【エッセイ】幸せな帰り道
今夜は秋田の、こまちスタジアムで読売ジャイアンツvs東京ヤクルトスワローズのナイトゲームが実施される予定だった
年に1度の待ちに待った珠玉の好カードに秋田のプロ野球ファンたちは、長い冬の間から、この日をずっと待ち望んできた
しかし、夕方からの急な雨にみまわれ、試合は中止
星空を信じてスタジアムに赴いていたファンたちの願いは虚しく、秋田の空に試合の中止を告げるアナウンスが響き渡り、会場からはため息がこぼれた
以前までの僕ならテレビでそれを見てて、「ざまぁみろ!」だったと思う
人の不幸は蜜の味とは、よく言ったもので、自分が不甲斐ない毎日を送っていると、他の人を自分の闇の位置まで引きずり込もうとする習性が、この島国、日本にはある
企業の衰退、芸能人の不倫問題、不慮の交通事故…
嘆きの中で生きている人たちにとって、これ以上の晩御飯のオカズはない
その人たちに比べて自分は幸せだと言い聞かせ安堵する
人間として日々、生きていて、こんなに悲しいことはない
他人と比べて思い知る偽りの幸福感なんて、何の意味もない
それは幸福感ではなく優越感に過ぎないからだ
バックミラー越しに、スタジアムの方角の空を見つめて、自分は行かないのだけれど、ナイトゲームが予定通り開催され、みんなが笑顔になることを祈りながら帰路に着いた帰り道
誰かの幸せを願える今の自分は、憎らしいほど幸せ者だと思った
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