントの中に運び込んだ。「はあはあぜいぜい。疲れた・・・。」兄目はばててしまった。「若いのにだらしないよ。」軽い方を持った慎太は上から目線で兄目のふがいなさを非難した。箱から叔父の鷹章から借りて来たドールを取り出し、やたら骸骨が多い装飾が派手な椅子に座らせて占い師みたいな派手なビキニとフードとマスクを付けた。「これでいいかな?。」何とかセッティングを終えた二人はその場で弁当を食べながらマヤ様の到着を待った。
数分後マヤ様を載せた白いリムジンが到着した。マヤ様のテントまで赤いビロードの布が敷かれ信者たちが数十人整列してビロードを挟んで右手を高々と上げる。その間をマヤ様が胸元が大胆に開いた派手な真っ赤なドレス姿で通る。顔にはアイマスクと口に赤い布をかけている。「偉大なる我らが美しき指導者!マヤ様!。」大声で叫ぶ信者たち。大学構内で準備中の学生たちはいっせいにマヤ様を見る。「え!マヤ様!本当に来たんだ!。本物かな?。」「でもあのしょぼいアニメ同好会があんな大スターを呼べるはずがない。あのものはマヤ様の名を騙る不届き物だ!。」アニメ同好会は大学内でもかなり過小評価されているようである。マヤ様は早速テント内に入り中央の高台にある骸骨の装飾がなされた玉座に座る。まるで特撮物の女総統のようである。その玉座の右隣に鷹章から慎太が借りたみゆうちゃんがエロイ恰好で座っている。「ふん、私には遠く及ばないけれどまあまあの美形ね。合格よ。」「良かったー。これが済んだら報酬貰ってこのアホ女ともオサラバだ。叔父さんからドールを借りる条件はマヤ様に合わせる事だけどその日の直前にマヤ様がドタキャンしてこれなくなったとでも言えばいいのさ。来る直前におなか壊して下痢が止まらないから来ないよと言えばいいのさ。」慎太は本当に黒い子である。
マヤ様は趣味の悪い玉座に座りふんぞり返っている。「ふうー都内からの移動は疲れるわね。」信者の一人がミネラルウォーターを差し出す。「こういう時はやっぱり純粋な水が一番ね。さて、本題に入るわね。お前たちは運がいいわよ。これから面白いショーが始まるから楽しみにしていなさい。あら、もう占いテントの外では長蛇の列ができているわ。さすがは私ね!。何も知らないでのこのこやってきた馬鹿どもが!。」アニメ同好会のメンバーと慎太は訳が分からずキョトンとした顔をしている。アニメ同好会会長兄目好男が質問する。「マヤ様、どういうことですか?占いやるんじゃないのですか?。」マヤ様は突然グラスのミネラルウオーターを兄目にぶっかけた。「ワッ冷たい!。」思わずのけぞる兄目。そのまま足を滑らせて後ろに倒れてしまった。「誰が質問していいといったバカモノ!。だまって控室モニターを見ていろ間抜け!。」控室にはマヤ様が玉座に座って占う様子をカメラで写しその映像が控室のモニターに映し出されるようになっている。慎太はなるべくかかわらないようにするため黙って何も言わないようにしている。黙って控室の粗末なパイプ椅子に座ってモニターを見ている。「あ!予定より10分早いけどOPENしたみたいだ。」マヤ様のファン?の若い学生やサラリーマンその他が我先にとテントの中に入った。最初に占ってもらうのは若い学生のカップルである。二人の未来を占ってもらうようである。「マヤ様に占ってもらえるなんて夢のようです。私たちの未来を占ってください。」ちょっと照れたような顔でカップルの彼氏がマヤ様に占いをお願いする。「どれどれ。水晶玉に何が映るかなあー。」実は水晶玉には仕掛けがしてありマヤ様の手元のスイッチで死神、悪魔、ゴキブリ、骸骨、毒蛇、猛獣などを映し出すことができる。しかしろくな映像が無い。「おおおおおおおおお!。映ったあ!。神のおつげだわよ。え?あらあら死神が映ったわ。お前は!死ぬ!。」マヤ様は両掌を合わせて目をカッと開いて叫んだ。テント内はどよめいている。「ええええ!どういうことですか。」「言えないわよ。でも言っていいなら言ってあげるわ。」「言ってくださいよ!。」カップルの彼氏は真剣である。「お前はブラック企業に就職して社畜としてこき使われ!上司から横領の罪をなすり付けられクビになる。そして次に就職した会社で過労死する。」なんだかありえそうなでたらめな事を言うマヤ様。「そんなー。」カップルの彼女は彼氏を慰めた。「こんな占いでたらめよ。さっさと帰りましょ。」立ち上がろうとする彼氏をマヤ様は呼び止めた。「お帰りですね。ありがとうございます。お代は50万円になります。」彼氏は一瞬耳を疑った。「5000円の間違いですよね。いやだなー悪い冗談は。」すると奥から強面のマヤ様の体格のいい男性信者が数人出てきてカップルを取り囲んだ。「お客さーん。お代はしっかり払ってもらわないと困るなー。このまま逃げたら占われ逃げになっちゃうよ。犯罪だよ。」身長は2mはあろうかと思われる大男が言った。「でもそれは高すぎますよ!。払えるわけないでしょ!。」「ならご両親に払ってもらいましょうかねえ。これから一緒にご両親のところへ行きましょうか。おい。連れていけ。」「はい。」数人の大男が彼氏を連行した。入場したお客たちは我先に逃げ出そうとした。その時マヤ様が叫んだ。「出ていくなら入場料払いなさい。」「入場料??」テントの表の入り口に直径1mmほどの小さな文字で”入場料一人10万円”と書かれていた。「そんな文字見えないよ!。」「そうだそうだインチキだ!。」お客からブーイングの嵐である。
