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塗料メーカーで働く 第九十六話 奇妙な連帯感

 2月15日(火)午後1時 東京工場 品質管理課の会議室に UVカラーインクの関係者等は 呼び出されていた。

 生産管理課 木下課長と大塚係長 製造課 原田課長と木村さん 製造技術課 緒方係長 技術部の川緑は 席について待っていた。

 ほどなく 会議室の戸が開き 製造部 園田部長が入ってきた。

 中背 ふっくら体型 丸顔を赤くした部長は 全員を見渡しながら 開口一番  「勝手なことをするな!」と強い口調で怒鳴った。 

 彼の怒りは 新タイプUVカラーインクの試験製造に原因があった。

 彼の言う 「勝手なこと」とは 休日に 製造課の木村さんと川緑が試験製造を行い 部長に そのことが報告されていなかったことだった。  

 彼は 10分間程 会議室を歩き回りながら 苦言を言い続けた。

 お叱りを受けながら 川緑は 周りを見回すと 誰も弁解することなく みんな下を向いて神妙な表情をしていた。

 川緑は これまでに何度も 新規事業部の責任者等やユーザーから怒られることがあったが 今回は 怒られていても それほど悪い気はしなかった。

 それは 各課の課長は 木村さんと川緑の行動を黙認していたので きっと みんなそうするしかないと考えていたのだろうと思い そこに奇妙な連帯感を感じていたからだった、

 事業部長が退室すると 関係者らは 次々と口を開き始めた。

 製造部長の苦言を受けたことが 逆に バネになったかのように 新タイプのUVカラーインクの試験製造の日程調整に勢いがついた。

 彼等は なんとか 新タイプのUVカラーインクの試験製造を進めようと アイデアを提案した。

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