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『パルワールド』の「アズレーン」と『ポケモン』の「アシレーヌ」の髪の形状が一致していたのは何故か

久々に『パルワールド』が話題になっていることに加え、前回の記事で省略した『アズレーン』と『アシレーヌ』の髪型が偶然一致していた問題に進展が見られたため、改めて考察したいと思います。

まず、ポケモンのキャラクターの一つである『アシレーヌ』を見て頂きます。

ポケモンのアシレーヌ

この姿をよく見てから、画面をスクロール等して画像が見えないようにして
『アシレーヌ』の絵を描くとしましょう。

おそらく、これまでに『アシレーヌ』のイラストを描いたことがある方や、熱心なファンでなければ、記憶力が良い方でもせいぜい「3つの塊があって、そこから数本の毛が枝分かれし、先端からさらに数本の毛が出ている」といった程度の再現が限界だと思います。

次に、パルワールドのモンスターの一つである『アズレーン』を見てみましょう

パルワールドのアズレーン

『アシレーヌ』の髪と同様に、3つの塊があることが確認できます。『アシレーヌ』の場合、髪留めで髪が縛られているために3つの塊が形成されていますが、『アズレーン』では同様の髪留めは存在せず、ただ塊ができているだけです。

ここまでは、偶然の一致や、記憶の片隅にあった『アシレーヌ』の特徴を無意識に真似てしまったと可能性が考えられるでしょう。

では、今度は『アシレーヌ』の髪の特徴を言語化してみましょう。『アシレーヌ』の髪は、3つの塊があり、2つ目と3つ目の塊からは2本の毛が出ており、その先端からさらに3本の毛が伸びています。2つ目の塊から出ている2本の毛のうち、内側(体に近い方)の毛が長く、大きく内側に反っています。もう1本は少し内側に反っています。3つ目の塊から出ている2本の毛は、どちらも大きく外側に反っており、長さはほぼ同じです。先端の3本の毛については、左側(内側)の毛が最も大きく反り、中央の毛は中程度の反り、右側の毛はわずかに反っています。


改めて『アズレーン』の髪を見てみましょう

3つの塊があり、2つ目と3つ目の塊からは2本の毛が出ており、その先端からさらに3本の毛が伸びています。2つ目の塊から出ている2本の毛のうち、内側(体に近い方)の毛が長く、大きく内側に反っています。もう1本は少し内側に反っています。3つ目の塊から出ている2本の毛は、どちらも大きく外側に反っており、長さはほぼ同じです。先端の毛は全てまっすぐ伸びています。

太線で書いた所以外は、『アシレーヌ』と『アズレーン』の毛の特徴は一致しております。

この一致が偶然起こりうるものでしょうか?

おそらく、偶然では起こりえないと思われます。最も可能性が高い原因として考えられるのは、3Dモデルの盗用です。この騒動を追っている方であれば、盗用疑惑がすでに浮上していたことをご存じかもしれません。

我々が直接3Dモデルを比較することはできないため、この疑惑が正しいものであるかどうかについては議論しません。

ひとまず、『パルワールド』は『ポケモン』の3Dモデルを盗用していない、という前提で話を進めていきましょう。では、この偶然では起こりえない髪型の一致はなぜ起きたのでしょうか?

考えられる可能性として、以下の2つが挙げられます。
①『アズレーン』の3Dモデルを制作した方が、『アシレーヌ』の髪を参考にしながら作った。
②ポケモンの画像データを学習したAIが出力したデザインを参考にした。

まず①についてですが、優れた3Dモデルを手本にしながら、近いデザインのものを作ること自体は、特に珍しいことではないと思われます。『アシレーヌ』の髪型はふわふわとした質感が特徴的で、似たようなデザインを探して参考にすることは十分に考えられます。しかし、毛の本数や毛先の細かい部分まで似せる必要はなく、それをあえて再現することはモデリングの工程で余計な手間がかかる上に、疑惑を招く要因となるでしょう。『パルワールド』は『ポケモン』に酷似しながらも、ぎりぎり同じではないグレーゾーンを狙ったデザインが多い中で、髪型だけを完全に一致させる利点はないと考えられます。

次に②についてですが、『ポケットペア』の社長が『ポケモン』に似た絵を生成していることから、AIを使用してデザインを作成した可能性もあります。AIがポケモンの画像データを学習し、その結果として似たデザインを出力したという推測は十分に考えられるシナリオです。

しかし、これは考えにくいでしょう。上記のツイートで生成されたデザイン(左側)は、『パルワールド』のモンスターのデザインと比較しても、そのクオリティが大きく劣っていることがわかります。このAIで生成されたデザインを元に加筆修正を加えたものを使用しているとすれば、かなり大幅な修正が必要になりますし、AI自体に『アシレーヌ』の髪型と完全に一致するデザインを出力する能力はあるとは思えません。さらに、それを基に『アシレーヌ』の髪型と完全一致するようにわざわざ修正を加える理由もありません。

他のAIを使用していた可能性も考えられますが、現時点でこれより優れたポケモン生成AIは確認されておらず、AI開発を行っていない『ポケットペア』がこれ以上優れたAIを作成したという可能性も極めて低いでしょう。

AIの専門家でなくとも、たとえば『Stable Diffusion』を使って独自の学習データを作成する可能性はありますが、『アシレーヌ』の髪の特徴をAIが正確に再現して出力するのは簡単なことではありません。

実際、以下のように『アシレーヌ』を再現するために、『アシレーヌ』の画像だけを参考に学習したデータ(Lora)を使用しても、髪の特徴を完全に再現することはできていません。

つまり、AIによって偶然『アシレーヌ』の髪の特徴が一致したデザインが出力された、ということはまず考えられないでしょう。

したがって、この一致が盗用の可能性を否定した場合、私には想像が及ばないところで一致させることが『ポケットペア』に何らかの利点を与えていたと考えざるを得ません。すなわち、彼らは「敢えて」『アシレーヌ』と『アズレーン』の髪の特徴を一致させたのではないか、という結論に至ります。

しかし、なんと『パルワールド』は4月から5月の間に『アシレーヌ』と酷似していた特徴の部分のみを修正していたようです。

修正以降にプレイした方は、元の髪型が『アシレーヌ』と一致していた事の証拠を見たいであろうと思いますので、公式の『アズレーン』紹介動画を確認して頂ければと思います。

修正を行ったということは、その部分に何らかの問題があったと推測されますが、ゲームシステム上、髪の跳ねや突起が影響を与える要素は特に考えられません。せいぜい、ポリゴン数が僅かに減少し、負荷がごくわずかに軽減する程度でしょう。これを踏まえると、『アシレーヌ』と酷似していたことを問題視し、修正した可能性が高いと考えられます。しかし、自ら「敢えて」何らかの利点があると判断して、わざわざモデリングの手間を増やしてまで似せた部分を、なぜ修正したのでしょうか。

謎は深まるばかりです。

今回の裁判は特許に関するものであり、この件とは無関係だと思われますが、騒動が収束した後には、この偶然の一致がなぜ起きたのか、『ポケットペア』から説明をいただきたいものです。私の想像では答えが出ない事柄なので、どのような意図で似せ、またどのような意図で修正したのか、非常に興味があります。

ここまで読んでくださった皆様、もし「こういった可能性があるのでは?」といったご意見があれば、ぜひコメントにお寄せいただけると嬉しいです。


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