 その様子を控室で見ていた兄目と慎太は呆れかえっていた。「なんだこりゃ。昭和の暴力バーみたいじゃないか?。あほらし。」あまりにも低俗なイベントに二人は呆れかえった。
一方こちらはドーラパンク。彼も自宅で慎太たちと同じ画像を見ている。「あの悪女め。なんで俺がこんなことをしなきゃならないんだ?。」ドーラパンクはなんとこの暴力占いの館の生中継をライブでYOUTOBEで放送している。しかもノーギャラである。「あの女に逆らうと付き合っていた時期のあることない事べらべらTVでしゃべりそうだからな。動画配信ぐらいわけないしまあいいか。触らぬ神にたたりなし。」若干解釈を間違えてはいるがドーラパンクはマヤを恐れているので指示に従っている。
再び某国立大学暴力占いの館。「ほっほっほー。YOUTUBEの視聴回数が100万回超えたわ。大儲けよ!。」マヤ様はドーラパンクにマヤのYOUTUBEのライブ配信をさせていたのだ。しかもその収益はすべてマヤ自身のものにするつもりのようである。強欲な女性である。そうとは知らない暴力占いの館の大勢の騙されたお客はマヤの脅しに震え上がっている。「俺たちどうなっちゃうのかな?。」「マヤ様が裏社会の人だったなんて知らなかった。そういえば黒い噂が絶えなかったな・・・。」逃げ出そうにも出口はプロレスラーみたいな大男に固められ出られない。しばらくするとテント内のスポットライトが光りマヤ様をライトアップした。「皆のもの静まれ!。これよりマヤ様から諸君らにお話がある。心して聞け。」マヤにスポットライトが向けられた。「お前たちのような愚かで幼い子ブタ共に多くは望まない。慈悲深きマヤ様から諸君らに妥協案が出された。心して聞けブタ共!。」屈強な男が叫ぶ。「ではお金は免除してやろう。その代わり私の信者となるのです。連れていけ。」「ははっ。」屈強な男たちは入場者を担いで無理やり表に停めてあるバスに詰め込んだ。総勢50人以上になる。「ほーっほっほ!。これからお前たちは私の私設教育機関に送られる。一日10時間で10日間の教育を受けてもらう。内容はマヤ様の美しさ、偉大さ、その他の授業を受けてテストに合格した者は釈放してはれて私の信者となり私の為に無償で働く栄誉を与えるものとする。連行しろ。」捕まったお客は叫ぶ。「いやだー。助けてくれー。」全員がバスで連れ去られた。その様子を見ていた慎太たちは心の底からマヤ様に恐怖した。「そうか。こうやって信者を増やしていたんだな。やっている事は独裁国家の元首やショッカーと同じじゃないか。恐ろしい女だ!一秒でも早くこのアホ女から逃げないと大変なことになる。」兄目も同感だった。「そうだな。この女に泣きついたのは大きな間違いだった。」
 学園祭のイベントは無事じゃないけど何とか終了した。慎太は自宅の大学寮で今日の様子を配信しているYOUTUBEを確認している。「今日は本当に疲れたな。騙されて連れ去られた人たちはどうなったかな?。気の毒だけど僕の知った事じゃないな。」ぶつぶつ言いながらYOUTUBEを見ている。「凄いな。100万回再生だって。収益化しているからこれだけでもかなりの金額だな。でもマヤ様が逮捕されて収監されるのも時間の問題だな。」なんやかんやでマヤ様は影響力がある。慎太はふとコメント欄を見た。「なになに?。マヤ様のそばに座っている謎の美女は誰だ?。おお!マヤ様より綺麗だ。マヤ様じゃなくてこの子に占われたい。マヤ様に取って代われ。etc。だって?。大変だ!マヤ様より叔父さんから借りたドールのみゆうちゃんの方が人気がでてしまった。マヤ様が怒り狂う!。」慎太は心底マヤ様の八つ当たりを恐れた。「まずい!。こんなコメントをマヤ様が見たら八つ当たりで僕は拉致されて信者にされてしまう。あんな女の信者になるくらいだったら死んだほうがましだ。」慎太は己の運命を恨んだ。
