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塗料メーカーで働く 第七十三話 デスマッチだ!

 3月1日(月)午後4時30分頃 技術部の居室で待機していた川緑に 技術企画管理部の野村部長から電話が入った。

 部長は 「今 東京の工業系大学の栗田先生が到着したところだ。 君 第一応接室に来てくれないか。」と言った。

 栗田先生は 野村部長の依頼で来社していて 懸案の雑誌 「塗料と研究」への川緑の研究の掲載について その可否を判断するために来ていた。

 「分りました。直ぐそちらへ向かいます。」と答えて受話器を置き 川緑は 森田課長と一緒に 本館へ向った。

 第一応接室の扉をノックして中に入ると ソファーに座って会話していた栗田先生と野村部長は こちらを振り返った。                           

 「お世話になります。川緑です。今日はよろしくお願いします。」と言って名刺を差し出した。

 やや小柄 ふっくら体形 活発な印象の栗田先生から頂いた名刺には 「東京の工業系大学 工学部 資源研究所 助教授」と書いてあった。 

 初対面の野村部長は 大柄 ふっくらした体形 丸顔の温厚そうな表情で 眼鏡越しに見える目は実直な感じがした。

 野村部長は 「栗田先生は 私と同じ京都の大学の出身で 学生時代からの友人だよ。」と言った。  

 部長は 「栗田先生は 液晶を使った光スイッチを開発されていて 光と樹脂材料との相互作用に関する専門家だ。」と言った。 

 お互いの自己紹介が終わった頃に 米村部長と研究部の稲田部長は 第一応接室に入って来て 彼等に続いて 受付の女性がコーヒーを運んで来た。

 川緑は 「では 先に行って 報告の準備をします。」と言って講堂へ向かおうとすると 栗田先生は 「川緑さん 今日は 時間無制限のデスマッチだ!」と言った。 

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