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塗料メーカーで働く 第四十四話 2人目の実習生

 1991年10月15日(火)午前10時頃 技術部に下期の教育実習生がやってきた。

 「こちらでお世話になります高野です。よろしくお願いします。」と言った彼は 長身でがっちりした体格 はっきりと視線を合わせる態度に 物おじしない性格が感じられた。 

 「教育実習担当の川緑です。こちらの机を使ってください。」と言うと 川緑は 高野さんを連れて技術部内を案内し ここで取り扱う材料 実験設備 加工機等について説明した。   

 午後になると 高野さんに UVカラーインクの作り方と評価方法を指導した。      

 高野さんは 川緑の話の途中々々に 「なんで そうするんですか。」とか 「なんで こうしないんですか。」と聞いた。                                    

 質問に答えると 彼は 「なるほどね。そういうことなんですね。」と 一つ一つの事柄に納得しないと気が済まないといった態度を示した。 

 居室に戻り 川緑は 「高野さんには 昨年の実習生の浜崎さんの研修テーマ 「UV硬化型樹脂の硬化性の研究」を続けてもらいます。」と言って 過去の研修資料を手渡した。

 浜崎さんの研修では UV露光量と光重合開始剤の光の吸収量と樹脂の硬化状態について それらを関係づけた近似式を提案していた。              

 川緑は 「これは近似式で UV硬化型樹脂の硬化性について分っていないことが多くあります。 それを捉えて この近似式に盛り込んでください。」と言った。

 川緑は 硬化性の本質について 現在 知られていないことを一つ一つ解き明かして この近似式に盛り込んでいけば 「硬化の理論」を構築することができると考えていた。

 「硬化の理論」ができれば それを懸案のTKM会の共同研究に適用することができ 高速硬化タイプのUVカラーインクの開発とそれに適したUVランプの開発が可能になると考えていた。

 川緑は 「高野さん TKM会に参加してください。 そこでの共同研究は 研修テーマの推進に役立つはずです。」と言った。

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