 翌日都内某所のウオーターフロントの高級高層マンション。ここの高層階にあるマヤ様が住んでいる。メディアに出演することも多く絶大な人気を誇っているので高級マンションをキャッシュで購入。マヤ様はマネージャーと二人暮らしをしている。日陰ひなたという女性がマヤ様のマネージャーで朝起こすところから始まる。「マヤ様、起きてください。仕事に遅れますよ。」「うーん、今イケメンドール100体と遊んでいる真っ最中なのよ。むにゃむにゃ。すやー。」二度寝する気でいる。「どうしても起きないつもりですね。」ひなたは高層階からマヤ様の愛用している少年縫いドールを落とす真似をした。「ギャーやめてえ。起きるから。」ここは高層マンションなので窓は開かない。そんなことも忘れて慌てて起きるマヤ様だった。マネージャーはマヤ様をドレッシングルームに引き摺って行き椅子に座らせ。ヘアケアーとメイクを施した。「世界一美しい水晶玉占い師にしろよ。」「無理です。」二人のやり取りは漫才のようであった。マヤ様はメイクの出来栄えを見るために巨大な鏡があるか神専用室に向かった。AIスピーカーと連動した巨大鏡の前に座った。「鏡よ鏡よ世界で一番美しい女性占い師はだあれ?。」「それはマヤ様です。」「まあなんて正直な鏡なのかしら。」マヤ様は鏡にキスした。それもそのはずマヤ様に都合のいい事しか言わない設定になっている。マヤ様は朝食をとった直後スマホで昨日のイベントの様子をYOUTUBEでさらに確認する。「やったー200万再生だわ。」しかしコメント欄を見た途端表情がみるみる険しくなった。「なにー。あの慎太とかいうガキが持って来たドールの方が私よりうつくしいだとお!。私より美しい女性なんてこの世にいないんだよ間抜け!。」マヤ様はスマホを床にたたきつけてハイヒールで踏みにじった。「マヤ様、またやりましたね。これで今月は10個目ですよ。」「信者に貢がせるから大丈夫。早速新しいスマホ手配して。」マヤ様はそれでも怒りが収まらないらしく恐ろしい事を口にした。「この私がドールに負けるなんてあってはならないのよ!。ようし!覚えてなさいよ。私にも考えがあるわ。」最後の捨てセリフが気になりますが尺の都合で今日はここまで。
ACT3 END
某国立大学の学園祭が終わって1か月が経過した。慎太はマヤ様に拉致されて信者にされるのを恐れて潜伏しているらしく大学には一切姿を現さなかった。同じく慎太を拉致して等身大ドールを借り受けたアニメ同好会の兄目好男(よしお)も行方をくらませていたが大学の単位取得のために仕方なく登校している。「前後左右よし!。マヤ様の信者らしき怪しい大男はいないな。」おそるおそる大学の校舎に入る兄目。すると校舎の中に1か月前にマヤ様の信者に拉致された兄目の知り合いの学生がいた。兄目は急いでその学生に駆け寄った。「おお!モブ君、無事だったのかよかったなあ。マヤ様の私設教育機関から逃げ出してきたのか?。」するとそのモブ君の顔がみるみる真っ赤になり怒り狂って兄目を怒鳴った。「この罰当たりが!。人聞きの悪いことを言うな!。マヤ様はすばらしい方だ!。あああ!神様ありがとう。マヤ様に会わせてくれて。幸せだなあ。僕は一生マヤ様に忠誠を誓います。ハイル!マヤ様!。」どうやら逃げ出してきたのではなくマヤ様の私設教育機関で洗脳教育を受けて完全にマヤ様の信者になったようだ。「だめだこりゃ。完全に洗脳されている。マヤ様に拉致されたら最後こんな目に合うのか。ブラック企業の新人教育より怖いな。」兄目は何事も無かったかのように大学の講義を受けるために教室に入った。「ええっと、今日は民法の講義だったよな。」兄目は教科書を開いて講義の準備をする。すると若い教授が教室に入ってきた。「今日はいつもの講義をお休みして偉大なる我らが美しき支配者”飯能マヤ”様のすばらしさについて特別講義を行う!。」「ええええ!。何言ってんだこいつ!。」実はこの若い教授もマヤ様のファンで暴力占いの館に来ていた。そのまま拉致されて洗脳されたようだ。「こんなところでこんなくだらない講義受けている場合じゃないな。」兄目はこっそり
教室を抜け出した。教室を出て入り口のロビーのソファーで休んでいるとなんだか見覚えのある女のポスターが貼ってある。見ると・・・マヤ様のポスターだ。「なになに!マヤ様講演会??後援は某国会議員!タイトルはラブドール撲滅運動開始セレモニーだってー。大変なことになったぞ。まさかあの暴力占いの館のYOUTUBEのコメントでマヤ様がドールに負けたは腹いせに政治家をたぶらかしてドールの撲滅運動を開始するなんて。・・・。」兄目は自分がマヤ様を学園祭に呼び美しい女性のアシスタントが確保できなかったため慎太に頼んで等身大ドールを借りてアシスタント代わりにしたことを心底後悔した。罪悪感でいっぱいになりながら潰れたであろうアニメ同好会の部室に行った。するとなんとアニメ同好会はつぶれていないらしく部室は健在だった。兄目は早速部室に入った。「みんな久しぶり!