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幸せ探し

あなたは今幸せですか?それとも、そうではない?
もし、幸せでなかったら、どうなれば幸せと思えるでしょう?

けいこさんは30歳。会社勤めのパパと元気な7歳の男の子とちょっぴり泣き虫の4歳の女の子の4人家族で暮らしています。家事と子育てに追われる
ふつうのお母さんに見えますが・・・ 


ある朝のことです。
いつものように家族みんなを起こして朝ごはん・・・ですが
テレビが見たくて夜更かししてしまった子どもたちはなかなか目が覚めず、ご飯が入らない様子です。
パパは会社に行く時間が迫っていて、「けいこ~お弁当、早く~」と着替えながら叫んでいます。
子どもたちに「早くご飯食べなさいよ!」といいつつ、お弁当を詰めてしまいハンカチで包んで手渡すと、「いってくるね!」とパパが玄関から飛び出していきます。
「あーあ、みんなもっと早く起きれば、ご飯も入るし、あんなにあわてて出かけることもないのに、全く・・・。」
ついつい小言が、口から出てきてしまいます。

トーストを何とか牛乳で流し込んだ子どもたちをせきたてて、支度を済ませるとお兄ちゃんを学校へ送り出し、妹を幼稚園のバスにのせ、やっと自分の朝ごはんです。
すっかり冷めてしまったトーストをかじりながら、キッチンに立ち、お皿を洗いながら「あーあ、毎日毎日、おんなじことをバタバタくり返し・・・
なーんか楽しいことでも起きないかなあ。」とぼやいてしまいます。

家事を終え、コーヒー片手にリビングのテーブルの前に座ったけいこさん。ぱちん、とテレビのスイッチをいれ、ふいに、窓の外の空が目に入ります。
「ああ、いい天気。すっごくきれいな空ねえ・・・空がきれいなんて思うのいつぶりだろう・・・」


コーヒーに手を伸ばそうと視線を移したとたん「やあ、おはよう。朝からさえない顔してるねえ」カップの横にカップと同じくらいの小さなおじいさんが座っているじゃないですか!

「だだだ誰?!あなた!私、頭おかしくなっちゃったの??」
びっくりしたけいこさんが目をこすりながらあ然としていると、おじいさんが言いました。
「まあまあ、落ち着きなさい。私のことは、そうじゃな家の裏にある古い楠に宿っている神様だとでも思ってくだされ。日本じゃ、やおよろずの神様っていってトイレから何から神様がいるって言うじゃないか。一人くらい増えったってだれも文句なんぞ言うまい?
おまえさんが結婚してここに家を建ててからずっと見ておったんじゃが、
そろそろ私の出番かのうと思ってでてきてみたんじゃ。」
けいこさんは目を白黒させながらも、この人のよさそうなおじいちゃん神様につい言い返してしまいます。
「そろそろ出番って何のことよ?!」

「あんたがあまりにも自分の幸せに気付かんもんだから、ちょっと目を覚まさせてやろうと出てきてあげたんじゃよ。それに・・」と言いかけた神様に畳みかけるようにけいこさんは言いました。
「なんですって!私が幸せ?毎日毎日バタバタ家事に追われるばっかりで、もう30歳も越しちゃって、子ども二人産んでから、体重はやばいし、ウエストはもっとやばいし、眼の下はシミが目立つし、眼尻はしわが出てくるし、パパは結婚前みたいに「けいこ愛してるよ」なーんて口が裂けても言ってくれないし、子どもは言うこときかないし、みんなちっとも片づけてくれないし、えーっとそれから・・・」
こうなるともう、不幸自慢大会です。神様のことを不審がっていたことなんか、どこ吹く風で、けいこさんはまだまだ不満探しを続けます。
「それから、えっと・・・パパの給料はなかなか上がんないし、隣の奥さんは素敵なブランドのバックを買って自慢げに見せびらかすし、お兄ちゃんは元気はいいけど成績がいまいちだし、下の子の泣き虫にも手を焼いてて・・・」
まだまだ続きそうな勢いに圧倒されそうになっていた神様はやっと割り込むスキをみつけると、言いました。

「おまえさん、さっき空を見て「きれいねえ~」なんていっとったじゃないか。もう一回外を見て見なされ。」
「えっ?」
話の腰を折られた格好のけいこさんはまだ言い足らないわ・・・なんて思いつつ空を見上げました。

すると、どういうことでしょう。ちっとも空がきれいに見えないのです。晴れてはいますが、なぜかどんよりと霞がかかっているようにしか見えません。
「・・・ちっともきれいじゃない?」

「ここからが本番じゃよ。さっき、空がきれいだと思った気持ちになって
自分のことをゆっくり見てごらん?」

しばらくじっと目をつぶっていたけいこさんはやがてゆっくりと目を開くとちょっと照れながら言いました。
「私、毎日大好きな家族と暮らしてるの。みんな元気でいてくれるし、子どもたちは私がどんなに叱っても「ママのこと大好き」って言ってくれる。
パパも私が片付け下手でも文句言わないでいてくれるし。
私最近パパにやさしい言葉なんてかけてなかったわ・・・
自分ばっかり結婚前みたいにやさしいこと言ってくれないなんて思って。」けいこさんの目尻が自然と下がり口元がほころんでいます。
「お兄ちゃんはねえ、とってもサッカーが上手なの。大きくなったらサッカー選手になってママに好きなモノたーくさん買ってあげるなんて言って・・・やさしい子に育ってる。下の子だってそう。ちょっぴり泣き虫だけどお花や動物が大好きなやさしい子で、ベランダの鉢植えにきちんとお水を忘れずにあげてるわ。」自分でいいながら、けいこさんはハッとしました。

「・・・そうか、幸せってこんなことなのかも。夢のような暮らしなんとかぜいたくなものとかじゃなくってね。
当たり前って思ってたことがこんなに幸せだってこと、すっかり忘れて不満ばっかり見つけてた・・・」


ハッと我に返りあたりを見回すと、手の中に冷めたコーヒーのカップがあるだけで、神様の姿はどこにもありませんでした。
窓の外を見ると、真っ青なきれいな空が広がり、楠の梢が風にさらさらと音を立てていました。


(ちょっと一言)
幸せなことにはすぐ慣れてしまい、たりないことばかりに目が行ってしまう・・・。ついついやりがちですね。

もののとらえ方って人それぞれで、何でも持っていて恵まれていると人からうらやましがられるお金持ちが、幸せなんか感じていないということや、
子沢山でさぞかし大変だろうと周りが思っていても、みんな仲良く暮らし
幸せだと感じている、ということもよく聞く話です。

幸せへの近道は、案外自分の中に眠っているのかもしれません。
青い鳥みたいですね。


ものごとをどう感じるかは幼いころの経験が大きく影響します。
周囲の大人がたくさん守って愛情をくれて、子どもの頭の中が「安全だー!」と感じられるかどうかがカギなのです。

大人のしっかりとしたサポートのもとで成長した子どもはネガティブなことにぶつかっても自分を「快」に戻す力が備わり、問題を解決しようと取り組めるようになる、ということです。

同じ環境でもうつになる人とそうでない人がいるのも「とらえかた」や
「自分の頭の中を安全に保てる力の差」が影響しているからなのです。

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