暗い街と信号機と
なにがあるわけでもなく、上機嫌で歩く夜の街が好きだ
世界の主人公になれたみたいで
この夜の主役になれたみたいで
片手に缶ビール
ああ、このまま飛んでいけそう
突き刺すほどの寒さも、
この時ばかりは私の世界を彩るための演出で
ちょうどいいタイミングで点滅す信号機も、
まるで待っていたかのよう
これじゃミュージカル映画の主人公みたい
真っ赤なパンプスに、絹のような黒髪をゆらしたい
この少し欠けたお月様だって
バレーボールみたいにトスをするのに
*・゜゚・*:.。.*:.。. .
街の空は少し濁っている
星も月も、靄がかかったよう
ところどころマンションの部屋がが明るく光っていることに目を向ける
生活に寄り添う灯りはあたたかい
きっと私もこの中の一つになって、溶け込んで、そして誰にも気づかれなくって、存在ごとを包みこまれる
それが時に残酷に思えて時に心地よい
私を飲み込んで欲しくて
でも飲み込まれたくなくても飲み込まれていくのが少し嫌だ
傲慢でどうしようもないね
信号機の赤は、思ったよりも長く変わらない
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