同好会が無事でよかったよ。」「あ!兄目会長お久しぶり。」「学園祭のイベントはあんな大事件になったのによく同好会潰れなかったな!。」「本当に不思議なんだ。なんでも拉致されて帰ってきた学生がマヤ様に会えたのはアニメ同好会のおかげなんだから絶対潰すなと署名活動をしてくれたんだ。マヤ様呼んで本当に良かったよ。」拉致された学生たちが洗脳されてマヤ様の信者になりすっかりマヤ様の虜になってしまったのでマヤ様に会うきっかけとなったアニメ同好会にも感謝するようになり署名活動を行ったようだ。「何だか罪悪感を感じるが信者にされた学生たち本人も満足しているみたいだし、まあいいか。」兄目は複雑な気持ちだったがとりあえずアニメ同好会が無事なのでまあいいかと思うことにした。
 一方、こちらは慎太の叔父の鷹章の家。鷹章はマヤ様に会わせてもらう約束でドールを貸したのに結局会えなかったことを大変残念に思っていた。「あーあ。ついにマヤ様に会えると思ってタキシードまで購入したのに当日ドタキャンは無いよなー。でもコレラ菌に感染して下痢が止まらないんじゃ仕方ないか。」どうやら慎太のでたらめに騙されたようである。鷹章が残念がっているとスマホに仕事の依頼メールが届いた。「お!吉新さんからだ。久しぶりだなあ。(第一話参照)なになに?。空き家の片付けがあるから来ないかって?。いくいく。」吉新さんとは鷹章の仕事仲間である。吉新さんは大きなアンティークの店を持っており商品の仕入れは主に一般家庭の空き家の片付けや買い出しなどで行っている。鷹章はその片付けを手伝う代わりに商品を優先的に安く譲ってもらうという事もやっている。「家主が無くなったので片付けがあるのですね。ほう!場所は都内某所の豪邸とな?。高価なお宝が数多くありそうじゃないですか!。」鷹章は二つ返事で片付けに参加する事にした。明日は早朝に集合なので鷹章はそれに備えて小学生でも起きている時間の夜7時に寝た。
 翌日、都内某所現地集合。午前6時。通常空き家の片付けは遺品回収業者や片付け業者などが行う。家一軒片付けるのに数十万円~かかる。そこでアンティーク、やリサイクル業者は片付け業者が来る前に高価な骨とう品や美術品を安く買うためにやってくるのである。遺族はその売却益を片付けに回すという寸法だ。「フアー。なんでいつもこんなに朝早いのかな?。」「数日後には回収業者がやってくるからな。」数人の骨董屋やリサイクル業者にまじって鷹章も空き家の中に入り鷹章が扱えそうな品を探す。すると奥の部屋にマネキンらしき等身大人形が数体置いてあったようでその部屋にいる吉新は鷹章を呼んだ。「これはなんだ?。」鷹章も呼ばれてその部屋に名入り吉新にそのマネキンのような商品について説明した。「これはラブドールですね。ほう!しかも国産のオリエンタル工業の商品だな。でも埃被って汚れているな。これ俺が買うよ。」鷹章はその数体のラブドールを購入することにした。「よくそんなでかくて汚い人形買う気になるな。」他の業者はその価値に気が付いていないようである。骨董店主もそれぞれ得意な分野がありその分野以外の品物には興味を示さない事が多い。鷹章はそのようなニッチな商品を安く買うのが得意なのである。その日の鷹章は結局その数体のラブドールのみを購入した。「あんな汚い人形によくそんな大金支払うな。」「なーに、価値観は人それぞれですよ。」鷹章はブランケットにドールをくるんで営業車のバンに詰め込んだ。「なんだか遺体を運んでいるみたいだな。」「縁起でもない事を言わんでくださいよ。」半分冗談のつもりで言ったようだが傍から見ると本当に遺体を運んでいるようにしか見えない。最後に片付け依頼主の遺族代表に挨拶するために裏の依頼主の家を訪問する。そこで故人の話などを聞いて商品の情報を得るのも仕事である。骨董品の入手エピソードなどを聞いて転売するさいにお客さんに説明する為である。「あの人形はお父さんがお母さんを無くしてその寂しさを癒すために生前の若い頃のおかあさんに似たドールを探して購入したものです。2年前でしたかねえ。それはそれは大切にしていました。葬儀の際に棺桶に入れてくれとまで言われましたが葬儀屋に断られましてねえ。」「燃やされなくてよかった。」と鷹章は思った。「無くなる数日前までこの人形にしがみついていましてねえ。引き離そうとしても信じられない力でしがみついていました。」鷹章はだんだん恐ろしくなってきた。新品と違って中古ドールには過去がある。その過去を知らずにお迎えするか知っておくべきか?。いつも葛藤が生じるがやはり知る事が出来るのなら知っておきたいと鷹章は思った。「すさまじいドールへの執着心だな。持ち主の怨霊が宿っていなければ良いが。」遺族のエピソードを聞くべきではなかったかなと鷹章は少し後悔した。
帰宅後早速ドールを風呂に入れて丁寧に細部までクリーニングした。ろくにメンテされていなかったらしく汚れは酷かったが状態は良く、あまり使われていなかったようである。「ふう、きれいになった。オリエンタル工業のドールなんて新品は新車の軽が買えるほど高価だからな。こんなチャンスでもない限り俺のところには絶対に来ないのでラッキーだったな。」ほかの2体のドールも汚れているだけで状態は良かった。性的使用の痕跡はなく、ただ放置されていただけのようだ。しかし故人の家族が処分しようと言い出すととすざまじい執念でそれを拒んだようである。ただ黙って静かにそばにいてくれればいいと故人は思っていたようだ。鷹章はクリーニング後にベビーパウダーでメンテして綺麗なドレスを着せて自作のドールスタンドに立たせた。「これで5体になったな。ウチもにぎやかになったものだ。後は里親探しだな。」故人のドールへの執着を考えると粗末に扱う人にはたとえ大金を積まれても譲りたくない、そんなことをしたら故人が悲しむだろうと鷹章は思った。特に今日仕入れた3体のうちの小さな1体は見るからに幼い子なのでたとえ人形でも変態じじいにだけは絶対譲らないようにしようと思った。3体のドールは気のせいがとても瞳の輝きが強く見えた。「う!新品と違ってセコのドールは目力があるように見えるな。やっぱり持ち主の魂が宿っているのかな。」鷹章は一番目力のあるドールに”ダイバダッタ”というかわいくない謎の名前を付けた。「分かる人にはわかる名前だ。」鷹章は早速顧客リストをPCでチェックし始めた。これまで取引した顧客のデーターをエクセルでまとめているのだ。「ええっと、この人は大人のお姉さん系ドールのマニアで60歳か・・コスはスッチーと婦警が大好きと・・・制服マニアでハイヒールで踏まれると興奮する・・この人は変態だからダメだな。次は年金満額ヒマじじい85歳と、金はあるけど40kgドールなんて抱えたらぎっくり腰で倒れるからパスだな。こっちは28歳バツイチで元プロレスラーだが外国人女性マニアで特に太った黒人が好みっと。ディープ過ぎる!!!。これもパス。次は重度のアニメマニアでアニメドール以外は興味なしの95歳・・・これもディープだな。95歳でアニメファンって少なくとも20歳にならないとディープなマニアにはならないぞ。75年前にアニメなんか無かった。少なくとも70年代にならないとな。50年前だから45歳でアニメに目覚めたのかな>大器晩成型だ!大物だけどパス!。なかなかいいお客いないなあ。どうして俺の顧客はこんな変態ばっかなんだ!!?」今日仕入れて来た一番小さな子がとても気になっている。数年間埃をかぶって放置されていた小さな子には幸せになってほしいと本気で鷹章は思っている。「条件は既婚者だな。人を愛する事が出来る経験者だし。」鷹章はツイッターの記事を見て小さな子が好きでメンテや衣装に気を使っているドールオーナーさんを厳選してダイレクトメールを数件送った。すると一見返信があった。「ツイッター友のMGさんか。上川さんというのだな。」鷹章は上川という人の記事や文章からまめで面倒見のいい人と判断して小さなドールの追加写真を送った。「住んでいる場所も日本屈指のビーチリゾートだな。俺が移住したいぐらいだけどドールちゃんに幸せになってもらおう。里親探しも需要な仕事だ。」鷹章は検討後の返信を待つことにした。
一方こちらはマヤ様。「一か月前の学園祭で信者を50人確保したわ。信者を働かせてその稼ぎを私に寄付させれば又莫大な収益になるわおほほほほ。」マヤ様は自宅に設置した骸骨で装飾された玉座に座ってワインを飲んでいた。「それにしても忌々しいのはあの等身大ドールね。YOUTUBEでふざけたコメントしたブタ共は信者に探し出させて拉致させて洗脳して私の信者にしてやる。」するとマヤ様の信者から報告が入った。「マヤ様の動画にふざけた間違ったコメントをした者のうち50%の居場所を特定しました。」「何をしている!さっさと私の私設教育機関に送り込んでいつもの3倍の特別教育を施して一番下の信者階級で死ぬまで働かせろ!。」「ははっ!仰せのままに。」どうやらマヤ様が気に食わないコメントをした者を全員探し出して拉致して洗脳するつもりのようである。「私を侮辱した馬鹿どもが信者になるのは時間の問題ね。次は等身大ドール撲滅作戦を本格的に開始するわ!。まずはツイッター上の等身大ドールオーナーのアカウントを片っ端から凍結させてやる。」マヤ様の怒りは止まるところを知らない。マヤ様は某国会議員の後援も受けている。性的魅力でたぶらかしたのか?。このままではこの国はマヤ様に支配されてしまう!!。危うし日本!!!。

続く・・・ ACT4 END

ここは日本の某所、飯能マヤが設立した私立特別教育機関の建物がある。敷地は200ヘクタールと広大で周囲は有刺鉄線が張り巡らされた高さ5m程の強固な壁で囲まれており、壁の至る所に防犯カメラが設置されている。施設の周りに怪しい人影があればドローンで追跡して映像を管理室に送るというシステムも導入している。この施設では常時50人以上の信者候補生が教育を受けている。この施設の運営費はすべてマヤ様の信者による寄付で賄われておりその金額は膨大である。しかも税金対策で表向きは新興宗教”ピングー教団”となっており、マヤ様が教祖を兼ねている。マヤ様が信者と呼んでいる理由はこれである。警察も数多くの被害届を受理はしているがマヤ様に誑かされた国会議員達にすべてもみ消されている。しかしあまりにも被害届が多いので東京地検特捜部の下部組織がついに動き出したようである。
さて今日も新しい信者候補生が強制的に施設に送られてきた。8人ほどがマイクロバスに乗せられて目隠しをされ窓一つない車内に閉じ込められている。施設の巨大なゲートが開き施設の敷地内に深夜2時に入った。マイクロバスが止まりドアが開けられ施設の入り口ロビーに整列させられた。そこに施設長らしき見るからに冷酷そうな20代前半の女性が立っており新入り8人を待っていた。「私がこの教育施設の所長 氷室空子だ。よく覚えておけ。今日から10日間お前たちを教育して立派なマヤ様の信者に育て上げてやる。ありがたく思え!。」連れてこられた信者候補生は疲れ切った表情でもはや抗う気力もなさそうである。その候補生の中に一人の潜入捜査官が混ざっていた。彼の名は”柳谷笈斗(やなぎやきゅうと)”という。東京地検特捜部の下部組織で特別訓練を受けたエリートでどのような洗脳にも耐えられるという特殊な能力を持つ。10日間の特別教育に耐えて捜査し、洗脳されたふりをして施設から脱出して内情を報告するのが笈斗の任務だ。氷室から簡単な施設の案内と教育スケジュール表を渡されその日は畳20畳ほどの粗末な部屋に雑魚寝させられた。「噂以上の酷い環境だな。今日拉致された信者候補は俺を含めて8人か。皆若いイケメンばっかだな。」どうやらマヤ様は面食いらしくイケメンをさらっては信者にしているようである。翌朝6時起床。朝食は共同の食堂で30分である。メニューは焼き魚に味噌汁、納豆に生卵とサラダ。ご飯のお変わりは禁止されている。「意外と健康的で美味だな。」笈斗は酷い食事内容を覚悟していたが意外とまともなので安心した。朝食後は全員強制参加の体操の時間で1時間である。下半身と腹筋を使うメニューに極振りされており、かなりきつい。「警察で特別訓練を受けた俺でさえきついメニューだな。」この体操で手を抜いた者は昼食抜きらしく皆必死でこなしていた。「ふうーつかれたー。でも健康的だな。体操俺も私生活に取り入れよう。」笈斗はこの体操メニューが気に入ったらしい。体操後は1時間の自由時間でTVも見放題だが番組はすべてマヤ様が管理して作成している。TVは美少女が出てくるアニメを放送している。「おお!アニメも見放題か?スカパーかな?。」しかしそのアニメのタイトルは 美少女戦士マヤ というタイトルだ。マヤ様が魔法少女に変身して悪い魔法少女と戦うというストーリーである。「ほう!。なかなか面白いな。いかんいかんいかん洗脳されそうになった。」アニメは面白いらしく笈斗はあやうくマヤ様を模したヒロインのファンになるところであった。TVの下のラックにはこのアニメのDVD ブルーレイが1枚800円で発売中という広告が貼ってあった。「意外と安いな。1枚買おうかな?。いかんいかんいかん洗脳されるところだった。」午前中5科目の授業が始まるので全員教室に向かった。一時間目はマヤ様の生い立ちと占い師になるまでの歴史の授業である。講師はマヤ様の信者の女性が勤めマヤ様が幼少のころに苦労した事や可愛すぎたためにいじめにあったエピソードなどを細かく説明した。「意外と苦労したんだな。しかしいじめっ子の幼女むかつくなあ。」笈斗は一方的なマヤ様の物語に共感し始めている。「いかんいかんいかんこれも洗脳プログラムだ。」2時間目は占い師としての活躍や実績、占いで救った貧しい家族のエピソードなどの内容である。カリキュラムはプロがプロデュースしているので誰でもわかりやすく教科書もカラーでエロい格好のマヤちゃんというキャラクターのイラストが数多く描かれており若い男性には受けがいい内容になっている。「授業内容は面白いな。意外と社会で役に立ちそうな知識も含まれているし。いかんいかんいかん又洗脳されかてた。」笈斗はこの洗脳教育授業がだんだん楽しくなってきたようだ。大丈夫かなあ?。
 一方金田鷹章の甥の慎太は大学を休学して逃亡の旅に出ていた。北海道某所の農家でジャカ芋の収穫を手伝っている。慣れた手つきでジャカ芋を丁寧に収穫してトラックに積み込んでいる。「これで午前中の収穫は終わりかな?。今年は豊作だな。」「お疲れさん。今日はもういいよ。午後は町に遊びにお行き。」慎太はこの農家に一週間ほど世話になっている。衣食住だけで働くからしばらく置いてくれとお願いしながら貯金をはたいて買ったスーパーカブで逃亡生活を送っている。「ありがとうございます。そうさせていただきます。」慎太はマヤ様を恐れて北海道まで逃亡し、働きながら逃げ回るという生活を送っている。「はあー、いつまでこんな生活を送らなければならないのだろうか?。」町のコンビニの前で缶コーヒーを飲みながら澄み切った青空を見上げながらため息をついていた。
 一方こちらは鷹章。PCの前で何やら難しい顔をしている。「むむむ!。私のツイッター友がまた凍結された。いったい何が起こっているのだろうか?。」ここ最近ツイッターのドールマニアアカウントが次々に凍結される事件が起こっている。その数は膨大で鷹章とつながりのあるツイッターアカウントの半分以上が消えてしまったのだ。鷹章がPCの前で途方に暮れていると鷹章にツイッターでDMが届いた。「これは開けたら乗っ取られる奴だな。要注意と。ん?又DMか!今日はやけに多いな?。」DMの主は慎太だった。「おお!行方不明の慎太からだ。何々!水晶玉占いのマヤ様がYOUTUBEでドールに負けた腹いせにドール撲滅運動を開始しただと?。」慎太のDMにTV番組の記事やネット記事のリンクが貼られていたので早速見ることにした。TVのゴールデンタイムのトーク番組でお笑い芸人相手に熱いトークバトルを繰り広げている。内容はドールが社会に与える害悪についてである。ドールを撲滅しないと少女が危ない!性犯罪者助長につながるという内容で反対意見を述べた芸人はことごとく論破されマヤ様になじられる始末。ネットニュースもドールが女性を危機に陥れるという内容ばかりである。「俺が慎太にドールを貸したがためにYOUTUBEでマヤ様がドールに負けて怒り狂ったのか!?。大変だ!俺もマヤ様の信者にさらわれて強制収容所送りにされるかもしれない。」鷹章は心底それを恐れ、以後は目立たないように潜伏生活を送る事にした。「俺はマヤ様の大ファンだったのに!。裏の顔は恐ろしい女だったんだな。」
数日後 都内某所。マヤ様のドールネガティブキャンペーンのおかげで等身大ドールの売り上げが激減し、ドーラパンクが所属する芸能事務所のメインスポンサー アルティメットリアル社も日本市場で30%売り上げ減という深刻なダメージを受けていた。事の重大さを認識した芸能事務所の社長が急遽ドーラパンクを呼び出した。「急に呼び出してすまないね。スポンサーのアルティメットリアル社から泣きつかれてね。今等身大ドールがバッシングを受けているだろう。アルティメットリアル社としても日本市場で巻き返しを強く望んでいる。」ドーラパンクは直感で嫌な予感がした。「ネガティブキャンペーンに対抗して何かキャンペーンをやるのですか?。」すると社長は少し苦い表情をした。「いや、あれだけ派手にやられたら逆効果だろう。あのマヤという女には政治家もバックについているしな。しかも今度政党を立ち上げるという計画もあるらしく”こもれび党”という政党名まで仮だが決まったそうだ。」「では私にどうしろと?。」すると事務所社長はにやりと笑って答えた。「アルティメットリアル社のライバルはPAPPY DOLL社だ。この会社の社長がアルティメットリアル社にコピー疑惑をぶつけているらしい。そこでその疑惑はでたらめであるとメディアで訴えてほしい。日本市場で最大のライバルでもあるPAPPY DOLLのイメージも落とせるしな。」ドーラパンクは少し考えて答えた「証拠はあるのですか?。」「そんなものはない。真実かどうかよりライバルのイメージダウンが実現すればアルティメットリアル社のライバルが減って助かる。そういう事だ。」社長はPAPPY DOLLの社長が本当にアルティメットリアル社にコピー疑惑をぶつけているか?百歩譲ってそうだとしてもアルティメットリアル社が本当にコピーしているかもしれない。真実は不明である。しかしそれでもメディアでアルティメットリアル社を擁護してPAPPY DOLL社の社長のコピー疑惑はでたらめだとメディアで公表しろというのだ。もちろんドーラパンクは真実を知らない。確かめるすべもない。それでもやれというのだ。ドーラパンクは半分呆れている。しかし逆らえば事務所を解雇されるかもしれない。「分かりました。社長の言う事を信じます。」そう言うしかなかった。「うまくやれよ。お前の代わりはいくらでもいるのだからそれを忘れるなよ。」ドーラパンクは切れそうになりながらも必死で抑える。
自宅に戻ったドーラパンクは早速事務所の社長に命令された内容を元にYOUTUBE動画を作成した。「しかしバカらしいな。真実が分からないんじゃ根も葉もないでたらめかもしれない。もしそうなら矢面に立つのは俺だぞ。」不確かな真実におびえながらしぶしぶPAPPY DOLLの社長に対するネガティブキャンペーン動画を作成して公表した。しかもツイッター上で署名まで集めさせろという追加命令までメールで飛んできた。「あのバカ社長!いいかげんにしろよな。」ドーラパンクは形だけの簡単な内容の記事を作成してツイッター上にUPした。
 一方こちらは鷹章の自宅TVがつまらないのでいつもゴールデンタイムはYOUTUBEを見ている。ドール関連のチャンネルも多く登録しているのでドーラパンクの動画もたまにだが見ている。「最近YOUTUBEもドール関連の動画減ったよなあー。今日はこれだけか?。」動画の内容は前述のとおりアルティメットリアル社にPAPPY DOLLがコピー疑惑をぶつけているがそれはでたらめだという内容である。その疑惑に対する抗議署名活動の案内もある。
「なんだこりゃ?。本当か?。」鷹章はたいして興味を示さなかったがコメント欄は大炎上している。それもそのはずPAPPY DOLLは日本で大人気で多くのファンがいる。ファンにとって自分のかわいいドールのメーカーが非難されれば怒るに決まっている。しかも明確な証拠も無く本当にPAPPY DOLLの社長がコピー疑惑をぶつけているかどうかも不明なのだから炎上は当たり前である。炎上は止まるところを知らず。ネット記事にまで取り上げられその記事も炎上した。「俺だって自分のドールちゃんのメーカーの社長が証拠も無いのに責められたら腹が立つよな。ドールオーナーの夢や気分を壊すなんてメディアに出る人のやる事ではないな。俺のドールはアルティメットリアル社の製品だけどもしこれが真実だったとしても夢を壊すような報道はして欲しくないよな。」鷹章はため息をつきながらドーラパンクのチャンネル登録を解除した。
 一方、マヤ様もネガティブキャンペーン実施中という事もありYOUTUBEもチェックしている。YOUTUBEでドールの宣伝などをしているチャンネルがあったら凍結させるつもりである。するとマヤ様はドーラパンクの例の動画を発見した。ドーラパンクがマヤ様が嫌いなアルティメットリアル社を擁護する内容の動画をUPしているので激怒したマヤ様は1万人の信者を使ってドーラパンクのYOUTUBEチャンネルを凍結させ、すべての動画を削除させた。水面下で鷹章とマヤ様の利害が一致したがそんなことを当人同士が知るはずもない。
炎上の翌日、ドーラパンクは再び所属事務所の社長に呼び出された。「お前何やってるんだよ!。記事は炎上するはYOUTUBEチャンネルは凍結されるはで大失敗じゃないか!。お前のやり方が下手だからだ!。」いきなり大声で怒鳴り、灰皿までドーラパンクの胸元になげつけた。ドーラパンクはうつむいて両手の握りこぶしに力いっぱい力を入れた。「社長!私は社長を信じますと申し上げました。しかし今回の失敗は社長からいただいた情報が不明確で証拠が無かったからです。確かな証拠をいただければこのような事にはなりませんでした。」社長は顔を真っ赤にして立ち上がってドーラパンクに詰め寄った。「お前の意見なんて知らねえよ!。社員は社長の命令を聞いてなんぼだろうが!!。お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ!。」今まで耐え忍んできたドーラパンクだったがドーラパンクの忍耐にも限度があった。「私の代わりはいくらでもいるんですよね。では無能な私は退くことにします。」ドーラパンクは用意していた辞表を床に落として静かに事務所を立ち去った。「おいちょっと待て!これはどういうことだ!。戻ってこい!。」ドーラパンクは一切振り返らずそのまま事務所を後にした。
 翌日 鷹章のもとにツイッターのDMが届いた。「ん?。又乗っ取りか?。それとも慎太か?。」DMの主は以前里親探しの為に鷹章がDMを送った上川さんからだった。「なになに、先日写真をいただいたドールちゃんを是非お迎えしたい?不幸なドールちゃんをほっとけ(´;ω;`)なくなりました。だって?。良かったー。」悪いニュースばかり続いた一週間だったがここでようやくいいニュースが飛び込んできた。「あの小さな子2人は来週には日本屈指のビーチリゾートでバカンスか?。うらやましいな。。」
第三話 ドール達の過去完結・・・ACT5 ドーラパンクの決意!・・・END


  

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